さくら

あなたが私の名前呼んだ声
一回分しか思い出せないけど
呼び捨てにされるのが嫌いだったのに
それは桜みたいな音だった

もうすぐ春ね
くしゃみしながら
あたたかくならないでと
何故か願ってる

冬に囲まれて
二人で繋いだ手
あなたのぬくもりだけを頼りに
進みたいと思った

愛の言葉を記号みたいに
使いこなしてきたはずが
あらゆる言葉が今あなたのために
あなただけのためにあり
そしてあなたへ向かっている

欲望も嫉妬も羨望も愛情も
あなたの前では隠せない
あなたを愛そうとするなら
あなたに愛されることもまた
試練のように私の扉を叩く

触れて気づく
思考するまでもなく既に
あなたを信じていたことに
流れ出す気持ちが
言葉になる前にキスをした

あなたに出会うまで寂しかった
あなたに出会ってはじめて知った
この孤独を
この痛みを
もう隠して歩けない
あなたを知ったこの世界では
あなたを愛さずに生きてゆけない

壊さないように
私たちはゆっくり歩き出す
愛し方を覚えていく
それはとてもささやかで
弱く優しく脆く熱く烈しい
二人の命そのもの

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