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読書記録 2024年1~3月に読んだ本

 こんにちは、せ→る→です。

 本日は2024年1~3月に読んだ本の感想を書いていきます。あらすじ程度のネタバレがありますが、物語の重要要素やオチは書いていません。
 あくまで読書記録であり私の感想なので、あたたかい目で読んでください(笑)誤字もあるかもしれません。


「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ

 映画化もされた2019年の本屋大賞作品です。

 二人の母、三人の父を持つ主人公・優子(ゆうこ)。苗字や住む場所、親が何度も変わる優子のことを周りの人は、可哀想だねとか大変だったねとか言ってくるが、優子自身はどの親のことも大好きでどの親との生活も大切に思っている。
 家族の物語です。

 だいぶ話題になっていた作品でしたが、私には刺さらなかったです。2024年一作目の感想がこれでは雑な感じがしますけど(笑)
 登場人物がみんなちょっと変に感じちゃったんですよね。セリフも違和感あるし、優子のサバサバ具合が好きになれなかったのもあります。

 Amazonの低評価レビューも、私が気になったところをあげている人が何人かいて、そうそうと思わず頷いてしまいました…スラスラ読めるけど、個人的にはうーんという感じです。

「愛じゃないならこれは何」斜線堂有紀

 恋は地獄へ続いている…めっちゃ面白かったです!

 5編収録されていて、一番好きなお話は「健康で文化的な最低限度の恋愛」。美空木絆菜(みそらぎきずな)の会社に中途採用で入社してきた津籠実郷(つごもりみさと)。絆菜は実郷に一目ぼれをしてしまう。

 絆菜は元々インドア派で映画鑑賞や読書が好きだったのだが、実郷と仲良くなるために、彼が好きなサッカーについて猛勉強するようになります。
 また、登山が好きな彼に合わせて登山グッズを買ったり、トレーニングをしたり…まさに恋は人を変えるんだなと感じた作品でした。

 好きな人の好きなものを知りたいと思う気持ちはわかりますが、絆菜はいきすぎですね。もう完全に実郷が理想とする絆菜になりきっている…絶対あとでしんどくなるやつですよ(苦笑)
 でもリアルにこういう人たくさんいるんだろうなぁとも思ったり。

 他のお話もどれも面白くて、待ってる未来が地獄すぎて、にやにやしてしまいました。

「ほたるいしマジカルランド」寺地はるな

 ほたるいしマジカルランドという遊園地で働く人たちの短編集。優しくて温かくなるお話が詰まっています。

 自分ではなんの取り柄もないと思っていても、周りの人はその人の働きぶりを尊敬していたり、完璧だと思っていた人が意外と人間らしかったり、苦手だなと思っていた人が話してみると案外そうでもないと思ったり。

 自分にとっては価値のないものでも落とした人にとっては大切なものかもしれない。

151ページ

なんのためにもならないものが、ごくあたりまえに存在する。

282ページ

 寺地さんの作品には好きな言葉が多すぎる。文体が柔らかいのでスッと心に入っていくんですよね。好きです。

 この物語の中で一番素敵だなと思ったキャラクターが、社長の国村市子(くにむらいちこ)。スタッフのことを本当に大切にしていて、一人一人のことをしっかり見ている。こういう上司のもとで働きたいなと感じました。

「アパートたまゆら」砂村かいり

 アパートのお隣さん同士の恋愛を描いた王道恋愛小説。王道恋愛小説って何気に初めて読んだかもしれません。
 すっごくきゅんきゅんして面白かったです。

 主人公は軽度の潔癖症である木南紗子(きなみさこ)。親友の美冬(みふゆ)と食事をして終電でアパートまで帰ると、鍵を忘れてしまったことに気づき、偶然出くわした隣人の琴引泰而(ことびきたいじ)に「よかったら、うち泊めますけど」と言われる。

 恋する紗子がとても可愛いんです。好き!と足をバタバタさせているシーンとかめちゃ可愛いんですよ。
 特に好きなのが、仕事で面倒臭いクレーマーに当たってしまったとき、紗子は琴引さんとのデートが決まっていたので、クレーマーにもへこたれないのです。好き(笑)
 恋しているときの無敵感、わかる気がしますね。

 いやー、良いですね、恋。きゅんきゅん。読んでいるとにやにやしてしまいます。もう、幸せになれよ!!!
 リアルでこういうきゅんとする恋バナどこかにないかな。誰か話のネタ持ってないかな。少女漫画や小説でもじゅうぶんトキメキときゅんは摂取できるのですが、リアルだからこそのトキメキも摂取したい。

 とっても面白かったです!

「弁当男子の白石くん」月森乙

 第6回文芸社文庫NEO小説大賞受賞作品。

 一軍女子の南雲古都(なぐもこと)と冴えない男子の白石祐介(しらいしゆうすけ)二人の青春小説。
 いつも購買でお昼ご飯を買っている古都が、たまたま階段の踊り場で一人お弁当を食べている白石くんを見かけ、その美味しそうなお弁当をきっかけに、白石くんが古都のお弁当を作ってくれるようになる、というお話。

 あらすじを見た感じでは面白そう!と思ったのですが、そこまで好みではなかったです。古都の一人称で書かれているのですが、あまり彼女を好きになれなかったので…(苦笑)

 あと、ところどころに古さを感じてしまったんですよね。体育館裏に呼び出し(呼び出しというか連れ出し?)したり、黒板に相合傘書いたり、眼鏡をとったらイケメンで、学年問わず周りがきゃっきゃっなったり。
 少女漫画チックだけどちょっと今っぽくないなと感じたのが、ハマれなかった原因だと思います。

「緑の窓口」下村敦史

 区役所で働く天野優樹(あまのゆうき)は、新設された環境対策課『緑の窓口』に先輩の岩浪大地(いわなみだいち)とともに異動になる。
 一人目の相談者の元で出会った樹木医の柊紅葉(ひいらぎくれは)の助けを借りながら、地域の樹や花に関する相談を解決していくお話。

 樹木医という職業があるのを初めて知りました。樹木の専門家。

 間違った知識や思い込みで樹木を枯らしたり、樹木が病気になったり、倒木で人や物に危険があるかもしれません。自分では樹木に良いことをしていると思っていても、実際は樹木に悪い影響を与えている可能性もあります。
 正しい知識を学ぶことがいかに大切かがわかりました。

 専門的な話も出てくるので全部理解しているわけではありませんが、『スギはブナより二倍も二酸化炭素を吸収している』そうです。ふむふむ。

 登場人物たちがあまり好きになれなかったので、正直なんとも言えないのですが、連作短編なので読みやすかったのはたしかです。

「可哀想な蠅」武田綾乃

 大好きな武田さんの作品!面白かった〜!

 4つの短編が収録されています。連作短編ではなく、一つひとつ独立した短編です。どのお話も読んでいると心がざわざわします(笑)
 こっちの気持ちも理解できるし、こっちの気持ちもわからんでもない…ああ、こういうこと言う人いるいる…とか。登場人物たちの会話やSNSがすごくリアルです。

 お気に入りのお話は四話目の「呪縛」。タイトルからして不穏すぎる(笑)
 主人公は会社員の麻希(まき)。恋人・岡井(おかい)との話と、友達・詩乃(しの)との話が展開されていくのですが、詩乃との関係性の変化がドロドロでうわぁ…となります。泥沼なんですよ。

可哀想な彼女を、幸せにしてやりたかった。

191ページ

 可哀想と思ってる時点で相手のことを下に見ている感じがしますよね。私がいなきゃ一人になっちゃうもんね、私だけは味方だよ、みたいな。優越感に浸っている感じがリアルでゾクゾクきました。

「溺れながら、蹴りつけろ」水瀬さら

 すごく好みの作品でした。

 主人公は、本を読むことも書くことも好きな高月麗(たかつきうらら)。麗は、読書好きの澤口比呂(さわぐちひろ)と話すようになるのだが、クラスの中心的人物である世良瑞穂(せらみずほ)は澤口を嫌っている。
 本を読むのはキモい、オタクだ、と。

 設定がありがちなものなので展開はある程度読めます…(笑)でもこういうド直球な青春もの好きです。

 麗は澤口の勧めで、書いている小説をネットにあげるようになるのですが、投稿ボタンを押すときのドキドキ感に共感しました。

あたしの作品を読んでくれるひとが、ひとりでもいる。
そのひとが小説の続きを、待っていてくれる。

65ページ

 私も最近人生初の長編小説を完成させてwebに載せたのですが、一人でも読んでくれる方がいるだけで嬉しかったです。

 完全ハッピーエンドの爽やかな読後感とはちょっぴり言い難いですが、学校という水槽の中で不格好でも泳ぎ続けようとする少女のお話、とても面白かったです。

「千香と王子は秘密がある」羽田惑星

 LINEマンガで配信されていた作品で、毎週1話ずつ読んでいました。読書感想はいつも小説ばかりなので、たまには漫画の感想も書いてみようと思います。

 主人公は大学生の千香。高校の時の先輩に「付き合え」と迫られて困っていたところを、イケメンでお金持ちな雨宮先輩に助けられる。それがきっかけとなり、お互い好きにならないことを条件に恋人のふりをする、というお話。
 偽の恋人や偽装夫婦は、よくある設定ですね(笑)

 今作は二月に完結しました。とても面白かったです。
 千香がめちゃくちゃ良い子なのが一番の魅力かなと思います。明るくて元気、優しい、ちょっと天然、嫌なところが見つからないくらいに良い子です(笑)
 雨宮先輩も最初は俺様キャラなのかなぁと想像していたけどそうでもなく、読んでいて全くイラッとこないんですよね。彼も良い人なんです。

 友だちみたいなノリで恋人のふりをしている二人も好きですが、両思いになってからの二人も可愛くてとても癒されます。

「デュラララ!!」成田良悟

 電撃文庫、字が小さいっ!!!(笑)

 10年ぶりに再読しました。アニメも大好きです。再読していたらアニメも見たくなって最終回を見返しました。もうOPから超絶テンション上がります。大好きな作品。

 池袋を舞台に繰り広げられる群像劇。……これあらすじ書くの難しいですね(苦笑)

 非日常に憧れる少年、竜ヶ峰帝人(りゅうがみねみかど)は、進学とともに池袋にやってきた。池袋には関わらない方が良いと言われている人物が何人かいる。平和島静雄(へいわじましずお)、折原臨也(おりはらいざや)、そして、黒バイクに乗った得体の知れない化け物…セルティ。
 キャラクターが多く、そしてとにかく濃い。アニメからハマっているから人物が覚えられたものの、原作から入っていたら絶対覚えられないな…と思いました。

 ドタバタドタバタ、終始ドタバタしています(笑)
 特に好きなシーンは、帝人と臨也、セルティが邂逅するところ。もうなんかね、大興奮でにやにやしちゃうのです。
 ああ…楽しいっすね…

 疾走感と非日常、ずっとワクワクです。

「笹森くんのスカート」神戸遥真

 んー!!面白かった!!

 舞台はジェンダーフリー制度を導入し、スラックスもスカートも自由に履いていい高校。五人の高校生たちの視点で学校生活、悩み、文化祭の様子が描かれる。

 今まで女子がスラックスを履くことはあったが、男子でスカートを履く人はいなかった高校で、笹森(ささもり)くんが急にスカートを履いてくるところから物語が始まる。
 多汗症の子、女子グループが苦手な子、彼氏が欲しいぽっちゃり体型の子、美人なことを隠す子。

 どのお話もとても好きです。キャラクターとして一番好きなのは女子グループが苦手な西原(さいはら)さん。特別誰かと仲が良いわけではなく、誰に対しても同じ態度で堂々と接している姿が好きでした。

 人は話し合えば理解できる、それは確かにそうかもしれない。
 けど、話し合ってまで理解したいと、コンマ一ミリも思えなくなってしまったのならしょうがない。
 自分を傷つけて消耗してまで、この手の人たちと戦う必要はない。

72ページ

 引用部分の二文目、めちゃくちゃお気に入りです。話し合ってまで理解したいと思わない相手なら距離を取っていいよね、って。

 神戸さんの作品は「きみとホームで待ち合わせ」を読んだことがありました。(作者情報見るまで気づきませんでした…)他にも気になる作品があったのでまた読みたいなと思います!

「夜が暗いとはかぎらない」寺地はるな

 安心安定の寺地さんの作品はやっぱり大好き。

 あかつきマーケットのマスコットキャラクターである”あかつきん”(着ぐるみ)が突然失踪し、急に町に出没するようになる。”あかつきん”は、時にはお年寄りを助け、時には子どもと戯れ、時には夫婦喧嘩の仲裁をしているそうだ――

 夫婦、親子、祖母と孫、同僚、友達、恋人…などの関係性の中で生まれる悩み、不安、不満…が淡々と描かれます。
 寺地さんの作品を読むたびに、自分が今まで気にしたこともなかったような言動に疑問を抱いている人がいる、ということに気づかされます。登場人物たちの気持ちに共感するところがたくさんあるのと同時に、自分の言葉で誰かを不安にさせている可能性もあるのだと思いました。

 ほっこり心温まる素敵な物語でした。

「マーブル」珠川こおり

 茂果(もか)と穂垂(ほたる)、姉弟のお話。

 ある日茂果は、仲良しな弟が腐男子だと知る。同性が好きなのか?とやきもきする茂果の姿が描かれます。
 茂果の過干渉っぷり、ブラコンっぷりがすごいです。弟のことを考えすぎて、恋人である朗(ろう)との関係もギクシャクしてしまう。

 ストーリーは割と好きですが、茂果の思い込みが激しすぎてリアルにいたら友だちにはなれないな…と思いました(苦笑)

 珠川さん、2002年生まれと知ってびっくりしています。デビュー作の「檸檬先生」は小説現代長編新人賞を最年少で受賞。ひぇー!
 YouTubeで見たとあるインタビューで、珠川さんが小説をよりも詩を読むことが多かったと話していたのですが、今回「マーブル」を読んでみて、なるほど…!と思いました。たしかにテンポ感とかに面影?がありましたね。

「ゴールデンタイムの消費期限」斜線堂有紀

 最近ハマっている斜線堂さんの作品。斜線堂さんの文章もすごく自分の読むテンポ?に合っていて好きです。

 小説家の綴喜文彰(つづきふみあき)、ヴァイオリニストの秋笠奏子(あきがさかなこ)、料理人の真取智之(まとりともゆき)、画家の秒島宗哉(びょうしまそうや)、映画監督の凪寺映深(なぎでらえみ)、棋士の御堂将道(みどうまさみち)、五人の元天才が、とあるプロジェクトに参加する。
 閉鎖的な施設に集められた五人は、レミントンと呼ばれるAIとのセッションを通じて、才能の再開花を目指していくお話。

 綴喜はレミントンから小説のプロットをもらうのですが、それがもうとんでもなく詳細なプロットなのです。地の文は何行目まで、この行はセリフ…と。
 私は趣味で小説を書いたりしますが、こんな詳細なプロットをもらっても書ける気がしません(笑)

 小説をAIが書くというのも、話題になることが増えてきましたよね。ううーん。どこを人間が書いたのか判断するのも難しいし、公募の審査にも色々影響がありそうです。

 好きだったキャラクターは凪寺。映画を撮るのが大好きで、絶対にアカデミー賞を取ると、最初から最後まで一貫しているところがとても好きです。言いたいことをズケズケ言うキャラですが、不思議とイライラはしませんでした。

「父親を名乗るおっさん2人と私が暮らした3ヶ月について」瀬那和章

 ラノベって感じの長文タイトル。苦手ですねぇ(笑)
 苦手なのになんで読んだんだって話ですけど、表紙の女の子が可愛かったからです。

 主人公の新田由奈(にったゆな)は母親と二人で暮らしていたが、入院していた母親があるとき亡くなってしまう。そして迎えた葬式の日、由奈の前に父親を名乗る二人のおっさんが現れる。
 ヤンキーに見える竜二(りゅうじ)と堅物そうな秋生(あきお)。自分が父親だと言い張る二人と、由奈は同居することになってしまう、というストーリーです。

 可もなく、不可もなく、私には刺さらなかったですね…由奈は、竜二や秋生を通して、苦手だった母親の色々な一面を知っていくのですが、母親がどうしても好きになれないのです(笑)

 こういった歪な家族とのハートウォーミングなお話は、大衆ウケ良いんだろうなぁと思いました…

「星空の16進数」逸木裕

 空気を読むことやコミュニケーションをとることが苦手な17歳の菊池藍葉(きくちあいは)。高校を辞めてウェブデザイナーとして働く彼女のもとに、探偵の森田みどり(もりたみどり)がやって来て、「ある人からあなたに100万円を渡して欲しい」と依頼があったと言われる。
 送り主は誰なのか。藍葉の幼いころの誘拐事件、その隠された謎を追っていく、ミステリ小説です。

 人との接し方が不器用な藍葉が、会社で新しい仕事に挑戦したり、みどりからアドバイスをもらうことで成長していく姿が好きでした。
 また、みどりの異様なまでの人への執着(?)の仕方が危なっかしいのに、目が離せません。人の裏の顔を見ることができたときのあのみどりの高揚感が、読んでいてクセになります。

 私が今まで読んできた小説の探偵たちは、トリック重視で動機はどうでも良いというタイプが多い印象だったので、みどりのように、なんで?どうして?を追い求めるタイプは新鮮です。

 逸木さんの「五つの季節に探偵は」ではみどりが探偵になる様子が描かれているので、あわせて読むとより楽しいと思います。逸木さんの作品だと、「電気じかけのクジラは歌う」を前に読んだことがあります。
 どの作品も、どんでん返しがあったり大きなトラブルがあったり劇的な展開があったりするわけではないのに、不思議と読み進めてしまいます。面白かったです。

「お探し物は図書室まで」青山美智子

 2021年本屋大賞第二位の作品。

 悩みを持った五人の登場人物たちが、それぞれとあるきっかけでコミュニティハウスに行き、そこにある図書室で司書さんから本を教えてもらい、一歩踏み出すお話。
 仕事にやりがいを見出せない販売員、夢を持ちながらもなにも行動していない会社員、出産後に大好きな雑誌編集部から異動させられた主婦、イラストレーターの夢を挫折したニート、定年退職した元会社員。

 青山さんの作品は絶対好みだろうなぁと謎の自信を持って読み始めたら、やはりドストライクでした。文章も読みやすくてほっこりできる物語、すごく好きです。

「食うために仕事してるのに、仕事してるせいで食えないなんて、そんなのおかしいと思ったんだ」

43ページ

 このセリフがすごく印象に残りました。ほんとその通りだなって。
 お金がないと生活できないけど、お金のために働いて体調崩したら、薬代や病院費がかかるかもしれないし。

 作中に出てくる司書さんは、どの利用者にも、利用者自身が求めている資料とは全く違う資料を一冊紹介しています。利用者も、なんでこの本?と不思議に思いつつも、読んでみたら意外なところで行動するときのヒントになっていたりするんです。
 すごく好みの本で読めて嬉しかったです。面白かった。

「教育」遠野遥

 う、ううーん? よくわからなかった!(笑)

 デビュー作で文藝賞、二作目で芥川賞を受賞した遠野さんの作品。純文学の定義がイマイチわからないのですが、たぶん純文学だと思います、たぶんね。

 主人公・佐藤が通っているのは、「成績を上げるために一日三回以上オーガズムに達する」ことを推奨している学校です。ですがね、この成績、数学とか英語とか、そういう試験じゃないんですよ。
 この学校では、四枚のカードから指示されたカードを当てるという超能力的な試験をおこなっています。なんじゃいそれは!(笑)

 成績によってクラスが分かれており、上下関係が体育会系の部活の行き過ぎた感じなのです。上級生には腹から声出して挨拶する、みたいな。上級生の指示には必ず従う、みたいな。

 淡々とした文章なのでスルスル読めるのですが、私には読解できませんでした…

「ニセモノ夫婦の紅茶店~あなたを迎える幸せの一杯~」神戸遥真

 この記事の11作目に紹介した「笹森くんのスカート」を読んでから、神戸さんの作品を色々検索しまして…どれも面白そう、ということで手に取った一冊。

 行木あやめ(なめきあやめ)は彼氏の敦久(あつひさ)と同棲していて、美容師である彼のアシスタントとして働いていた。けれどもある日、彼の浮気現場を発見してしまい、「文句があるなら出ていけ」と言われ、あてもなく電車に乗る。

 浮気しているのにこの開き直り様、やばい彼氏ですね。

 あやめは、電車でたどり着いた館山で声をかけてくれた佐山秀二(さやましゅうじ)と、偽物夫婦を演じることになる。

 偽物の恋人や夫婦ってやっぱり需要あるんだなぁと読む度にしみじみ思います(笑)好きですけどね!
 明るくて元気だけどちょっとおせっかいなあやめと、真面目でクールだけどすぐに物を壊す秀二。この一作では二人が恋仲になることはないのですが、二人の掛け合いが楽しかったです。

 紅茶の話も登場しますが、専門的な話がずっと続くわけではないので、そういう部分も読みやすかったです。専門的な話を小説の中でされると飽きちゃうので(笑)
 さらっと読めて、面白い、楽しい一冊でした。

「ヨルノヒカリ」畑野智美

 超絶好みでした、はい。穏やかで優しくて、心があたたかくなるようなお話。こういうのを探してたんだよ〜!

 夜野光(よるのひかり)は、職場の閉店とアパートの取り壊し時期が重なってしまい、行き場を失っていた。そんなとき、住み込み従業員を募集している貼り紙を見つけ、手芸用品店で働くことになる。
 住み込みということで、雇い主である糸谷木綿子(いとやゆうこ)との同居生活も始まる。

「恋人でもない年頃の男女がふたりで住むのは、おかしいっていう話だよ」

55ページ

 多様性ということが言われるようになって、何年も経つけれど、誰もが理解できているわけではない。

231ページ

 光と木綿子。不器用な大人が、二人だけの特別な関係を築いていくお話。

 ああ…めっちゃ好きですね。あらすじ書くだけでも好きだなぁと思います。
 私、こういう特別な関係性を描いた作品大好きなんです。恋人とか友だちとか家族とか、そういった言葉はどこかしっくりこないけど、お互いを大切に想っていて支え合っている関係性。好きすぎるんです。

 瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」も似た感じの関係性を描いていて、大好きな作品です。

 読了後、ずっと余韻に浸っていたくなる素敵な物語でした。

「みつばの郵便屋さん」小野寺史宜

 主人公は、郵便配達員の秋宏(あきひろ)。配達をしながら出会う人々とのお話です。
 ポプラ文庫の作品はほっこりするものが多くて好きです。こちらの作品ものんびり楽しめる作品でした。

 配達中に風で飛ばされる洗濯物を見つけたり、誤配があってクレームがきたり、脅迫まがいのハガキがあったり…
 表紙もほんわかしていて可愛いですね。

「答えは市役所3階に」辻堂ゆめ

 コロナの流行を受け、市役所に「2020こころの相談室」を開設した。カウンセラーの晴川(はるかわ)と正木(まさき)に、心の不調や悩みなどを無料で相談できる。

 学生や主婦、ホームレスなど5人の登場人物による連作短編。登場人物たちに繋がりのある連作短編がとても好きです。「ここで繋がってるんだ!」と気づく瞬間がやはり楽しいから。
 コロナ禍における就職難、病院での面会禁止、お店の閉店…同じ悩みを持った人がたくさんいるんじゃないでしょうか。

 読むと気持ちが軽くなるような、あたたかいお話でした。面白かった〜!

「ノラガミ」あだちとか

 ノラガミは元々アニメが好きでした。アニメは2期で終わってしまい、続きが気になって気になって仕方なく、原作を集めるように。
 途中、長い休載期間もありましたが、27巻で完結しました。

 お話としては、ジャージ姿の自称神・夜トが主人公のバトルもの。神様、死霊、人間が絡むファンタジー作品です。私は夜トの生みの親である父様(ととさま)が大好きです。悪役なんですけど。
 最終的には、夜トと父様の戦いが描かれるのですが…まあだいたい予想はつきますね(笑)

 私が初めて書いた長編小説は、人間を主人公に、神様や幽霊が登場する物語なのですが、「ノラガミ」の影響がものすごく大きいです。

 完結まで見届けることができて良かったです。

「地雷グリコ」青崎有吾

 青崎さんの作品はやはり面白い!

 勝負事に強い女子高生・射守矢真兎(いもりやまと)を中心に繰り広げられる頭脳バトルミステリ。あるときは学園祭の出し物をする場所を賭け、またあるときは出禁解除を求め、またまたあるときは自分の要望を通すため。
 グリコ、坊主めくり、ジャンケン、だるまさんがころんだ、ポーカー…言わずと知れたこれらのゲームや遊びに特殊ルールを追加し、真兎が勝負していく。

 真兎のゆるふわ感がとても好きです。相手に油断させて最後に刺す勝負スタイルが読んでいてすごくクセになりました。
 私が一番好きだったお話は4話目の「だるまさんがかぞえた」。だるまさんがころんだ、にアレンジを加えたゲームです。ネタバレになるので何も書けないのですが、真兎の作戦にめちゃくちゃテンションが上がりました。

 とても面白かったです!

 以上、2024年1〜3月に読んだ本の感想を書いていきました。読んだことある本、読んでみたい本はありましたか?
 私がハマらなかった作品の共通点は「登場人物が好きになれない」でしたね(笑)

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