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ぶつかり合っているのは陪審員個人ではなく社会と社会。そのきしみが新たな問題点を提示する…★劇評★【舞台=十二人の怒れる男(2020)】

 タイトルだけ聞いていると、12人の男たちが自らの怒りをぶつけ合いながら喧々諤々と議論しているようなイメージがあるが、実際は議論なんかできればしたくない、俗世にまみれた陪審員たちが、最初は軽視していたものにふとしたきっかけから思いをいたすようになり、真剣な議論へと導かれていく物語。しかしきれいごとの世界ではなく、自らの都合や自我、個人的な価値観、置かれている状況などをぶつけ合うものだからあっち行ったりこっち行ったり。しかし推理による知的なゲームのような趣もあり、会議室というたったひとつの場所で展開する極めて演劇的な仕組みは私たちをわくわくさせてくれる。英国のリンゼイ・ポズナーによる演出で展開する2020年版の舞台「十二人の怒れる男」は、堤真一というしっかりとした軸に、石丸幹二、山崎一、ベンガルといった演劇のマエストロたちの技が絡み合い、溝端淳平、永山絢斗らの表現する巧妙に計算されたキャラクターの面白さも加わって、観客たちを惹きつけてやまない。ぶつかり合っているのはそれぞれの陪審員個人ではなく、社会と社会。そのきしみが新たな問題点を提示する様子は、この作品がやはり問題作なのだということをあらためて感じさせてくれる。
 舞台「十二人の怒れる男」は、9月11日~10月4日に東京・渋谷のシアターコクーンで上演される。

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★「SEVEN HEARTS」の舞台「十二人の怒れる男」劇評ページ

★ブログは序文のみ無料で読めます。劇評の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「note」で有料公開しています。作品の魅力や前提となる設定の説明。堤真一さん、溝端淳平さん、永山絢斗さん、山崎一さん、石丸幹二さんらの演技に対する批評、リンゼイ・ポズナーさんの演出に対する評価などが掲載されています。

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★舞台「十二人の怒れる男」公演情報

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