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2019年2月の記事一覧

オルフェウス、君は

オルフェウス
君の声は僕の琴線に共鳴した
それは何を証明することもなくただ
君も僕も
そして人も獣も
命という孤独を抱えて生きていることを
僕に教えてくれた

冥府の住人達に
孤独はあったのか?
その残像を見ているのか
はたまたそれ自身になってしまったのか

寂しさが渦巻く
言葉の羅列を眺めながら
僕は音を探っていた
彼の音は不当に澄んでいた
まるで
種を抜き取られた後の果物のように
あっさりとし

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ロンド

人を傷つけた拳は
血を流すけど
人を傷つける言葉を
使った喉はどうなるのだろう
人を傷つける言葉を
打った指はどうなるのだろう
僕達は血塗れで生きている

少しずつではなく
掛け違えるように取り落とされ
狂ってしまったパーツを
どうやってあるべき場所に
戻せるというのだろうか

束の間の静寂と安寧は
破壊の予感に侵襲され
憎しみと愛は同じ質量で
人生にのしかかると身体で学んだ

全てが許されること

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重力

僕はずっと
意義や意味や
中身や手応えを
探し求めてきた

それはある時には感じられ
ある時には気配もなかった

無数にある正しさの基準に
合わせて生きようとしていたら
僕はいつか時間に酔って
上下も左右もわからなくなっていた

ただここにいる僕を
僕は見つけることが出来ずに
空虚な胸のうちに
何か詰め込もうと必死だった

人を傷つけたことも
自分が傷ついたことも
どうもよくわからず
誰かの涙のワ

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ゲーム

ゲーム

「隠れることは楽しいけれども、みつからないことは悲惨なゲームなのである」ーーーWinnicott, Communicating and Not Communicating.

見て見て、ねぇこっち見て
でも近寄らないで
ただ見つけて
そして微笑んで
「そこにいたのね」

私の名前呼んで
駆け寄ったら抱き締めて
また隠れたら
また私を探して
追い掛けない程度に

私が見つかりたい時に
私を見つけて

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反応

私はあの日
彼の本音から逃げ出した
私の前に
身体も心も精神も
全てで存在して
私だけを見てくれた彼の
真っ直ぐな瞳を見ることが出来なくて
逃げ出した

何故そうしてしまうのか
わからなくていつも怖かった
足りないものは何なの?
不要なものは何なの?
まるで見当もつかず
そしてあの頃はその問いかけを
口にさせてくれる人もいなかった

誰の名前も思い出せない夜の中
研ぎ澄まされた正気と狂気の真ん中で

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完璧なオムライス

完璧なオムライス

君とランチした
僕は本日のオムライス
君はデミグラスソースのオムライス

完璧なオムライスが運ばれてきた
形、味、色、盛り付け…
何もかも完成されていた
僕達は夢中でオムライスを食べながら
色んな話をした

君が生きている世界の話
君が関わっている人の話
君が歩いていく未来の話
僕は君の言葉を通して
会わなかった間の君の人生を見てた

完璧なのはオムライスだけじゃなかった
僕と君がいる
それだけで

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wait

wait

制止されるのと
待ってくれるのと
似てるけど
違う

あの人は僕から逃げるために
僕を制止して閉じ込めた
でもあなたは僕が辿り着くまで
丘の上で待っててくれる

そこは小鳥が唄い
空が広がり
星がキラリ落ちてくる
願いが叶う丘

あなたがおいでって待ってる
僕は子犬みたいに
あなたの所へ駆けてゆく
そしてあなたは
僕がそのうちに旅立つことを
もちろん知っている

離れても同じ道を歩くなら
いつだっ

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if

明日もし
世界が終わるか
僕が世界から消えてしまうとしたら
君は今僕に言ったことを
後悔したりしないのだろうか

そう思ってしまう時
大抵答えはノーだ
君はその想定をしていないか
僕のことはどうでもいいか
僕を殺そうとしたのだ

一期一会なんて言えばカッコイイけど
実際世界は明日終わるかも知れないし
明日も命がある保証なんて
誰にもできない

なのに君は
今僕になんて言った?
耳を疑うような
最悪

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輪廻

前だけ向いて
生きていくことが
時の流れに沿って正しいと
かつて思っていた

僕が向いている方が前なら
正しい前はどっちなの?
狂った磁石持って迷子になった
標識のない道の途中

あなたに出会って
世界が弾けるように広がった
そんな出会いを繰り返して
ずっと歩いてきた
星を辿るように

後ろ振り返れば
誰かの寂しさが落ちている
皆時の中で絆を失ってゆく
愛の守り方がわからなくて

あなたの声がする

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足枷を愛する君は
道連れを探してる
そこは輪廻の泥沼

独りで行くのよ
その扉の向こうは
君だけが通れる時の道

私を殺したら
気は済むのかしら?
私が死んでも
悲しみも苦しみも寂しさも
少しも減らないというのに

「人は計算が出来ない」と彼女は言った
どんな残酷なルールでも
愛してしまったら逃げられなくなる
解なしの方程式解き続けて
迷路で追いかけっこする迷子たち

悪さえ愛した
無邪気な心は大

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今夜だけ

サーカスナイト流しながら
思い出すあの夜のこと
僕が越えた沢山の夜のこと
どこにも辿り着かない
触れ合うこともなかった
孤独がふたつ
一人よりずっと悲しい夜だった

何故なんて
誰に問いかけてもわかりはしない
少しずつ一つずつ消えていく命を
どんな祈りで見送ればいいのか
僕は一人ではやっぱりわからない

死にたい僕を見つけた
あなたの心に宿った
僕の寂しさはもう消えただろうか
誰も誰かを背負ったり

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遺書

ワタナベ君は
直子の遺書を受け取ってしまった
そして彼女は死んだ

私は昨晩たぶん
あなたに遺書を託そうとした
私の代わりにこれを
ある人に渡して欲しいと

あなたはそれを
受け取らなかったけど
叩き落としもしなかったし
見ない振りもしなかった
ただそれを持った私の白い手に
そっと心で触れた

死にたいだけの私の
もう書くものが遺書以外なかった私の
冷たく凍った指先
この冬に勝てない私を
桜を見る

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猫と歩幅

猫と歩幅

あの日君と通りすがりの猫を見た
禅を感じる風景の中
一匹の猫が僕らの前を横切った
どこへ行ったのだろう
どこに住んでいるのだろう
僕も君も猫みたいだと思った
あれは完全な瞬間だった

ねぇどうして
狂おしいほど懐かしいのだろう
君の声に救われてゆくのだろう
生きていけると思ってしまうのだろう

このあたたかい気持ちはどこから来るのだろう
あなたの中から?
それとももっと遠くから?
それとも私の中か

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ふたり

ふたり

私にしか出来ないこと
あなたにしか出来ないこと
自分に気付くこと
自分の脚で立つこと

私があなたにしてあげられること
あなたにして欲しいこと
背中にそっと手を置くこと
ただ隣にいること

二人にしか出来ないこと
一人では出来ないこと
孤独を重ねること
一つにはなれないと確かめること

そばにいればいるほど
違う生き物なんだって思い知る
それは狂おしく悲しく寂しい
一つになることを夢見た心にとって

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