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珈琲の大霊師267

 暗闇に潜む2つの影。

 先頭を行く小さな影は豹のようにしなやかに、草むら分け入りながら進む。続いて先頭の影が作る獣道を、少し大きな影がぬるぬると進み、2つの影は吹き着く風の音に紛れながら行軍していたのだ。

「止まれ」

 ルビーが鋭く静止する。風の音に紛れて、違う生き物の気配がした為だ。いざという時に備え、ルビーは腰の短刀に手を掛ける。

 その気配を感じ取ったのか、恐らく野生動物と思わしき気配は逃げさっていった。

「・・・・・・こっちでいいのかい?」

 ルビーは尋ねる。

「あぁ。丘の上には家がいくつかあるんだが、その真ん中辺りを何度か見てたんだよ。不自然にな」

「家のど真ん中さ・・・・・・?」

「ああ、そこに何があるのか。それが鍵になると思うんだよ」

「何の鍵さね?」

「この村の野菜が美味い理由だよ」

「えっ?そんな理由なんさ?」

「そんな理由だよ。美味い野菜を作る秘訣があるなら、知りたいだろ?」

「あたいは肉のほうが・・・」

「ってのもあるが、秘密にされると気になるんだよなぁ。裏に何かヤバイ事があるかもしれねえ」

「はぁ・・・ま、乗りかかった船だし、手伝うけどさ・・・」

 ぶつくさ言いつつ、2人は動物たちの目も掻い潜り、目的地へと辿り着いた。二人は常に風下から移動していた為、また風の音が大きく、犬も気付けなかったのだろう。

 畜産農家が4件ほど集まった場所の真ん中には、井戸が2つ。墓が1つ。

 ただ、それだけだった。

「・・・・・・何だ?どういうこった?」

 ジョージは何度もその辺りを観察し、近くまで行ったが、それ以外の何も無かった。

 収穫らしい収穫もなく、二人は宿に引き上げる事になったのだった。

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