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人々の心に刻み付けられた記憶を怒涛のように呼び覚ます圧倒的な言葉の力…★劇評★【舞台=フェイクスピア(2021)】

 言葉がこれほど軽んじられている時代もないだろう。フェイク(偽物)であることがこれほど力を持った時代もないだろう。かの国の愚劣な王に振り回され続けた4年間を終えて、その兆候は少しは改善するかもしれないと期待した人も多かったはずだが、個人と個人を細胞のように結び付け、社会の有機的なネットワークを形成していたはずの言葉はその力を失い、人々もまたその言葉を信じなくなった。一度離反したその信頼は容易には戻ってこないということなのだろう。世界と同様に日本でも顕著になった「言葉が空虚になった時代」の出現は、言葉を駆使してこの国の理(ことわり)を解き、言葉が生来持つ生きるための力を私たちに浴びせ続けてきた野田秀樹にとってはつらい時代だ。しかし一方では警世の問題作を数多く発表して来た野田にとっては抗い、挑みがいのある世の中でもある。最新作であるNODA・MAP第24回公演「フェイクスピア」(作・演出:野田秀樹)が、死者の霊を降臨させて生者と会話するイタコなど言葉をめぐるこの国の精神性を手掛かりにしながら終盤に向けてさらに壮大なスケールへと昇華し、人々の心に刻み付けられた記憶を怒涛のように呼び覚ます圧倒的な言葉の力を感じさせているのは、言葉の空虚さを信じず、最後まで絶対的な希望を持って演劇に向き合っている野田の言葉に対する絶対的な信頼感があるからだ。(画像は舞台「フェイクスピア」とは関係ありません。イメージです)

 舞台「フェイクスピア」は、5月24日~7月11日に東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで、7月15~25日に大阪市の新歌舞伎座で上演される。

阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます。舞台写真はブログでのみ掲載しています。
★「SEVEN HEARTS」舞台「フェイクスピア」

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。高橋一生さんや前田敦子さん、川平慈英さん、伊原剛志さん、白石加代子さん、村岡希美さん、野田秀樹さん、橋爪功さんら俳優陣の演技や、野田秀樹さんの戯曲や演出・舞台表現などに対する評価が掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「フェイクスピア」公演情報

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