![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120389680/rectangle_large_type_2_985f2cbc003ddf1361347d77382af1dd.jpeg?width=800)
奥多摩でハイキングしてきた
「そうだ 奥多摩に行こう」
ふと思い立った。
都会の喧騒から離れて緑あふれる自然に癒されたい気分になっていた。
日常生活に疲れたというわけではないけど、毎日繰り返される日常から解放されたくなるのかもしれない。
遠すぎるのは嫌だけど、ほどよく遠い、かつ日帰りができて旅行感を味わえる場所を考えたときに奥多摩はうってつけだった。
自分も10代20代のころはあまり自然に興味がなくて家でゴロゴロしてた方がマシとすら思ってたくらいだが、いつの間にか自然に癒しを求めるようになった気がする。
歳を重ねるにつれて感性が豊かになったのだ。
白髪や肌のシミや腰痛といった肉体的な衰えと引き換えに。
…はぁ、辛い、死にたい。
でも奥多摩のどこに行こうか予定を考えるだけでもなんだかワクワクするぞ。
どこか楽しそうな場所はないかネットで調べてみる。
奥多摩湖やら、日原鍾乳洞やら、鳩ノ巣渓谷やらが有名どころだった。
しかし過去に奥多摩には何回か行ったことがあって、有名どころにはだいたい行ったことがあるようだった。
どうせなら訪れたことがない所が良い。
1つの観光スポットに目が留まった。
どうやら山の中で奥多摩最大級のキレイな滝が見られる場所があるらしい。
今週末に向けて準備が始まった。
天気は快晴で絶好のハイキング日和だった。
10月半ばで紅葉のピークがまだ先というのが少し残念だが、ポジティブに考えれば観光客はまだそんなに多くないはずだから悪くはなかった。
電車が走るにつれて車窓から見えるものも、家やアパートや会社などのたてものが密集したまさに市街地といった風景から、濃淡さまざまな緑色~茶色の山を中心とした自然の風景へと様変わりしていく。
いつの間にか電車内も、大きなリュックサックに撥水性のよさそうなカラフルなアウターに登山靴といった格好の暇人乗客ばかりになっている。
家を出て2時間弱ほど電車に揺られていたが、途中に知人と合流してきれいな風景をなんとなく眺めながらお話しているうちにあっという間に奥多摩駅に到着した。
![](https://assets.st-note.com/img/1698729680019-3Am7He4Usm.jpg?width=800)
同じ東京都でも、奥多摩は標高が高いからなのか都心と比べると少し寒い。
そして何度も深呼吸したくなるくらい空気がキレイだと感じた。
まず周辺の地図がほしかったのですぐ近くの観光案内所に入って係員の女性に話し掛けた。
僕「百尋ノ滝周辺のマップってありますか?」
係員「川苔山に行くの?もう遅いから登ったらダメよ」
僕「いえ、滝を見に行くだけなんです」
係員「あら、そうなの?じゃあ、これマップね」
百尋ノ滝とは川苔山の頂上に行く途中にある落差約40メートルの滝である。
話を聞くと、百尋ノ滝まではバス停から片道90分ほどで行けて、川苔山の頂上までは(標高1364m)はプラス2時間ほどかかるらしい。
まあ、確かに結構時間がかかるけど今11時だから頂上まで行っても完全に暗くなる前には帰ってこれるじゃないか。
そのことをおばちゃんにつっこむと、「まぁ、登山に慣れてる人ならねぇ…」と口ごもっていた。
軽装でいかにも登山初心者っぽい雰囲気を醸し出しているから、こいつらじゃ無理だと思われてしまったのだろう。
元々頂上まで登る予定はなかったが、なんだか舐められてしまうのは悔しい。
滑落事故がたまにあるらしいものの、初心者でも登れる山だと登山系サイトに書いてあったし、僕自身は似たような標高の山(大山や鍋割山)に登頂したことだってある。
そもそも山に来て頂上まで登らないのは、イタリアまで行ってピザを食べないで帰るのと同じことだと思い始めた。
見返してやろう、どうせ余裕だ。
闘争心に火がついた。
歩く前にまず昼食をとりたかったが、1時間に1本しかないバスに乗り遅れるわけにはいかなかったので、近くのお弁当屋さんで食べ物を買ってぎりぎりバスに乗り込んだ。
山道を走っていると、明らかに誰も住んでいない朽ちかけたボロボロの家がところどころに建っていたり、ゴツゴツした岩の間にヒスイ色の渓流が流れていたり、それらの風景が遠くに来たときに感じる非日常的な気分に浸らせてくれている。
バスに揺られること15分ほど。
これからハイキングする予定の山近くのバス停に到着した。
![](https://assets.st-note.com/img/1698730095804-Qr3O0BLWd0.jpg?width=800)
まずは90分ほどかかる百尋ノ滝を目指す。途中から山道になって登りもあるので、普段全く歩かない人だと滝に行くだけでもなかなか大変らしい。
最初はゆるやかな坂の林道だった。
やたらと高い木がたくさん生えている。
![](https://assets.st-note.com/img/1698730274968-fIh02ZHRyr.jpg?width=800)
新鮮な空気と爽やかな木々の香りに包まれて、鳥のさえずりを聞きながら一歩一歩進んでいく。
なんとも気持ちが良い。いくらでも歩けそうだ。
木々に挟まれた道を40分ほど歩いたところで看板がでてきた。
![](https://assets.st-note.com/img/1698730465897-LtXEyvO1ar.jpg?width=800)
まだまだ先は長い。
これから入山し、ゆっくり歩きながら百尋ノ滝、そして頂上を目指すのだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1698731200665-plNZry8LAw.jpg?width=800)
清流に沿って登っていく。
マイナスイオンというものがあるとすれば、こういう場所で感じることができるのだろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1698731287410-B3cy81ijD9.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698730918620-oLQFU0V2lT.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698731003460-29jt7LACoj.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698731397189-zdI2tKJccm.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698731716887-K1TP8FeFQX.jpg?width=800)
いくつもの橋を渡り、岩を越えて、沢を登り、40分ほど歩いただろうか。
いよいよ百尋ノ滝に到着した。
滝との感動の対面である。
![](https://assets.st-note.com/img/1698743667463-D3NF78UYyg.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698743743621-urEB2RcaHO.jpg?width=800)
涼しいにも関わらず汗がじんわりと額や首筋に流れ、息切れしてしまうくらい歩いてきたが、その疲れが吹っ飛ぶほど綺麗だ。
写真だと少し分かりづらいかもしれないが実物はとても良かった。
がんばった甲斐があった。
ここで待ちに待った昼食をとることにした。
滝周辺には自分たちしかいなかったので、滝の目の前で食べることができた。
![](https://assets.st-note.com/img/1698743878589-XSvKs2crjA.jpg?width=800)
あとはカツサンドやみかんも食べた。山で食べる食事はやはり格別である。
さて、休憩と腹ごしらえをしたところでまた山登りだ。
いや、でも待ってほしい。
結構歩いたのに、ここから頂上まであと2時間もかかるのか。
やっぱり頂上を目指すのはやめようかな。
うん、それがいい。
元々、登頂する予定はなかったんだし。
暗くなったらまずい。
そもそも山を熟知した係員のおばちゃんがそう忠告してくれたのだから、素直に従うべきだ。
山を舐めたらいけないのだ。
決して、疲れたとか、なんだか膝が痛いとか、早く温泉に浸かってその後ゴロゴロしながらTVを見たいとか、そんな理由ではない。絶対だ。
これは「勇気ある撤退」である。
知人にもそう力説すると、しぶしぶではあるが同意してくれた。
英断した後、僕たちはゆっくりと降り始めた。これは凱旋であるとも言える。
あーあ、もう少しで登頂できたんだけどな。
ま、でもしょうがない。
自分一人だけならたぶん登ってたけど、同行者を危険な目に晒すわけにはいかない。
またいつか登る機会はあるさ。
今度は朝早くに来よう。
そんなことを小声でぶつぶつ呟きながら、山を降りていく。
知人には冷ややかな視線を送られている気配を感じたが、きっと気のせいだろう。
登りは終わったからと言ってまだ気を抜いてはいけない。
山を下り終えるまでが登山なのだ。
実は、登りより下りの方が足に負担はかかるし、遭難事故の多くは下山時に起きていることはあまり知られていない。
それに、この山は過去に熊が出没したこともある。
決して安全な山ではない。
楽しそうに写真をパシャパシャ撮りながら下っている知人に、まだまだ油断するなと一喝して慎重に山を下っていく。
それにしても、素人と山に来るのは大変だな。
滝で昼食をとった時に「せっかくだし頂上まで行こうよ」と駄々をこねるもんだから、「命を預かる身として無茶はさせられない、無茶は死に直結する」ということを散々力説したのに何も分かっちゃいない。ったく。
そう、いち登山家として意見を述べさせてもらうが、山の怖さは山を知るものにしか分からないのだ。
ってな具合でなんとか下山に成功。
現時点で15時過ぎくらい。
時間はあるのでまだまだ帰りたくない。どうしようか2人で考えたのち、バスや徒歩で近くを散策することにした。
![](https://assets.st-note.com/img/1698745418387-kAX8QjO4hE.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698745474185-ykuOoJ9P35.jpg?width=800)
夜になると鹿らしき動物の鳴き声が聞こえてきた。ここが東京だとはとても思えないが、東京なのだ。
夕飯はヤマメの珍しい刺し身や塩焼きを食べた。
![](https://assets.st-note.com/img/1698745600969-KsIPs0BdDk.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1698745706572-q2YIiPnuMh.jpg?width=800)
写真はないが、あと湯豆腐も食べた。ここらへんは水がキレイだからか、美味しかった。
旅の締めくくりに、温泉に入ることもできて身体の疲れをとることができた。
総括すると、今回の奥多摩ハイキングの旅はとても楽しかったし、良い時間を過ごすことができた。
あえて今回のハイキングで唯一不服なことをあげるとすれば、一緒に行った相手から自分に対する呼び名が「●●くん」から「ヘタレ」と不名誉なものにチェンジしてしまったことである。
サポートしていただけたら喜びます!いただいたサポートはマッサージ時に必要な道具の購入費用に充てさせていただきます!