AdobeStock_144922029_Previewイスタンブール

幾重にも重なる複雑な感情と記憶の森の中で、それでも生きていくための一筋の光を見つけていく三姉妹…★劇評★【舞台=母と惑星について、および自転する女たちの記録(2019)】

 再生。私たちはこの言葉を安易に使い過ぎなのかもしれない。傷ついた心身や破壊された場所から立ち上がるためには、阪神大震災や東日本大震災のその後を見ても分かるように、想像を絶するような苦しみとの対話や膨大なエネルギーを消費する力が必要になる。そうして人は初めて再生へと向かうのだ。家族との過去の思い出やトラウマを引きずった者たちにとっても再生は容易なものではない。特に同性の親として母という愛憎渦巻く存在とつながって来た娘たちにとって、それを乗り越えるためにはさまざまな痛みと困難が伴うものだ。劇団モダンスイマーズの座付き作家で、骨太な会話劇に定評がある劇作家・演出家の蓬莱竜太が、女性の繊細な心のうちを旅するような新たな作風を目覚めさせた2008年の舞台「まほろば」に続いて、再び書下ろしと演出というかたちでタッグを組んだ演出家、栗山民也と発表した2016年の舞台「母と惑星について、および自転する女たちの記録」が再演され、幾重にも重なる複雑な感情と記憶の森の中で、それでも生きていくための一筋の光を見つけていく三姉妹の姿が再び大きな感動を呼んでいる。初演からさらに磨き上げられた演出や田畑智子、鈴木杏という多くのクリエイターから出演を懇願される表現力の高い女優とともに、今回から参加したキムラ緑子と芳根京子の魂のこもった演技が秀逸で、どこまでも奥行きの拡がる作品となっている。(写真は舞台「母と惑星について、および自転する女たちの記録」とは関係ありません)
 舞台「母と惑星について、および自転する女たちの記録」は3月5~26日に東京・新宿の紀伊國屋ホールで、4月2~3日に高知市の高知市文化プラザかるぽーと大ホールで、4月6日に北九州市の北九州芸術劇場中劇場で、4月13~14日に京都市のロームシアター京都サウスホールで、4月20~21日に愛知県豊橋市の穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールで、4月25日に長崎市の長崎市民会館文化ホールで上演される。

★舞台「母と惑星について、および自転する女たちの記録」特設ページ

ここから先は

3,533字
この記事のみ ¥ 300
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?