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「だって一番好きだもん」

📷:大学3年生の頃の野球サークルの大会

漫画『H2』を読んだ。

なぜか最近あだち充作品にハマっているらしい恋人から勧められた。

小学生の頃あだち充作品のテレビアニメを観た記憶があるが、それが『タッチ』だったのか『H2』だったのか『クロスゲーム』だったのかはよくわからず…

同じ野球をテーマにした漫画なら『おおきく振りかぶって』や『MAJORシリーズ』も単行本を何冊か読んだことがある。

が、野球に詳しくない私は野球の場面はなんとなーく読み進め、ドラマチックな場面だけを楽しみにしていたように思える。

結局試合場面を退屈に感じてしまい、野球漫画にはあまり手が出なくなっていた。

今もルールを理解出来ているわけではないが、恋人の「野球に詳しくなくても楽しめる」という言葉を信じて久し振りに野球漫画に挑戦した。

結果、『H2』は私の好みど真ん中のセンチメンタル溢れる素敵な作品であった。

2人の野球少年と2人のヒロイン、そして4人を取り巻く他の野球部員や家族。

どの登場人物も個性があって、とても魅力的だった。

恋愛要素が多めながら細かな野球要素もしっかりと併せ持っており、『MAJORシリーズ』などに比べると野球経験者でも野球に疎い人でも楽しめる物語だった。

そして、1992年〜1999年連載ということもあり、「携帯電話がない」「学校で渡すラブレター」などなかなかノスタルジーな要素に胸躍らされた。

2人の野球少年と2人の少女。

ありそうでない四角関係は、よくありがちな三角関係とは違った斬新さが感じられた。

ハグをする場面を影で描いたり、擬音語だけが響き何が起こったかわからない場面を次の話でやっと回収する。

何が起きたのか読者に想像させ、登場人物の思いを読者に自由に受け取らせる。

読者次第で話のニュアンスが変わってくることもあり得る作品だ。

あだち充の言葉の言い回しや独特の間、エモーショナルなセリフが秀逸だった。

素直に気持ちを伝えられない思春期真っ只中の四人。

比呂はひかりを好きな気持ちと古賀に惹かれる気持ち、その狭間で揺れ動く。

最後の夏の選抜、準決勝で当たった親友同士の比呂と英雄。

英雄はひかりと比呂が想い合っていると考え、この試合でひかりに自分か比呂かを選ばせようとする。

周りもその事実に翻弄されるのだが、比呂はすでに古賀への気持ちを認め、ひかりに対しての恋愛感情は持っていなかったのではないかと思う。

それがわかるのが比呂が古賀ちゃんを引き寄せて『I love you...発音、合ってるか?』と言う場面だ。

今までひかりに対しても古賀に対してもなかなか自分のいまの気持ちを打ち明けなかった比呂が、『I love you』と言葉にした時点でもうそれは告白だと受け取っていいのではないだろうか。

二人は夏の選抜が始まる前からとっくに好き同士の関係だったのだ。

例え試合で自分が英雄に勝ったとしても、ひかりは英雄を選び直すほどちゃんと好きなのだと言うことを比呂は知っていたのではないだろうか。

自分の好きな人が自分を好きかどうかなど、すぐに気がつくものだと思うからだ。

ひかりが比呂にさよならとキスをしたあの時、2人の想いは過去のものになった。

しかし、英雄のひかりに選ばせるという闘志を知り、自分が試合に勝ってもひかりは英雄を選んだという事実をもって全てを終わらせたかった比呂は英雄相手に全力投球を繰り広げる。

過去の気持ちを成仏させるような、そんな役割が夏の選抜にはあったのだ。

と言うのが私の解釈だ。

比呂が古賀ちゃんに(ひかりのお母さんが亡くなってしまったことを受けて)『お前は長生きしろよ』と言うシーン。

私はもう、これは実質プロポーズ〜!!と受け取った。

他の漫画のように告白シーンをしっかりと演出して『付き合ってください!』と言わせないところが、あだち充らしいなと思う。

古賀ちゃんが他の男からアタックされていることを知り、『がんばれよ、あいつ意外といい奴みたいだな』『国見くんほどじゃないけどね』『なんでおれがいいやつなんだよ』と話す比呂。

全然深刻じゃない場面だったが、古賀ちゃんが『だって一番好きだもん』と言う。

突然の素直な気持ちに比呂も読者も胸がときめくのを感じたことだろう。

この登場人物の気持ちとセリフの緩急の付け方が巧みだ。

そういった気持ちの変化を悟り、読者が一段大人になるための通り道として『H2』は最適な漫画だ。

でももし現実で比呂のような恋愛に素直じゃない人がいるとしたら、もう少しわかりやすいセリフで告白してあげてほしい🙂

ちなみに私はひかりの大人っぽいませた雰囲気が好きだ。

古賀ちゃんの素直さや天真爛漫な雰囲気も憧れる。

この2人のヒロインは、男性から見た理想の女性像を表しているように思えるが、女性の自分もこうなりたいという理想像も表しているなと思った。

久しぶりに一気見してしまった漫画だった。

このスマホもインターネットも普及してなくて、常に直球勝負みたいな時代、いいなあ。

ちなみに、野球やってる時の人って普段より3割マシにかっこよく見える。

真面目にやればやるほどかっこいい。

たまにはゴルフよりも、野球をしてるところが見たいなあ。

このnote、読んでますか?恋人くん。

野球しているところが見たいでーす!

『H2』ってヒーロー2人、ヒロイン2人って意味らしいですね。

うちの家族に『いまH2を読んでる』と言うと、みんな口を揃えて『水素?』と言っていました。




よんぴ

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