バー・タクラマカンの憂鬱
砂漠のオアシスを求めているときのように、這いつくばりながらお酒を探している。ダメだ、これは病気だ。だって滴る汗が酒の匂いがする。
そんなわけで、酒を飲めない人と過ごす時間が苦痛だ。
だからパパ活をしているところがある。お酒を呑んで楽しいじゃん。嘘だよ。お金だよ……。
でもときたま、嫌なやつがいる。胸の谷間を覗かれても、太ももを触られてもいい。
酒を飲まない親父もとい、パパほどむかつく人はいない。
今日は「一杯で吐くんだよ、オレ」というおじさんがやってきた。
は? と思いながら黙りこいて和牛のすき焼きを頬張り、レモンサワーを何杯も空にした。そしてすぐに帰った。
だから、アタシのオアシスは近くのバーだ。
バー・タクラマカンはアタシの肝臓と心地よい時間を満たしてくれる。
そのマスターの下長さんが無口で天然なのも、またいい。うざいバーテンダーと都会のカラスは嫌いだ。
下長さんは、2度離婚しているらしい。何でも男だけど男が好きでそれがバレたらしい。もちろん奥さんのことも好きだけど不倫をしてしまったらしい。横に座るおじさんたちの情報を繋ぎ合わせて、その話に行き着いた。
なんだか、下長さんが愛おしくみえてきた。
だってアタシも、いや、アタシは恋愛に一ミリも感情が揺さぶれないからだ。
レッドアイが沁みる。何でこうなるんだろう。
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