「Lucky」のビハインドシーン

楽曲のライナーノーツを随筆の形で書いていくビハインドシーンシリーズの第2弾です。
まず第1弾はこちら。

今回は「Lucky」という曲のメイキング的なお話をしようかなと思います。
バンドでは昨年の12月のライブで初披露としました。最初に披露したときから、当社比では名曲と名高いようで嬉しいです。

Luckyという曲

この曲はリフとBメロから作りました。
リフというのは、イントロとエンディングのところで流れてるキーボードのフレーズのことです。実はもともとはギターのフレーズとして浮かんだものだったんですが、ギターで弾けるフレーズではないのと、ギターでリードフレーズを弾くと結構歌いづらくなったり、バンドとしてのアレンジが難しくなったりなので、キーボードで弾いてもらうことにしました。
かたやBメロは、正確にはさらにその一部分で「ラッキー、ラッキー、ラッキー」と繰り返す部分のことですが、これが最初に出てきました。で、これが出てきたからタイトルを「Lucky」にしようと決めました。かのSUPERCARの代名詞的名曲にあやかっています。
ちなみにこのメロディを音階で歌うと「ラ・ソー、ラ・ソー、ラ・ソー」になっているということに今書きながら気づきました。

アレンジメントについて

アレンジメント(伴奏の作り込み)は、基本的には自分で一通り作るのですが、この曲に関してはすぐ音源にすることが決まったので、デモをもとにスタジオで密に打ち合わせをしました。特にイントロとアウトロ両方をフェードさせたのは初ですが、この始め方と終わり方の部分は試行錯誤した記憶があります。
物悲しい雰囲気の中でメロディは情緒的に歌い上げる感じなので、ギターが最初からバーンと鳴ってたり、ギターソロはかなり歪ませてかつ音程を揺らしてみたりと、聴いててグッと入り込めるような形になったなと思います。
ただそう思うのは結果がそうだからで、実際のところこのアレンジになったのはここ1〜2年くらいシューゲイザーとかオルタナ的な音楽にずっと傾倒していたからで、重めで分厚い音出してぇ〜って思いながらギター弾いたらこういう聞こえ方になったというだけなんですけど。

ちなみにシューゲイザーとかオルタナやりたくて書いた曲が他にもいくつかあるので、そういうのをライブでもできたらと思っています。OTODAMAでくるりとGRAPEVINEとCornelius見て余計に不思議な曲作りたさが湧いてきたんだよな

歌詞について

前も書いたように、歌詞についてこうなんですああなんですと書いて、聞いた人が自分だったらこう思うって部分を邪魔したくないし、答え合わせもしてほしくないので、「この歌詞はこういうイメージ」とはあまり書かず、「書いた時こんな状況だった」を淡々とお伝えしようかなと思います。

歌詞を書くときは、最初に決まった部分から書いていきます。基準があればあとの言葉の収まりも良くなると思うからです。この曲で言うと「ラッキー」ですね。
とりあえず一箇所置けたら、その置いた言葉と、当てはめたメロディと、あと伴奏の雰囲気とかから世界観のようなものが浮かび上がってくるので、そこから出て行かないようにだけすることを意識しています。

では書き始めの1歩目を「ラッキー」として、2歩目以降どう進めたのかというと、「ラッキー」という言葉が、歌った時にどう響いているかをまず確認しました。曲の雰囲気に対してどんなイメージの言葉を当てていくかを探っていくフェーズです。
言葉には、文字通りの意味を基本として、文字以外の意味(意図)があります。それを話す人が誰か、聞いている相手が誰かとか、話される状況・文脈・表情・目線などなど色んな要素がくっついていますよね。この要素というのがメロディとそれ以外の伴奏の2つだけになっているのが「曲」というわけです。
今回ので具体的に言うと、「この雰囲気でラッキーって繰り返して言う人、絶対心の底からラッキーとか思ってないだろ」と思ったので、「強がりでラッキーって言ってるのかもな」と仮定して、次の言葉を探していきました。

ただそれ以降は「何に対してラッキー(実はラッキーではないけど)って思うかなあ」ということを2023年のお盆あたりからずっと考えていて、1行ずつ浮かんだフレーズでなんとか埋めるような感じで、あんまりポンポンと言葉が出たわけではなかったと思います。こういう雰囲気の曲なので、何となく物寂しい感情が湧いて出た時に見逃さないようにして、スマホに走り書きしたり、ギターを抱えて歌ってみたりしながら書き進めて組み立てていきました。結構長い間書いていたので、最終的には理屈っぽい書き方をしていたようです。

なぜか中学生の数学の問題解いてたところに上書きしている

個人的には、ジグソーパズルの比喩が出せたことと、「なら僕はラッキー」と「でも正体は嘘つき」という脚韻を踏めたことが自己評価ポイントです。
最後に書いたのは2番のAメロの2行でしたが、ここはそれぞれ著名人の言葉とマンガのセリフを引用しています。元ネタさがしも面白いかも。

最後の一節を書き加えたとき、なんとなく引っぱってきた割には案外まとまった歌詞になってくれたので良かったです。
歌詞を一通りかけたら、その物語性に不整合がないか、仮歌を入れながら考えたりします。今回は一つ一つの言葉がちゃんと手をつないでいるというか、一箇所変えたら他が崩れるような形になっているなと思います。

実のところ歌詞は結構苦手です。書いている間に意味不明になったり、1つのワードの心地よさに持って行かれて全部書き直しになったりして、その度自分の語彙力と戦わないといけないので。

でも「Lucky」は、結果的に初見で聞いて「めっちゃいい」ってなってくれた人を数名観測できたので、いい曲なんだと思います。

おわりに

テンポの速い曲とか、踊れ〜みたいな雰囲気の曲とかがやっぱりライブでは映えるし、良い曲良いライブ認定されることも多いです。でも、こういったジャンルの曲が色んな人(よくライブを見てくれる人からべリバって名前は知ってるけどなあくらいの人まで)にちゃんと届いているという実感を持てた曲でもあります。最近はライブでほぼ毎回やってますのでぜひ聴きにきてください。音源も買えます

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