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目が覚めた

今日は目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
まだ外は暗く、空には満月が浮かんでいる。
携帯で時間を確認しようとしたが、枕元に携帯がなかった。
どこに置いたか昨夜の記憶を思い出そうとしたが、うまく思い出せない。
昨夜もいつも通り仕事が終わればすぐに家に帰り、冷凍のパティを温め、野菜やキノコを炒めたものを食べた。
もちろんハイボールをお供にしていたのは言うまでもないが、飲みすぎたということもない。
食後はパソコンで日記を書き、ハイボールを飲み、イラストをInstagramとTwitterに投稿して「いいね」の数を見ながらさらにハイボールを煽った。

その後の記憶が定かではない。
いつも通りならその後、横になって知らぬ間に寝ているのだが、そのまま寝ていたら炬燵で目覚めるはずである。
しかし、今日目覚めたのは布団の中である。
いつ移動したのか。
そして携帯をどこに置いたのか。
目覚ましをセットした記憶もないので音が鳴る保証もない。
外はまだ暗い。
時間だけの確認なら置き時計があるのでそれを見た。
時計は0:00と表示している。
アナログの腕時計も見てみたが長針短針ともに12を指している。
何かおかしい。
外の状況を確認するためにベランダに出てみても寒さを感じない。
この季節の夜に寒さを感じないのはおかしい。
なんだこれは。
夢か?


目が覚めた。
うっすら先程の記憶が残る。
携帯は枕元にある。
妙にリアルな夢だった。
普段の夢は目覚めた後に夢だったなと理解するのだが、先程の記憶が夢だったのかどうか曖昧な感覚が残っている。
携帯の時間は4時44分。
まさかのゾロ目だ。
自分が携帯を見るときはゾロ目の時が多いという人がいるが、ゾロ目の時は印象に残り覚えていることが多いというものらしい。
部屋の扉が開き彼女が入ってきた。
「もうこの時間に用はないよね」
彼女はそう言うと扉の先にあるベランダの扉を開けその先に消えた。
「用はないけど寂しいよ」
そう言った自分に疑問を抱く。
あれ?自分に彼女がいたっけ?
用って何?ベランダからどこに?


目が覚めた。
夢の記憶はしっかり残っている。
起き上がり炬燵の上のパソコンでYoutubeが流れている。
なんの動画かわからないが、経済や社会についての話をしている。
いつも通り炬燵で眠ってしまったらしい。
パソコンの画面で男が語りかける。
「お前は今どこにいる。それは正解なのか」
「感覚に騙されるな。まだそこは渦中だ」
なんだこの動画は。こいつは誰だ。ん?俺か?


目が覚めた。
外はうっすら明るい。
先程までの記憶は残っている。
これは夢なのか現実なのか。
徐々に確証がなくなってきている。
ベッドから起きてトイレに行こうとする。
そこで気づく。家にベッドはない。


目が覚めた。
もう目覚めたことが本当かどうか信じられない。
外は明るいのだが、この明るさが本当なのかわからない。
枕元の携帯を見た。
通知が何件かある。
確認してみると高校の頃の友人からの連絡だった。
「今度飲みに行こうよ」
ありがたい誘いに胸が躍った。
いつぶりだろう。
自分の予定を送ろうとしたのだが、ふとその友人の顔が思い出せないことに気づいた。
なんでだろう。
いつも一緒にいたような気がするが、誰だこいつは。
すると携帯がブルっと震え新たな通知が届いた。
「気付いた?」


目が覚めた。
もう自分が目覚めているかの自信がなかった。
これが夢か現実かよくわからない。
何か違和感があれば夢で、そうじゃなければ現実だ。
そして今のところ違和感はない。
ハイボールを片手にパソコンで日記を書いている。
この文章もその延長線上にあるのだが、誰かが読んでいれば現実で、そうじゃなければ夢である。
しかし、それを自分が知る術はない。
これは夢か現実か。
外の状況を確認するためにベランダに出た。
もし夢ならこのベランダから飛び出しても問題なく目覚めるだろう。
この季節の早朝は肌寒い。吐く息も少し白い。
川沿いの土手を走っている人がいる。
新しい朝だ。
手すりに足をかけベランダから飛び出した。


目が覚めた。

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