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ダイバーシティアワード グランプリ受賞者インタビュー ~ 経験の多様性がもたらしたもの ~

こんにちは。セプテーニグループnote編集部の宮崎です。CSR委員会の事務局として、グループのD&Iを推進しています。

昨年セプテーニグループでは初めて、「ダイバーシティアワード」を開催しました。

今回のnoteでは、ダイバーシティアワードで初代グランプリに輝いた取り組みの推進者であるセプテーニ・ホールディングス経営企画部の呉さんに、受賞した取り組みの詳細やその裏話、今後目指していきたいことなどをお伺いしました。ぜひご覧ください!

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プロフィール
呉 鼎 セプテーニ・ホールディングス 経営企画部 部長
2010年セプテーニに新卒入社と同時にグループ会社に配属。2011年セプテーニ・ホールディングスに転籍。経営企画課で投資・アライアンス、中期経営方針策定等を担当。2017年からIR課も管掌、現在は経営企画部責任者として様々なステークホルダーと関わりながらグループの企業価値向上に向け奮闘中。

─ ダイバーシティアワードの初代グランプリ受賞、おめでとうございます!

ありがとうございます。締め切り1分前に提出したんですけど(笑)、受賞できてよかったです。

呉さんがエントリーした経営企画部の経験の多様性に関する取り組み:

「事業部門と比較して、月次目標達成のような成功体験を積むことが少ない」「視座を高く持ちながらも評論家にならないようなマインドセットを持つことが必要」。

これらコーポレート部門ならではの課題を解決するために経営企画部で行われたのは、事業部門へのレンタル移籍、シナジー創出を目的とした出資先企業との若手メンバー中心の関係性作り・コミットなどの取り組みです。

経営企画部では、自分たちの給与がどこから発生しているのか、顧客への価値提供の源泉は何なのか、机上の空論にならない出資先企業と事業部門のシナジー創出とはどのようなものかを身をもって学び、経験する機会が提供されています。

その結果、これらを経験した女性メンバーが海外グループ会社の代表に就任、経営改善に向けて奮闘中といった大きな成果も生まれています。

─ そうでしたね(笑)。たしか呉さん、当時すごく忙しくされていて、エントリーしたいけど間に合わないかも、というお話を聞いていました。間に合ってよかったです。そんな忙しい中でもアワードにエントリーしてくださった理由って何でしょう?

自分の考えをまとめる良い機会になるかなと思ったんです。

ちょうど当時、入山章栄さんが社外取締役に就任されるということで、その絡みで入山さんのインタビュー記事を読む機会があったんです。その中にダイバーシティに関する内容も含まれていたんですけど、そこで語られていた内容が、自分の考えていた内容とけっこう近かったんですよね。

入山さんがおっしゃっていたのは、企業が推進しているダイバーシティは属性で語られることが多いけれど、学術的に言うと属性の多様性を担保しても、業績にインパクトは生じない、というお話です。

究極な話、ジェンダーや年齢や国籍など、いろいろな属性はあるけれども、それらをターゲットにしたダイバーシティ推進が企業の業績向上につながっているかというと、学術論文的にはそうではないと。

そして相関関係があるのは経験の多様性だ、経験の多様性が担保されている会社のほうが業績が出ているんだ、ともおっしゃっていました。

それから、なぜダイバーシティを推進しているのか日本企業の経営者に質問すると「何かの取り組みの一環で・・」のようにファジーな回答をされることが多い。でも彼が接している欧米の企業からは、明確に「業績を上げるため」と答えをもらうことが多い、そこの温度感が違うんですよねとインタビューで回答されていたのもすごく印象的だったんです。

僕もその主張に近い感覚を持っていて、まさにそれらの考えが今回のエントリーに色濃く出ていると思います。僕は経営企画部の組織運営において、経験の多様性みたいなところを根本のテーマの一つとしていたので、やっぱりそうなんだなと、自分の考えをバックアップしてもらったようで、とても勇気づけられました。

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─ そうだったんですね。経営企画部は、さまざまな国籍の方が活躍しているので、その方向でのエントリーかなと思っていたんですが。

属性の多様性を期待されている空気は感じたんですが、自分が思うダイバーシティはそこではないと考えていました。それもあって自分なりの考えを整理して言語化する機会にしたかったんですよね。結果として、経験の多様性というテーマで評価をいただけたので、自分が考えていたことは間違っていなかったなと思いました。

─ エントリーシート内でも「属性ではない、あくまで経験の多様性」と記載されていたのが印象的でした。外部から来ていただいた特別審査員の方からも「このエントリーは非常に先進的だ」とお褒めの言葉をいただきました。ところで呉さんは、以前は事業会社に所属していましたよね。経営企画部に異動されたのは、どんな経緯だったんでしょうか?

異動する前はVasara(※)という事業会社に所属していました。顧客のメディアプランニングなどを担当していたんですけど、新しいことにチャレンジしたくなって代表の佐藤さんに直談判したんです。

(※)2018年にセプテーニに吸収合併

その頃ちょうどセプテーニ・ホールディングスの経営企画メンバーの一人が新規事業立ち上げの兼ね合いで部門から異動することが決まって、後任として僕の名前が上がっていたらしいんです。そんな経緯で経営企画部への異動が決まりました。

─ グループの中でもベンチャー気質の強かったVasaraとコーポレート部門であるセプテーニ・ホールディングスでは、かなりカルチャーが違ったのではないでしょうか?

そうですね。新卒で配属されたVasaraは男性ばかりの環境だったんですが、異動してきた当時の経営企画部は、担当役員こそ男性でしたが、グローバルなバックグラウンドを持つ女性社員と、新規事業を立ち上げることを背景に異動が決まっている女性社員、という構成でした。隣のデスクにはIRのチームがいたんですけど、そこにも事業会社出身の女性社員がいて。

かつて自分がいた組織に比べるとはるかに女性が多くて、かつめちゃくちゃ優秀。すごいなと。それがいちばん最初のホールディングスの環境認識でしたね。

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─ 異動して、ギャップを感じることはなかったんですか?

それはなかったですね。

異動前に、佐藤さんとお話しさせていただく機会があったんですが、その時に「経営企画部に来ると、入ってくる情報の種類も質も量も大きく変わるのでそのつもりでいてほしい。今後グローバル(※)やアライアンス関連を強化したいと考えているので、それらを担う人材になってほしい」と言われました。異動してきて、情報についても期待される役割についてもその通りだったので、そういう意味でギャップはなかったです。正直、当時はアライアンスという言葉の意味、知らなかったんですけどね(笑)

(※)当時セプテーニグループでは、中期経営方針に「モバイル・ソーシャル・グローバル」を掲げていました

でも経営企画の仕事の幅広さと、その幅広い仕事をこの人数でやっているのか、というところには驚きましたね。相当いろいろなことにチャレンジできそうだなとワクワクした記憶があります。

─ そうだったんですね。ちなみに先ほど「属性のダイバーシティを期待されていることに違和感があった、あくまで推進してきたのは経験の多様性」というお話がありました。でも経験の多様性を推進できるのって、経営企画部では属性の多様性が十分に担保されていたからなんじゃないかと思ったんです。

もうちょっと詳しくお話すると、セプテーニグループは10年くらい前からダイバーシティ推進の「一つ目の矢」として女性活躍推進に取り組んできました。その後LGBTに関する取り組みなどに幅を広げ活動を続けてきて、まだまだ課題もありますが、一定の手応えを感じることができるようになったんです。

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▲以前社内で実施したD&Iワークショップで岡島悦子さんから提示いただいた資料。セプテーニグループはダイバーシティ2.0から3.0へのアップデートを目指しています。

そこで、よりグループの持続的成長に貢献できるよう、個の中の多様性だったり一人ひとりの多様性といった属性以外の多様性の重要性を知り、自分ごととして取り入れてほしい、そんな思いもあってダイバーシティアワードがスタートしました。

そんな中で、呉さんがエントリーしてくれた経験の多様性の取り組みに光をあてることは、「セプテーニグループではこういった取り組みも重要だと考えています」という強いメッセージになる。取り組みの内容もさることながら、その方向性がグループの目指す方向に合致したこともあり、非常に評価が高く、グランプリに選抜されました。

とはいえ属性の多様性の重要性が低くなったわけではない。そこは誤解されたくないポイントなんですよね。経験の多様性が大事ですって言っている組織が、特定の属性だけに最適化された環境だとしたら、それはちょっと違うと思うんです。

先ほど、異動してきたら当たり前に女性が活躍している姿があったというお話がありましたが、そういった前提があったからこその経験の多様性、という注力ポイントなんじゃないかと思ったんです。このあたりいかがでしょう?

たしかに、環境や、さまざまな属性の優秀なメンバーに恵まれたというのはあるかもしれません。自分では意識してなかったけれど、ダイバーシティのステージとしては最初のステップとしてあったのかもしれませんね。

実のところ、自分自身が中国籍で、小さい頃から属性が云々って言われることにずっと辟易してきたんです。属性やラベルみたいなところじゃなくて、それ以外でどれだけ実績をだせるか。育ってきた環境でそう培われた。だから改めて国籍について問われても、だから何?という思いもあるんです。

でも、経営企画に配属されたときに上司から期待されたのがグローバル案件だったんですよね(笑)。当時の中期経営方針にグローバルが入っていたので、当然といえば当然なんですけど。そんな経験からも最初の取っ掛かりは属性だということは、理解できます。

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─ なるほど。そしてグローバルをさらに強化という流れの中で、外国籍の社員が増えていったんですね。

そうですね。

─ ありがとうございます。では次に、経営企画に配属された新人に対しての、具体的な取り組みについて教えてください。アワードへのエントリーでは、コーポレート部門ならではの課題感から生まれた取り組みがたくさん紹介されていました。事業会社へのレンタル移籍、シナジー創出を目的とした出資先企業との若手メンバー中心の関係性作り・コミットなど・・。これらの中で、いちばん最初に取り組んだのはどれでしたか?

自分が経営企画に異動になった時、担当役員から「経営者が見据えるものを先取りして考えられる頭脳になれ、でも評論家にはなるな」という経営企画部門の思想を叩き込まれました。

自分の手を動かして、必要であれば自分の足で現場まで情報を取りに行って、案件が発生したら自分でリーダーシップを発揮して推進するんだと。これは今でも重要視しています。そもそも事業の根幹を理解していないと、アライアンスとか投資とか中期経営方針をつくるなんてできないじゃないですか。

そんなわけで、いちばん最初に行ったのは事業部門へのレンタル移籍です。経営企画の中でマインドやスキルセットがある程度揃ってきたメンバーに、もう1段階レベルを上げてもらうことを目的として実施しました。当時の注力分野であるソーシャルメディア部門で、1年くらいでしょうか。

─ レンタル移籍を経験したメンバーに、なにか変化はありましたか?

わかりやすくアウトプットが変わりましたね。投資先との打ち合わせ時に出るインサイトに、事業寄りな部分が加わるようになったんです。

きちんと顧客へ向き合う業務に従事することで、自分たちのグループの収益や、自分の給料がどこから生まれているのかを身をもって知る。これは本当に大きな意義があるなと。

─ 頭での理解に加えて、実感として理解したようなイメージでしょうか。

そうですね。もともと優秀なメンバーでしたが、物事に向かう姿勢にすごく良い変化が表れていたので、もっと難易度の高いことにチャレンジさせてみたいと考えました。ちょうど東南アジアのLion & Lion社の買収が完結したタイミングだったということもあり、PMI(※)の一環でマレーシアに赴任してもらうことになりました。そのメンバーにとっては激動の時期だったかもしれませんね。

(※)ポスト・マージャー・インテグレーションの略。M&A後の統合効果を最大化するための統合プロセスを指す。

─ もともと英語のスキルも高かったところに事業理解も深まって。まさに適任ですよね。

そうなんです。行ってもらったのは外国籍の女性メンバーなんですけど、別に属性でアサインしたわけじゃなくて、経験と能力で選抜したということです。

でも、あれだけのスキルセットがあって、これほどの経験をしていても、必ずしも成功するわけではないんです。赴任時に課したミッションは、なかなかうまくいかなかった。それだけ難易度の高い仕事をしているんだと部内では伝えています。だからこそスキルセットもマインドもしっかり磨く必要があるよと。

─ なるほど。求められるレベルの高さがよくわかります。事業会社へのレンタル移籍以外に、効果的だと思う取り組みはありますか?

当社の出資先スタートアップ企業へ関与し、その成長に何らかの形でコミットしてもらう機会の創出ですね。事業の現場に行かせるのと本質的には同じことをやっています。

自分は経営企画課とIR課を管掌してるんですけど、この2つの課はけっこう状況が違うんですよね。IR課は四半期に一回決算発表があるし、それ以外にも投資家や資本市場のプロフェッショナルの方々とお会いしてしっかり対話・コミュニケーションする必要がある。このコミュニケーション次第で株価に影響が出ることもあるので、かなりシビアにいろいろな方向から対応するんです。

でも経営企画課って、どちらかというと自分たちが様々な外部の方から提案を受ける側なんですよ。出資の提案、M&A案件の紹介、アライアンスの相談などなど。そうすると放っておくと主体的に外に行かない、能動的にコミュニケーションやビジネススキルを磨く機会を逸することって全然ありえるんです。それは良くないよねと。そんな課題を解決するために、出資しているスタートアップ企業に深く関与させるようにしています。

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─ 深く関与?どんなことをするんでしょうか?

「スタートアップ企業の方々は自身の全てを賭けて資金調達して事業を運営している。そこに投資家・株主サイドの当事者として関与・コミットして、自分がその会社の経営陣だったらどうするのか、セプテーニという看板を使ってどういうリソースを提供すればこの会社が伸びるかを必死に考えてほしい。」と伝え、実際にやってもらうんです。

僕も何社か担当する会社を持って経営陣と膝を突き合わせてディスカッションしますが、スタートアップの経営陣は言わずもがな、我々以外の株主(ベンチャーキャピタルや事業会社から投資されているCVC(※)の方々など)も自分たちのリスクマネーを投下して事業を成功させようと一緒にコミットして働いている方々なので、そこで起こる議論もかなりレベルが高いんです。新卒1~2年目から関係者の一員としてその場の経験ができるのは幸せなことだと思います。相当マインドが磨かれます。

(※)コーポレート・ベンチャー・キャピタルの略。事業会社が組成する、主に未上場の企業に出資や支援を行う組織。自社の事業内容と関連性があり、本業の収益につながると思われるベンチャー企業に投資するのが特徴。

ただ、参加するだけだと意味がないんです。だから当事者になるためのスキルセットを磨く必要がある。そのスキルセットって、会計・ファイナンス的な知識や幅広い事業への理解・インサイト、経営マインド、対人折衝能力といったハードスキル・ソフトスキルに分解されるんですけど、そのスキルを身に付けないと駄目だよねって僕も言いやすくなったし、言われる方も腹落ちしやすくなったと思います。

この取り組み、経営企画のあるべき姿なんじゃないかと思うんです。自分たちが関わっている人たちがより価値をあげるにはどうすればいいか、という問いへの向き合いなので。事業会社が顧客のビジネス成長のために向き合ってるとしたら、僕らは自分たちが関わるスタートアップ企業や資本市場の方々など幅広いステークホルダーのバリューアップに貢献するためにはどうすればいいかを考える。これは将来的に経営人材を輩出していくことを目指している経営企画課のミッションとして、すごくハマっている気がします。

─ なるほど。たしかにそうですね。それにしても、これを新卒1~2年目にやってもらうのがすごい。

もちろん僕も適時フォローはしています。でも彼らの意欲的な動き、すごいですよ。この取り組みによるスキル向上をかなり感じますね。やり続けると経験の多様性みたいなものはもっと生まれると思ってますし、そこで鍛えられたメンバーたちは、グループ内外どこに行っても活躍する手応えは感じ始めてますね。

─ すごく頼もしいですね!最後に呉さんが今後目指したいこと、チャレンジしたいことなどがあれば教えて下さい。

経営企画をずっとやってきた人間としての命題があってですね。理想の経営企画部門とは、というところなんです。これは未だに答えが出てない。

以前佐藤さんに「1.5列目で業績貢献しながら企業価値向上に貢献できる組織」をつくってほしいとお話しいただいたことがありました。僕たち経営企画はコーポレート部門であり、事業サイドではない。だから事業に直接貢献して目の前の粗利を稼ぐ部門ではないと。それは構造的に当たり前なんですけど。

一方で、いわゆる管理部門という立ち位置でもない。その中間の1.5列目から事業成長に貢献することができると、自分が思い描いている経営企画像に近くなる。そんな考えを参考にしてセプテーニグループならではの経営企画部門を作り、経営人材を育ててほしい。そう佐藤さんに言われたんですよね。

事業会社でキャリアを積んで、その後に経営企画で新たな目線を養って、学んだことを糧にまた業績責任をもつ事業責任者になる。また経営企画のメンバーが事業側に異動して業績貢献する、というパターンもあるべきだよねと。こういうケースが増えると強みになるんじゃないか、というお話もいただきました。

実はこれまでも何度かそういうケースはありましたが、すべてイレギュラーやイベント絡みだったんですよ。グループ会社の社長退任をきっかけとする経営企画からの異動や、新規事業プランコンテストをきっかけにした経営企画への異動。

でもそういうイベントに左右されないスキームを作ることができたら、グループでいちばん経験の多様性を提供できて、その結果として業績にも、企業価値向上にも貢献できる部門と経営人材の輩出元になれるんじゃないかと。なかなかハードルは高いですけど、ぜひ実現させたいですね。

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─ 実現を楽しみにしています!今日はありがとうございました。

* 編集後記 *

はやくこの先の未来を見てみたい。インタビューを終えてそう思いました。経営企画部でのチャレンジによって多様な目線や経験値を手に入れた彼らが、これからどのように活躍の場を広げ、中期経営方針である「ドメインの拡張」とリンクし、企業価値の向上につながっていくのか。とてもワクワクします。

そして、呉さんがとても誇らしげにメンバーたちの成長と活躍を称える姿が印象的でした。

経験の多様性についての取り組みは、今回グランプリを受賞した経営企画部以外にも、グループのあらゆる場所でさまざまな形で進行しているはず。次回のダイバーシティアワードを、そういった取り組みをもっと掘り起こす機会にできるよう運営していきたいと思います。

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