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劇団のスタイル決定づけたiakuの「流れんな」。広島弁での再演で登場人物たちの焦燥感と作品の温度がアップ…★劇評★【舞台=流れんな(2024)】

 小劇場系の劇団が初めて自主公演のために書き下ろした作品は劇団にとって思い出深いものだが、それがその劇団のその後の作風や方向性を決めるものになっていたとしたら、その思いはとりわけ格別のものがある。今年1月に発表された第27回鶴屋南北戯曲賞を昨年上演した「モモンバのくくり罠」で受賞した劇作家・演出家の横山拓也が率いる「iaku」にとって、2014年に初演した「流れんな」という作品がまさにそうだ。レパートリー公演の初演のほとんどが他団体の主催公演での上演であることが多かった初期のiakuが初めてiaku公演に書き下ろし、社会的な題材を散りばめながら議論を喚起する圧倒的な会話劇というiakuの今日のスタイルを確立させた作風、再演では東京(三鷹市芸術文化センター)での長期間の上演が実現するなど、iakuの発展とともにあるような存在。その「流れんな」が東京をはじめ各都市で再演されている。しかも今回は、出演する俳優に広島出身者が多かったこともあって、せりふを全編広島弁に書き換え、新たな表現に挑戦している。広島弁が持つ強い土着性や郷愁性が時代の波に揺れる登場人物たちの焦燥をより鮮やかに映し出し、作品の温度を高める効果をあげている。あらためて作品の力強さを証明したかたちだ。(写真は舞台「流れんな」とは関係ありません。単なるイメージです)。
 
 舞台「流れんな」は2024年7月25~29日に大阪市の・in→dependent theatre 2nd、8月3~4日に名古屋市のメニコン シアターAoi、9月6~8日に広島市のJMSアステールプラザ 多目的スタジオで上演される。これに先立って7月11~21日に東京・下北沢のザ・スズナリで上演された東京公演はすべて終了している。
 なお、広島公演は「凪の演劇祭~HIROSHIMAシアターフェスティバル2024~」参加作品となっている。
 
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★舞台「流れんな」公演情報

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