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それでも人生は続くのだから

最近、時薬という言葉についてよく考える。同じ意味で日にち薬という言葉もあるらしい。いずれの言葉も、過去に経験したことが時間の経過によって癒されることを意味している。

時間をかけることによって解決したり、何かが良い方向に向かったりすることは、きっと想像以上にたくさんあるんだろう。

人生は有限だが、限られた時間を生きるなかでも、急ぎ過ぎないことが大事な局面も確かにあるのだと感じる。

ここ半年ほどの間に、それまで年単位で抱えてきたいくつかの心の荷物が、それぞれ収まるべきところに収まっていく感覚を何度も覚えた。

荷物には自ら望んで背負ったものも、半ば背負わざるを得なかったものもあったが、いずれもきれいに整理整頓できた。

ほぼすべての荷物が収まるべきところに収まり、落ち着くべきところに落ち着いた。特に直近の3か月はそれをはっきりと感じた。

社会人歴も10年目に入り、人生の転機になった東日本大震災の発生からも10年。上京と転職からも2年半ほど経った。約半年前に居住地を変え、それに伴って生活環境も日常の習慣も人間関係にも変化があった。様々な歯車が噛みあい、いい方向に作用してくれた気がする。

人生はタイミング、とも考える。人生には積極的に行動して状況を打開することが必要な局面もあれば、何も変わらないように思えたことが時機を待つことで好転することもある。

この半年ほどで自分に起きたことは後者だった。前向きな変化は、いまこのタイミングだったからこそ起きたのだろう。

「人生はタイミング」と同じくらい、何があっても人生は続くのだ、というごく当たり前のこともしみじみと実感している。

嬉しいことや悲しいこと、幸せなことに辛いこと。生きていればいろんなことがあるが、それでも人生は続いていく。そしてそれなりに人生を続けていれば、そのなかで何も起きなかった人なんて存在しない。

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この半年で噛みあった歯車のひとつに、最近完結したばかりのNHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』がある。

このドラマから受け取ったものはたくさんある。そのうちのひとつが、時間をかけることの大切さ。そして急ぎ過ぎないコミュニケーションの大切さだ。

『おかえりモネ』では、大災害により家族を失い葛藤し続ける人物や、過去に負ったトラウマを抱え続ける人物が描かれた。

彼ら彼女らはドラマのなかで時間が進むにつれて立ち直り、前に向かって歩き始めた。ただ必ずしも、個人の努力のみで前を向けたわけではない。

ほかの登場人物と交流を重ね、互いに思い合い支え合うなかで成長し、あるいは心境の変化を起こし、過去に向き合い前へと進むことができた。それは20~30代の主要登場人物たちだけでなく、彼らの親世代も同じだ。

このドラマで新鮮だったのは、登場人物たちのコミュニケーションがとてもスローなテンポだったこと。

ダラダラしているという意味ではなく、お互いに真摯に向き合おうとするからこそ、コミュニケーションを急ぎ過ぎない。時間をかけて、相手の心が整うのを待つ。

相手の気持ちや境遇を真剣に理解しようとするから、心から相手に寄り添おうとするから、自然とゆっくり進むコミュニケーションになる。

時間をかけるなかで本人も成長していくし、成長したからこそ理解できることや、受け止められる思いもある。

特に主人公のモネにはその印象を強く受けた。物語終盤で妹の未知の葛藤を受け止めることができたのは、菅波はもちろん登米編や東京編の登場人物たちと関わるなかでモネ自身が成長したからこそだろう。

地元を離れて多くの人と出会い、様々な経験をしてきた2020年のモネだからこそ、長年苦しんできた妹の心の痛みを受け止めることができた。

何があっても人生は続く。続くからこそ、いま何か解決していないものがあったとしても、いつか解決するかもしれない。自分自身の成長や周りの人との関係の変化、あるいはまだ見ぬ誰かとの出会いによって。

そして自分にとって大事な人たちがいま抱えている何かも、時間をかけることで理解できたり、受け止めたりできるようになるかもしれない。そしてそれは、結論を急ぎ過ぎないでもいいのだ。

どんなことが起きたとしても。それでも人生は続いていくのだから。周りの人たちを大切にできているならば、未来はきっといまよりも明るくなるはず。そう期待してみてもいいんじゃないか。

ドラマと私自身の最近の経験を重ねて、そんなことを考えた。

そういえば、しばらく抱えてきた心の荷物がすっきり片付いたことで、自分の人生を次のステップに進めてみる気になった。

ただ、あまり焦らなくてもいいかという気持ちもある。だから次の展開に向けた具体的な行動を始めるのは、誕生日を迎える来年4月ごろと決めた。

それまでの残り約5か月、引き続き仕事や参加している有志活動に励み、休みにはどんどん予定を作ってあちこち出歩き、趣味に打ち込み、新しい経験をたくさんして人生を全力で楽しんでいく。それがそのまま、次の展開への準備にもなる。

またこれまで以上に、半径10メートルくらいの距離感にいてくれる人たちに感謝して、大事にできるようにしたい。

これは物理的な距離ではなく、心理的な距離感のこと。遠方に暮らしている人のなかにも、それくらいの距離感で大事な人は何人もいる。

そして、同じような心の距離感でつながれる人を増やせるといい。これもまた、次への準備につながる。

来年の春、一歩踏み出した先にはまた新しい出会いがいくつもあるだろう。いまからそれがとても楽しみだ。

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