two-intertwined-hearts-1280002_1280のコピー

珈琲の大霊師171

 ドバードの南門周辺には、厩付きの宿が集中していた。門を潜った途端に、老若男女の呼び込みが馬車に殺到し、今夜の宿が決まっているかを尋ねてきた為、とりあえずジョージは一番人の良さそうな老人の宿に世話になることにした。

 ジョージの見る目が確かだったのか、老人は手馴れた仕草で馬を操り、古いが温かみのある内装の宿へと一行を案内したのだった。

「それにしても、今回の旅は馬車があって楽ちんですね」

 モカナがおしりをさすりながら言う。楽ちんという割りに、ずっと座って馬車が揺れる度に尻を摺ったりぶつけたりしているらしい。

「あー……、明日は食料もそうだが、全員にクッション買った方が良さそうだな。痛むか?」

「あ……、大丈夫ですよ」

「あった方がいいだろ。御者台は割と良いクッション使ってあるから気づかなかった」

「えへへ、じゃあ明日一緒に買いに行きましょう」

「だな。……で」

 ふと、ジョージが顔を上げる。その視線の先には、ドアの向こうから顔を覗かせているシオリの姿があった。

「お前は何やってんだ?さっさと入れよ」

「い、いや、その……えっ。お、おおお、同じ部屋、なんですか?」

「当たり前じゃないさ。4人部屋なんだし」

 早くもベッドに横になりながら、ルビーが頬杖をついて呆れたような顔をした。

「えっ、いやっ、そのっ、あた、あたしは、ちょっとそういうのまだ早いかなっって思うんだけどなっ」

「……はぁ?あんた、何考えてるさぁ?」

「???どうしたんですか?」

 ルビーとモカナは全く訳が分からないと言いたげに首を傾げる。

「とっ、年頃の男女が同じ部屋なんて、常識外れです!あ、あたし、そのっ、ま、まだなんです!」

「はぁ?何がぁ?」

「くく、口に出せっていうのっ!?何それ新しいプレイなの!?」

「……おい、落ち着け。お前が何を言いたいかは察したが、こいつらはまだ良く知らないんだよ。大丈夫、俺はお前にそういう興味は無いからよ」

「ぐさっ!!ど、どうせ、あたしなんて、ずんどーですけど!!」

「……めんどくさいなーお前。何て言えばいいんだよ?お前だけ外で寝るのか?あ?」

 あまりに面倒臭くなってきて、ジョージの言葉も荒れてくる。と、そこでやっと思考が追いついたのかルビーが体を起こした。

「あっ、お前もしかして子作りの心配してるのさ!?」

「こっ、こずっ!?」

「子作り?ルビーさん知ってるの?」

「まぁ、あたいも一応子供産めるらしーし。モカナも、たまにおなかから血が垂れてくるさ?こう、びちゃって」

「え?そんな怖いこと、ボク知りませんよ」

「えっ、モカナ、まだなのさ?」

「えええ、そんな怖いことになるんですかぁ!?」

「モカナ、まだだったんかー。あ、ジョージ、メシの時間聞いてきてくれないさ?」

「あ?……あー、分かった。ついでに店のじいさんにここらの話でも聞いてくるとすっか。後は頼んだ」

「ん。悪いさね」

「いや、まあ、正直、助かる」

 と、少し顔をしかめて居心地悪そうに部屋を出て行くジョージに、ルビーは少しだけ可愛いなと感じた。

「ほら、ジョージもいなくなったし、あんたも入ってくるさ」

「う、うう、なんだか、凄く入りづらいよ……」

 そう言いながら、しずしずと入室して、ルビーの隣のベッドに腰掛けるシオリ。

「細けー事はよく分からないけど、腹から血が出てくるようになると子供が作れるようになるらしいさ。そんで、子供ってのはそうなった女と、大人の男なら誰とでも作れるらしいんさ。シオリは、ジョージと子作りするのが嫌なんさ」

「え?どうしてですか?」

「あっ、あのねー……。あたしだって、いつ結婚できるか分からない行き遅れかもしれないけど、やっぱり、その、子供っていうのは好きな人と作るものだと思うのよ。例え、子供作る気がない行為でも、知り合って間もない人となんて……」

「ん?子作りって、子供を作るためにするんじゃないんさ?」

「あぅっ、ぐ、その、ね。えーっと、子供を作る為だけじゃないのよ。その、行為は。えっと、性交って、言うんだけどね」

「せーこー?」

「せーこーですか?」

 苦手な話題なのに、年下の女の子たちが無知な為、どうしても説明しなければならない立場になってしまい、シオリはたどたどしく話題を続けた。

「そう、その性交……うぅ、こんな話するの始めてよ……」

「子供を作る気が無いのに、せーこーするのはどういう時なんですか?」

「え、えーっと、その……。性交には、快感が伴うのよ」

「快感?気持ち良いって事さ?」

「まぁ、うん。そう……らしいの。あたし、まだだから良く知らないけどッ!!」

 あっはっはーと乾いた笑いが宿に響く。階下のジョージにも聞こえたそれに、宿屋の客達は一様に眉をしかめ、ジョージは頭を抱えるのだった。

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