マガジンのカバー画像

142
運営しているクリエイター

2019年3月の記事一覧

きれいごと

綺麗事を聞き飽きるどころか
使い飽きて
思い飽きてしまった
わたしたち

それで殴られる痛さも
それで誤魔化す気持ち悪さも
もう沢山で
でもじゃあどんな言葉が
今のわたしたちに馴染むのだろう

吐き出した咳は
白く冬に溶けた
あなたが体を折り曲げて
泣いた

本当の気持ちを語るのに
不慣れなわたしたちは
不器用に寄り添い合い
ごめんねって繰り返した

りんりんりん
不意にかかってくる電話
わたしと

もっとみる
輪唱

輪唱

寂しさと痛みどっち取る
悲しみと孤独どっち取る
俺は君といたいのか
俺はただイタイのか

幸福追いかけて迷い込んだ夢の果て
闇夜に静まる狂気のほとり
月に誘われ俺は刃を手にした
「何頭狩れば家へ帰れる?」
水草が囁く
「家とは一体何のことなの?」

牛蛙が輪唱を始める
蛍の祭りはワンシーズン限り
ただ一人ただ一度の相手選ぶ命なら
誰が今の俺を望むだろう
俺は誰を望むだろう

ひとり

多分僕はもっと早く
ひとりになるべきだったんだ
いや多分とっくの昔から
ひとりぼっちであるのに
それを誤魔化し続けてしまったんだ
ツケが溜まっている

「ひとはひとりだ」
皆孤独だ
それが真実だと
何故みなみな認めたがらないのか
何を成そうと
成すまいと
孤独の前に僕達はみな
丸裸のけものだ

この孤独は紛れもなく
僕だけのものであるからして
君にも母にも天にも
取り上げられることはない
それを安

もっとみる

脱走

仮面を着けて語り出す
頭の中散在する
チープな言葉掻き集め
織り上げて

iPhoneがやっぱり無理とか
結婚するならPanasonicねとか
SHARPは信用できるけど冷たそうとか
samsungにご用心とか

Jobsの話してたら
君が笑ってワケもなく嬉しかった
これが幸福なら
ああ僕は君以外愛せそうにない

まるで祭りのように
吸い込まれ狂乱繰り返し
ここがどこかわからなくなるまで
踊り果て

もっとみる

いつか

戻るべき「いつか」などない
「変わったね」と嘆かれても
君の前にいたその僕が
本当に僕だったのか君にどうして
確かめられるというの?

今本当を語ろうとする僕に
聞きたくないと耳塞いで
何を見てるつもりでいるの
思い出のスクリーンにいるのは
人形みたいに都合のよかった僕だけ

何もかも捨ててしまったら
僕は今どこへ行くだろう
全て幻なんだと知った後で
世界に最初に望むものは何だろう

舗装されたコ

もっとみる

欲と罪と命

この三つ並べて
君の前に立つ

何故罪を罪と定めるのか
システムを保つため糾われた縄
僕らはルール無しに
生きられないほど増えすぎ
頭も大きくなりすぎた

社会社会社会と言うが
人が三人いれば核家族にも
井戸端にも
路地裏にも
校舎の陰にも社会はあり

二人きり生きていくなら
三人目いなくていいなら
それは死へ向かう静かな幸福
抱きしめ合い見つめ合い
永遠を語り合う
生ぬるく溶けてゆくだけの日々

もっとみる

さくら

あなたが私の名前呼んだ声
一回分しか思い出せないけど
呼び捨てにされるのが嫌いだったのに
それは桜みたいな音だった

もうすぐ春ね
くしゃみしながら
あたたかくならないでと
何故か願ってる

冬に囲まれて
二人で繋いだ手
あなたのぬくもりだけを頼りに
進みたいと思った

愛の言葉を記号みたいに
使いこなしてきたはずが
あらゆる言葉が今あなたのために
あなただけのためにあり
そしてあなた

もっとみる

あなたが僕の夜空に現れて
もう何年経ったのだろう
ある日見上げた空に
紅い星が煌めいていた

俯いて歩けば
下を向いていれば
その美しさに
目が眩むことも
手が届かないと
嘆くこともない

僕は泣くことも出来ずに
前をぼうっと見て歩いてた
とにかく足を前へ
右、左、右、左
リズム崩さずに

ある日小石に躓いて転んで
立ち上がれなくなった
カラダココロ何もかも投げ出して
仰いだ空にあなたがいた

もっとみる