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何のために物語を生み出すのか。演劇的なダイナミズムにぞくぞくする作品…★劇評★【舞台=アンチポデス(2022)】

 書く、観る、読む、話す、創る。そんな物語に関することを横断的に表現する「モノガタリスト」を目指して表現活動をしてきた私は「物語」に思い入れが強い。映画、ドラマ、演劇、小説など物語をむさぼるようにウォッチしてきたし、時には同時並行でその進行を見守って来た。だから2013年初演の舞台「フリック」で現代社会の構造を鋭く描き出し、世界から注目されたアニー・ベイカーの作品の中に物語をテーマにした作品があると聞いて狂喜乱舞した。何かを伝える時、だれかを理解しようという時、そこにはお話、つまり物語が必要で、それはコミュニケーションそのもの。コミュニケーションツールは飛躍的に増えているのに、そのコミュニケーションが世界中でゆがみつつある現代を凝視する時、物語に焦点を絞ることほど有効な手段はないからだ。場所も時代も分からない現代社会の片隅の部屋に、物語を創り出すことだけを目的に集められたクリエイターたちのおびただしい会話と、朗々と語られる物語で、唯一無二の、そしてもう一つの物語が立ち上がっていく。新国立劇場小劇場で上演された舞台「アンチポデス」には、その演劇的なダイナミズムにぞくぞくする稀有な体験をさせてもらった。演出は新国立劇場演劇部門芸術監督の小川絵梨子で、翻訳は小田島創志。(画像は舞台「アンチポデス」とは関係ありません。単なるイメージです)
 舞台「アンチポデス」は2022年4月8~24日に東京・初台の新国立劇場小劇場で上演された。4月3~4日にはプレビュー公演が予定されていましたが、中止になっています。また本公演のうち、8~13日の公演も中止になっています。公演はすべて終了しています。

 出演者1人に発熱の症状があり、ウイルス検査を実施したところ新型コロナウイルスに感染していることが判明。このため4月3、4日のプレビュー公演は中止し、8日からの本公演には代役が立てられた。さらに4月7日になって公演関係者1人に発熱の症状が見られて全員がPCR検査を受検することになったため、8~11日の本公演を中止した。この関係者を含め全員が陰性と判定されたものの、今度は11日になって、出演予定の富岡晃一郎さんが体調不良のため降板することになり、チョウヨンホさんが代役に立つことが決定。稽古などのため13日の公演を中止し、14日にようやく開幕した。その後、休演していた出演者が回復し、16日の公演から復帰して、千穐楽まで出演した。
 中止となった公演日にチケットを確保していた観客にとっては返す返すも悔しい結果となったが、繰り返し難しい判断を迫られたスタッフや新国立劇場側が適切な判断を下したことを高く評価したいし、準備の時間がほとんどない中で代役を引き受けた万里紗さんやチョウヨンホさんには敬意を表したい。そして、思い悩んだ苦しい日々を経て、見事現場に戻って来た出演者にも拍手を送りたい。

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★舞台「アンチポデス」公演情報=公演はすべて終了しています

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