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散歩と缶コーヒー。

冬の夜の散歩。
冷たく心地よい風を感じて缶コーヒーを飲む。
この時だけは手袋を外し、コーヒーの暖かさを感じる。
空気がいつもより澄んでいるように感じ、自分の足音が乾いた空に響く。
どこまで行こうか。
どこまででも行けそうだ。
夜は長い。
空に星がひとつかふたつ。
本当の姿が見えないのはこの世界の真理か。
その中でも姿を見せてくれる彼らは私の指針となる。
どこまで行こうか。
どこまででも行けそうだ。
遠くでサイレンの音。
この音がなくなることはない。
このサイレンがあなたからのものならいいのに。
あなたからのサイレンは聞こえない。
笑顔のあなたの「大丈夫」を信じた私は、明日のあなたを見失う。
飲み終わった缶コーヒーが手の中で冷えていく。
今日はここまでかな。
どこまでも行けないな。
明日のことを考え、自分の居場所を知る。
誰もいない河川敷で火をつけたタバコの先が暗闇で光る。
冷たい風が吹く。
暖かくして眠ろう。
空に星がひとつかふたつ。
振り返った先には無数の光が道を照らしていた。

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