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DINKs夫はテレビが苦手

実家に住んでいたとき、食事の時間にテレビがついているのがとても苦手だった。だいたいがドラマやバラエティ番組で、どうでもいいことで爆笑が起こったり、明らかにヤラセだろうと思うようなことで、一喜一憂するあの感じ。ドラマに関しても、険悪な場面、複雑な人間関係など、現実の延長線を見ているかのようで、そういうものを見ながら食事をするのが嫌だった。

1.今やっていることへの無関心

嫌だった点がもう一つあり、肝心の食事にちっとも関心が向かないこと。当時作っていたのは私ではなく母だったが、母は自分が作った料理よりもテレビに関心が向く食卓が嫌じゃなかったのだろうか。疑問に思っていた。同じようにテレビを見ていたわけだから、それで良いと思っていたのかもしれないが、それは絶景の前でスマホのSNSの反応だけに集中している光景と何ら変わらない。

年末に祖母が亡くなり、葬儀の際、葬儀屋に一晩泊まる必要があったので、私と叔母が宿泊した。寝る前に酒を飲みながら結構雑談をしていたのだが、その時も叔母はバラエティを終始見ていて、私には何が面白くて、情報として何の意味があるのかわからなかったが、久々に「テレビ中心の部屋」に身を置いた不思議な感覚を覚えた。

2.テレビと離れて楽になったかどうか

実家を出て、ほとんどテレビを見ない生活をしている。意識していなかったが、これが結構ストレス解消になっていると思う。見たくもない映像を見ながら何かをしなければならない時間、映像を見ているのならみんな別々に食事したほうが良いだろうと思っていた当時のことを思い出す。

映像を作ることをライフワークの一部にしている私だが、映像を見るのはあまり好きではない。というか、ただじっと何かを見ているのが苦手なのだ。人の話を聞いたり本を読んだりするのは好きなのだが、どうも「観るだけ」という行為が苦手だ。

映画をはじめ、スポーツ鑑賞やライブに足が向かないのも同じ理由で、何かを他人がやっているのを見るという行為がそもそも性に合わない。デートで映画を見るという行為がよくわからない。別々に鑑賞して後から感想を共有すればよいのではないかと思ってしまう。

同期する必要があることとないことを明確に区別するクセがついている。だから電話のようなツールがとても苦手だ。あえてリアルタイム、対面を選択する必要性を感じない。音楽を聴くなど、自身で消化しなければならない事がある場合は、足が向くが、それ以外の要素しかないもの、または代替手段があるもの(読書など)については、映像を見るという行為がそもそも得意ではないのだ。

1985年にリリースされたサザンオールスターズの「ComputerChildren」という作品がある。この曲に揶揄されるバーチャル世界に没頭して現実世界やその価値に無関心になっていく社会は、まさに現代そのものであり、40年が経過して顕在化していることが単純に面白い。

3.結論が出ないことは無価値なのか

ユーチューブ全盛期、SNS全盛期、みんな他人が何を言っているか、何を考えているかが気になって仕方がないらしい。本来、そんなものはわからなかったはずなのに、わかる手段、しる手段を得てしまい、それに没頭する日々を多くの人が寵愛し、それに依存している。

それは本当に「わかる」「しる」必要があったものなのだろうか。わからないからこそ、知らないからこそ、肯定も否定もせずにいられたのではないだろうか。今は結論を出すことや好き嫌いをはっきりさせることが正義になりすぎていて、中立でいることがとても難しくなっているのではないだろうか。

結論を出すことへの努力ばかりが先行し、結論を出す必要はないけれど、じっくり考えるべきことの存在がどんどん薄れてしまっている。明確じゃないことは意味がないことなのだろうか。そうではないだろう。曖昧なものや難しいことを、わからない、しらない状態で考えることも、とても面白いはずであるし、ゴールがなかなか見えないからこそ、終わらずに続いていく。

4.結局は世代間ギャップなのか

テレビの話に戻すと、時代の影響もあるのだろうとも思う。両親や叔母は、高度成長期に学生時代を過ごし、労働や消費のモデルが画一的な価値観によって醸成されている。その常識や普通を作ったのがテレビであることは間違いなく、その世代から支持されていることを確信してコンテンツを発信しているテレビが、彼らにとって面白くないわけがない。

みんなが見ているものを観るという行為は、ネットで創作活動をすることよりも価値があるとみなされる。生産は労働でするもの、それ以外は消費でよいという主義主張が、言葉の片鱗に滲んでいる。

こういう話を延々とするのが好きな私が、そもそもテレビやバラエティを好むわけがないというのを、記事からも理解してしまった…

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