ひとり

多分僕はもっと早く
ひとりになるべきだったんだ
いや多分とっくの昔から
ひとりぼっちであるのに
それを誤魔化し続けてしまったんだ
ツケが溜まっている

「ひとはひとりだ」
皆孤独だ
それが真実だと
何故みなみな認めたがらないのか
何を成そうと
成すまいと
孤独の前に僕達はみな
丸裸のけものだ

この孤独は紛れもなく
僕だけのものであるからして
君にも母にも天にも
取り上げられることはない
それを安心と僕は呼ぼう

ひとりになりたがる僕を見て
不安がる人が言う
人は助け合って生きるのだと
しかしそれにはおかしな前提がついて回る
「あなたが決して孤独を感じぬよう
私があなたに入り込むどうぞよろしく」
美味しそうに僕を食べる姿を
心底醜く感じたものだ

孤独を内包し生きる覚悟を決めた者と
僕は出会いたいのだ
手始めにもちろん僕は
自分自身との邂逅を果たさねばならない
死ぬまで逃げ切る気などなかったよ
そうはじめから

真実に触れた時流した涙を
醜いと笑われても僕は
誰にも明け渡さなかった
それこそが僕の誇り
それこそが僕の誉れ

ひとり僕は君の前に立つ
そうして知るのだ
君はとっくに知っていたのだと
縋ろうとしたのさ僕は
君さえ愛してくれたらと
でもとっくに愛されていた

ひとりに戻り僕は愛し方さえ
そう学び損ねたことに気付く
落胆も悲嘆も必要ないよ
ただ今ここにいる僕であること
いつでもそこから
始められることが僕の証

誰にも侵犯されぬ
不可蝕の聖域
それが孤独が果たすべき意味と役割
僕はいつでも清廉な原点へ戻れる
ただ空を仰ぎ風を感じるだけで
君の横がいいんだけどさ

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