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境界線上で揺れる 「バイセクシャル」≒「ゲイ」?

揺らぐ自分、揺らぐ性

こんにちは、Shadeと申します。
僕は30代、既婚(子無し)、バイセクシャルでメンタル疾患持ちの男性です。
ちなみに、バイセクシャルとは言いつつも、女性にも男性にも惹かれる自分を認めてあげられるようになったのは本当につい最近のことで、これまで実際に男性と恋愛関係になったり、体の関係を持ったことはありません。
まだ「性自認」に関しては、完全な若葉マーク保持者です。

この年齢になってようやく、抑圧してきた「もう一人の自分」を解放してあげたいと考えた僕は、約3週間前、自己表現の手段として、まずnoteを始めました。
結論として、この選択は大正解。
文章を書くことで、頭の中が整理され、また、自分の書いた記事にリアクションやコメントをいただいたり、同じような「セクシャルマイノリティー」の方の記事を読んだりした結果、たくさんの勇気をもらいました。
そして、それらに背中を押される形で、先日、奥さんと、昔からの友人の一人に、自分のセクシャリティをカミングアウトするまでに至ったのです。
思えば激動の3週間でした苦笑
そんな僕ですが、自身と向き合う行為を進める中で、現在、自分の「性自認」に対して、再び揺らぎのようなものを感じ始めています。
きっかけの一つは、別の記事にも書いたのですが、カミングアウト後に奥さんから、「あなたは女性よりも男性が好きなのか?」と聞かれたこと。
そしてもう一つは、森山至貴さんと能町みね子さんの共著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』(朝日出版社、2023年)という本に出会ったこと(この本は本当に奥が深く、自分の固定概念を根底から見事にぐらつかせてくれます)。
そこで今回は、同書の一部を引用させていただきつつ、揺らぎの真っ只中にいる自分を見つめ直しながら、バイセクシャルとしての僕自身を「セルフプロファイリング」するようなつもりで記事を書いてみたいと思います。
もしよろしければ、お付き合いいただけると嬉しいです。

なぜ「恋愛」に発展しなかったのか

以前の記事にも書いたのですが、僕はこれまで、どちらかといえば男性に対して性的な魅力を覚える一方、恋愛としてのときめきを感じるのは常に女性でした。これが自分でもとても不思議だったのです。
もちろん、かっこいい(と自分が感じる)男性に出会ったり、話したりするとある程度のドキドキは感じるのですが、それが女性に対して感じる恋愛的な高揚にまでは発展しない(学生の頃からそうでした)。
この年齢までバイセクシャルとしての自分を認めることができなかったのは、この辺りにも一つの要因がある気がしています。

前段で紹介した本、『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』は、早稲田大学准教授で、ゲイとしての性自認を持つ森山さんと、文筆家・イラストレーターでトランスジェンダー女性である能町さんの対談本なのですが、その中でお二人がこんな風に語る場面があります。

森山 (前略)分類して整理したら終わりじゃない。分類して、整理して、理解できるんだけど、人の性のあり方って、そんな枠組みに都合よく整理されているわけじゃないので、そこの部分をつぶさに見ていく。

同書、60-61Pより

能町 (前略)あらゆる、名前がしっかりついている箱……そこになんの疑問もなく入れて、私は〇〇ですって名乗れる人たち……そういったところからこぼれてしまった人たちを全部まとめて「クィア」とするのがしっくりくるのかな、と思いました。「壮大なその他」。
   たとえば、「私はゲイです」とシンプルに言うことにまったく違和感がない人もいると思うんですけど、「うーん、ゲイだとは思うんだけど、いわゆるゲイとちょっと違う気がするんだよね」みたいな人も包み込んでくれるというか。

同書、62-63Pより

上記は、「クィア」という言葉の定義をめぐるお二人の会話の一部なのですが、僕はこれらの言葉にとても深い共感を覚えました。
いわゆる「LGBTQ+」で言うと、自分は「B」に当てはまると現時点では考えているものの、実際にはその中でも色々なグラデーションがあり、「壮大な一人ひとり」が存在する。
そして、そこから発展してこんな風に思ったのです。
僕は、性的指向という点ではどちらかと言えば「ゲイ」に寄っている。さらにどうやら、「ゲイ」としての自分はもしかすると「アロマンティック(他人に恋愛感情を持たない指向や、そうした指向を持つ人)」な傾向があるのかもしれない、と。
自分でもめちゃくちゃひねくれているなぁと思うのですが、そういう複雑な「ねじれ」が、僕の中に存在しているような気がするのです。
そしてそのねじれこそが、これまで「ゲイ的指向」を持っているにも関わらず、同性との恋愛には至らなかった原因の一つなのかもしれないな、と考えているところです。
もちろんこれは、あくまでも「原因の一つ」で、以前書いたように、自分自身にかけていた「無意識のバイアス」による抑圧なども、そこに絡んでくることは間違いありません。
けれど、一言で「バイセクシャル」と言っても、そこには一人ひとり異なる背景や色合いが存在するということを、本書は気づかせてくれたのです。

境界線上にいる自分を認める

能町 ただ、実は、振り返ると私自身、「一貫性がなきゃいけない」って思っていた時期があるんですよね。一貫性がないと説得力がない、って。ある時は男が好きで、ある時は女が好き、みたいなことを言っていると、なんか「本当じゃない」みたいな……。

同書、103Pより

この言葉も、めちゃくちゃ自分に刺さったフレーズの一つ苦笑
性的にはより男性に惹かれつつ、恋愛対象としては女性に惹かれるって、一貫性ゼロじゃん…と自分でも思います。

ただ、能町さんの発言の意図とは少し異なるのですが、自分は「バイセクシャル」だと思っているけれど、アイデンティティの一部には「ゲイ」としての自分が存在しているのではないか、という疑念のようなものは、特にここ最近、自分の性自認に対して正直に向き合おうと決めてから、僕の中に常に渦巻いていました。
奥さんに、「あなたは女性よりも男性が好きなのか?」と聞かれた時に、ぐっと答えに詰まってしまったのも、この辺りの葛藤に一因があるのだと思います。
正直な考えを言うと、僕はもしかしたら、「バイセクシャル」と「ゲイ」の境界線上に立っているのかもしれません。
世の中にはもっと、「女性50」「男性50」のように、シンプルに割り切って生きてらっしゃる「完全なバイセクシャル(?)」の方もいるのかもしれませんが、僕自身はどうもそこに当てはまらないような、そんな気がするのです。
タイトルのように図式で表すと、「バイセクシャル」≒「ゲイ」、そんな感じです(ただ、ややこしいので、プロフィールや自己紹介上ではこれまで通り「バイセクシャル」という言葉を使おうと思います)。
同性とのリアルな恋愛経験がゼロなので、判断材料としてのサンプルは全く足りていないのですが…(もちろん、ありのままの自分を受け入れてくれた奥さんを裏切るような行為をするつもりはありません)。
自分を定義するのは本当に難しいです。掴もうとすればすればするほど、また別の考えや疑念が浮かんできて、新たな沼にハマっていくような気分です。
けれど、そんな境界線上で揺らいでいる自分を、「そのままのかたち」で認めてあげることができたら…。事態はもう少しシンプルになるのかもしれません。
ただでさえ複雑に入り組んでしまった人生を、これ以上歪めないためにも、僕は今のこの「ぐらつき」を大事にしたいと思っている次第です。

世界は常に揺れている

と、ここまでつらつらと書いてきましたが、noteを始めて約3週間、人の考えってこんなにも流動的に変わるものなんだなぁと、今自分の書いた記事を読み返していて改めて思いました。
同書の言葉を借りるとすれば…

能町 その人のアイデンティティは生まれたときに決まっているということではなくて、常に変化し得るものだということですね。アイデンティティが決定的に固まることはないのかもしれない。

同書、29Pより

というところです。
恐らく、これまでの記事を最初から全部読んでいったら、つじつまの合わない点も出てくるかもしれない。というか、まだ「自己認識」についてブレブレなのが自分でもよくわかる。でも、その時その時で、自分の正直な気持ちを書いていることは確かです。
もしかしたらまた3週間後に投稿する記事では、全然別の考えが生まれているかもしれませんが…その際はどうぞ大目に見てやってください苦笑
自分の心も、そしてそれを取り巻く周囲の世界も、常に揺れて、刻一刻と変化しています。
そして僕は、その揺らぎを認めてこられなかったからこそ、「本当の自分自身」と向き合うタイミングが、こんなにも遅くなってしまった。
けれど、よく言われることですが、「年齢なんてただの数字」です。
悩んで揺れているということは、つまりまだ変化して、成長する伸び代があるということ。都合の良い解釈かもしれませんが、激動の3週間を経た今、僕はそんなことを実感しています。

最後になりますが、今回文章を引用させていただいた『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』は、セクシャルマイノリティー当事者の方にも、そうでない方にも、ぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。
僕はこの本で、「ジェンダー」や「セクシャリティ」というものが、いかに奥深く、複雑怪奇なものであるかを学ぶことができました。
決して簡単に理解できる本ではないのですが、もし機会があれば、一度お読みいただけると嬉しいです(決して出版社の回し者ではありません笑)

それでは、長くなりましたので今日はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました!

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