ミュージカルというものの定義を一回りも二回りも拡張した作品として、大きな影響を与えていくだろう…★劇評★【ミュージカル=ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812(2019)】
トルストイが記した世界文学史上最高の小説のひとつ「戦争と平和」全4巻と2つのエピローグのうち、ナポレオン戦争の色が濃い第1巻と第3巻、第4巻の間にひっそりと存在しているような、しかし極めて人間的な営みが展開している第2巻の後半部分を主な舞台としてニューヨークで斬新なミュージカルとして仕立てられたミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」の日本人キャスト版が、ついに日本初演されている。ほぼ全編にわたってさまざまな人間関係の下、大河ドラマがいくつあっても足りないようなドラマを繰り広げる男女の愛や恋、そして結婚や不倫、生と死の問題をすくいとったような物語は、どれだけ時代が進もうと変わらない人間の心の深層と、与えられた時間の中で生を炸裂させる哀しくも愛おしい人間というものの生きざまを現代音楽の鮮烈な光の中にあふれさせて、これまで誰も感じたことのない感動を私たちの心に運んでくる。今や日本のミュージカル界を先頭で引っ張る井上芳雄と、磨き続けてきた才能がついにミュージカルという舞台でも花開いた乃木坂46の生田絵梨花を中心に、若手・中堅の注目株を惜しげもなく投入した本作は、米国のみならず日本でもミュージカルというものの定義を一回りも二回りも拡張した作品として、大きな影響を与えていくだろう。演出は小林香。(写真はミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」とは関係ありません)
ミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」は1月5~27日に東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演される。
★ミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」公式サイト
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