フランス3の番組「歴史の秘密Secrets d'Histoire」にはまる理由。
最近、やばいほど(と言いつつ嬉しい)はまっているFrance3(フランス・テレビジョン)の「歴史の秘密」on Youtube。
ドラマにも漫画にもほぼはまることなく20年くらい過ごしてきたけど(学生時代ははまっていたこともある)、ほんまにひっさびさに、ハマりにハマっているのが「歴史の秘密」シリーズ。
きっかけは確か、フランスの過去の大統領のドキュメンタリーを見て、食い入るように見始めたことだろうか。
経営者として、大統領や国の党首の生き様ほど参考になるものはない!
自分は舞台芸術プロデュースの一般社団法人の創業者かつ代表理事で、非営利団体代表のようですが、実際には会社経営者と同じです。
文化団体とはいえ、一般社会で通用する経営力をもってこそ、ピュアな芸術活動を安定的に運営できると考え、2014年法人設立から、苦労しつつも学び、一歩ずつ経営者として成長すべく、格闘しています。
経営責任者は、最後は神頼み、とよく言われますが。
具体的な運営、世俗的な努力は全て行ったうえで、最終、頼るものは「神託」だったり「スピリチュアル」だったり、万事尽くして天明を待つ、ということもしばしばある、経営者。
自分はそちらに頼る指向性はないのですが、時に強い灯が必要になることも。
ある日、たまたまYoutubeでフランスのもと大統領ジャック・シラクと同じくフランソワ・ミッテランの対談を見て、あっという間に引き込まれてしまった。
当時の現・大統領のミッテランと、現・首相のシラクが次の大統領選をめぐって一騎討ち。
先に口を開くのはシラク。
「ミッテラン大統領、
今宵、あなたは大統領ではなく、私は首相ではない。
同等な立場の大統領選候補者として、
ミッテラン大統領とはお呼びせず、ムッシュー・ミッテランと呼ばせていただきます。」
それに対し、眉ひとつ動かさず、間髪入れず、ミッテランは言い放つ。
「あなたは完全に正しいです、シラク首相。」
この選挙戦は、ミッテランが勝利する。
「嘘」を隠し通す、ミッテラン大統領の豪鬼。
そんなミッテラン大統領は、最後の任期のほとんどを前立腺癌の治療に費やしていたにもかかわらず、本人も医師もそれを隠す「嘘」を突き通していたというのだ。
最大の治療法は権力に就いて、使命感をもちアドレナリンを放出させることー。
それもわからなくはないし、
なにより、常人なら考えられない激務を、がん治療を行いながら遂行し続けた(晩年は疲れやすく、しばしば休息のため横になっていたとはいえ)。
個人的には、1990年代は自分がフランス語を習い始めて間もない頃で、
ミッテランが愛人のことを言及されたとき「Et alors?(それが何か?)」と言い放って世界中の話題になっていた、そんな時代。
その頃、彼はすでに白い老人の顔をしていたから、尚更印象に残った。
癌に冒されるまえのミッテランの、エネルギーに満ちた面構え。
ドキュメンタリーを見て、初めて、病に冒される前のミッテランの、別人のような強い面構えを目の当たりにした。
頰には赤みが差し、つやも良く、目はらんらんと世界を見透かす輝きに満ちている。
病に苛まれてからも、独特の薄い唇から、いつも皮肉とウィットに満ちた、政治的発言は消えることはなく、精神の強靭さは彼の生命の灯火が消えるまで、いちども去ることはなかったがー。
死が迫っているとわかって、女性との逢瀬を重ねる。
亡くなる直前の数年間、さらに女性たちとの逢瀬を重ねたというミッテラン。彼にとって「愛」はかくも、生きるエネルギーそのものであり、
そのエネルギーをもって国を治め、剛力を発揮していたならば、
選ばれし人を、誰が責めることができるだろう?
驚くのは(⇦フランスと付き合いが長いとはいえ、生粋の日本人の自分が)、この
「歴史の秘密」シリーズで古代からの国の長のストーリーをみていくと、まあ、なんと精悍(フランス語のvirilの訳が「精悍」と出ていましたが、言い換えれば男性的精力に満ちていること)な方々が多いことか!!!
ナポレオンしかり…
そして「秘密の花園」を持っている。
印象的なのは、ミッテランにしてもシラクにしても、「秘密の花園」を持っていた、ということだ。
ミッテランは、誰にも知られず、ひとり訪れる教会があったという。癌に冒されてからはなおさら、
その小さな教会に籠り、何かの声を聴いていた、というような。
それは「死」と対話し、共存しているようでもあった、とも。
ジャック・シラクについては、別な記事でぜひ書きたいが、
彼は自身「秘密の花園」と呼んでいた内面があった。
シラクー幼い頃から、パリの「ギメ美術館」に通い続けていた少年。
日本やカンボジア、インドなど、アジアの仏像や銅像などが静謐に立ち並ぶ、美しい美術館。
決して、観光客の大半が通う場所ではない。
先代のポンピドゥー大統領に「私のブルドーザー」と言わしめた、恐ろしいほどの行動力と実行力。
学生時代の彼は「イケメンなんてものじゃなかった。超・超・超・超・超イケ面!くらい本当に格好よかった」という。女子たちが気絶しそうになるほど格好よかった理由は、身長190cm近いすらりとした長身、誰よりも知的で頭が切れて、
どんな時でも遠回りをせず、群衆の中を突っ切って歩くひとでもあり、
ソフィスティケートされていて、誰よりも気遣いに溢れたひとだった、というー。
そんな彼は「メジャー」の王道、
常にリーダーで、人の渦の中心。
しかし、ドキュメンタリーでは驚くような姿を映し出す。
各国のトップが集まる国際会談。その中でひとり、背中を丸めて写真に夢中になっている男。
シラクが、世界のもっとも重要な要人会議で、たったひとり、自身のテーブルの上に背中を丸めて、何かに覆いかぶさるように見入っているー。
それは、アフリカの仮面の写真だったりー
彼が生涯最後の大仕事と決めた「ケ・ブランリ美術館」に展示するような、世界の民族美術の画像だった。
みなが政治について話している、その間、そんなことはどうでも良いのだ、と言わんばかりにアフリカの彫刻写真に硬直している、シラク。
これが、彼の「秘密の花園」。
最も重要な決断を下さねばならない立場だからこそ、「自分ひとりの花園」が必要なんだ。
この一連の番組サーフで、自分は胸を撫で下ろした。
いちばん重い立場のひとたちは、モンスターのような超人であるだけではなかった。
ある意味「普通」の、少年のような感覚を持ちながら、世界の大役を果たしてきた。
いや、まさにその「普通」の側面を持ち続けられることこそが、大事なのではないのだろうか?
そんなふうに思ったのである。
(たぶん、同じシリーズに続く)
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