曽祖父の油絵
「そういえば、死んだひいじいさんは油絵やってたんや。うちのじいさんの親父さん」
私は中学1年生の長女に話しかけました。彼女は美術部に所属していて、今は油絵に取り組んでいるそうです。それで、彼女の曽祖父が油絵を趣味にしていたことを思い出したのです。
「そうなの?」
「うん。もう20年以上前に亡くなったけど、奈良の家に絵が飾られてるはずやで」
「見てみたい!」
予想通りの反応でした。ただ、実家(奈良県大和郡山市)に帰省した際に作品を見た記憶はあるものの、それが今も飾られているかというと、絶対の自信はありませんでした。
「よっしゃ。じゃあ、ちょっとばあちゃんに聞いてみるわ」
翌日、母にLINEで問い合わせたところ、実家に2点あり、そのほか祖父が生前暮らしていた和歌山県橋本市の家にいくつか残されているはずとのことでした。そして、実家にある2点は撮影して送ってくれました。
作品の写真を見て、私はとても嬉しくなりました。祖父には成人した孫が5人いますが、絵画を趣味とする者は皆無です。ところが、他界してから10年後に生まれた曾孫が興味を持ってくれたのです。帰省した際に作品を見せてやれば、故人もたいへん喜んでくれるのではないでしょうか。
現世で顔を合わせることはありませんでしたが、長女にも祖父の血が流れています。その生きた証というべき作品と向き合うことで、きっと何か感じるものがあるでしょう。彼女がずっと絵画に興味を持ち続けるかどうかはわかりませんが、どんな人生になるにしても、有意義な経験になるはずです。
そして、現世では98歳の祖母が頑張っています。中学生になった曾孫が油絵をやっていると言えば、泣いて喜ぶのは間違いありません。家で眠っている作品を持って帰ってくれと言い出すような気がします。
今すぐは難しいかもしれませんが、私としてもいずれは長女が作品を引き取ってくれるのが望ましいと思っています。絵を愛する者が管理していつまでも大切にすることが、何よりの供養になるはずだからです。
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