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玻奈子のメンヘラ:ショートショート

スマホの電池が切れそうだ。まだ30%残っているけど、なんだかもう、セカイが終わってしまいそうな気分だ。画面がぱたりと真っ暗になると同時に、セカイの電源もぱたっと切れてしまえばいい。

電車の窓はすべて開け放され、地下鉄を走る列車の轟音が鼓膜を激しく掻き回す。荒っぽい手つきでデリケートなところをなぶられているよう。

ついさっきまでの楽しかった一時も、それが今後も約束されているはずなのに、玻奈子の心を持続的に癒すには、力不足だった。

肌寒い夜闇が彼女の心の常だった。灯された蝋の明るい光が、消えようとしている。また世界は色を失って、見えなくなるのに、何もなくなるのに、自分の存在までがなくなることはない。

夜の闇もまた、まったく力不足だった。彼女の存在を消し去るには、いや、不足という言葉は、過大に評価しすぎている。まるっきり断絶されていて、力さえ及ばすことができないのだから。ただ表面の色を落とすことしかできず、内部にまでその侵食作用を及ぼすことができない。

だから彼女は、夜が嫌いだった。傷を与えて知らんぷりをするなら、清々しくてまだ好きになれるかもしれないが、そうではなく偽善のような自己満的処置を、あろうことにそれは施すのだった。これで罪滅ぼしは終わった、と言いながら、その実いまも絶えず傷を与え続けているのだ。

堪えきれず、玻奈子は、たった30分前まで、今日という1日を通して、《好き》と態度や言葉で懸命に伝えてくれた彼に電話した。

「ねぇ、あたしのこと、好き?」

( ´艸`)🎵🎶🎵<(_ _)>