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密室であるがゆえの密度の濃さが大根仁のバンキッシュポップな演出でさらに膨張し、今にも劇場から社会に飛び出しそうなエネルギーを放出していた…★劇評★【舞台=マシーン日記(2021)】

 暴力は実は愛だった、などという甘えたレトリックはいまや文学的にも科学的にも死に絶えているが、暴力と愛という2つの一見相反する感情の要素を「支配」という鎖で読み解いた時、人間の原初的な衝動の解明に一種の突破口が見つかることもまた確かである。松尾スズキが1996年にプロデュース集団からの依頼で執筆し、3度の再演とパリ公演で今や伝説の戯曲と化した「マシーン日記」にはそれらの要素がすべて含まれている。家族の物語に落とし込まなくても、暴走する怒りや共依存など、現代の社会にあふれている感情のあり様をあえて町工場のプレハブ小屋という狭小な空間に押し込めて描いたこの作品が、クールな中に鮮烈な輝きを放つ横山裕、あどけない表情からは想像できない底なし沼を持つ森川葵、どんな状況も人間の営みに変える大倉孝二、自然なのに異質で魅惑的な秋山菜津子というしびれるようなキャスティングで帰って来た。密室であるがゆえの戯曲の密度の濃さは鬼才、大根仁のバンキッシュなポップセンスによって、さらに充満、膨張し、今にも劇場を飛び越えて日本社会に飛び出しそうなエネルギーを放出していた。(画像は舞台「マシーン日記」とは関係ありません。イメージです)
 舞台「マシーン日記」は2月6~27日(当初の初日は2月3日だったが延期された)に東京・渋谷のシアターコクーンで、3月5~15日に京都市のロームシアター京都メインホールで上演される。

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★「SEVEN HEARTS」の舞台「マシーン日記」劇評ページ

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★舞台「マシーン日記」公演情報

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