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太宰の最晩年を包む得も言われぬ哀歓と人生への開き直りによる奔放な逸脱を祝祭的喧騒にまで昇華させた作品…★劇評★【舞台=グッド・バイ(2018)】

 これまでに「トカトントンと」(2012年)と「駈込ミ訴へ」(2013年)という2つの舞台作品で太宰治作品の演劇化に取り組んできた「地点」が、太宰の未完の遺作を題材にした舞台「グッド・バイ」を創り上げた。太宰の他の多くの作品の要素も溶かし込みながら、このユーモア小説とまで呼ばれる明るい色調の「グッド・バイ」を、ギター、ベース、ドラムスから成るバンド「空間現代」の演奏をバックにとびきり弾けた感嘆の詩に仕立て上げた地点の恐るべき感覚は、結果的には入水自殺(無理心中に巻き込まれたという説もあり)という救いようのない結果へとなだれ込んでいった太宰の最晩年を包む得も言われぬ哀歓と人生への開き直りによる奔放な逸脱を祝祭的喧騒にまで昇華させることにつながっており、またひとつ新たな到達点へと地点を導く作品となったことに確信を抱かせる。演出は「地点」主宰の三浦基。
 舞台「グッド・バイ」は12月13~16日に京都市の京都芸術センター講堂で、12月20~27日に東京・吉祥寺の吉祥寺シアターで上演された。公演はすべて終了しています。

★舞台「グッド・バイ」公演情報=公演はすべて終了しています。

地点公式サイト

吉祥寺シアター公式サイト

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