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文献紹介:研究に基づくADHDに関する208の結論(Faraone et al.,2021)

「研究に基づくADHDに関する208の結論」(Faraone et al.,2021)という文書があります。こちらは、 ADHD世界連合(The World Federation of ADHD)の声明という形で、これまでの大規模研究のレビューから分かったことをリスト化し、世界の研究者366人がチェックしたものです。


内容は極めて多岐にわたり、ADHDの歴史、原因からはじまり、各研究(脳、遺伝子、神経科学、経済等)の知見を総括しつつ、診断や治療についてなど、本当に208個書いてあります。

その中でも、冒頭で「本研究の総括(Summary of findings)」という表があり、主要な結果がまとめられていますので、その内容をごくごく簡単に列挙します。

  • ADHDは世界的に確認されており(青少年の5.9%、成人の2.5%)、遺伝的な要素と環境的な相互作用によって引き起こされることが多い。

  • ADHDの人は、脳機能に関する心理テストや、神経画像研究(fMRI)において脳の構造にわずかな違いがあることがわかっているが、これらの違いをADHDの診断に用いることはできない。

  • ADHDの人は疾病を持ちやすく、人生でも苦労しやすい。
    具体的には、肥満、喘息、アレルギー、糖尿病、高血圧、睡眠障害、てんかん、性感染症、目の異常、免疫障害、代謝障害のリスクが有意に高い。

  • また、生活の質の低下、薬物使用障害、不慮の事故による怪我、学業不振、失業、ギャンブル、10代の妊娠、人付き合いの困難さ、非行、自殺、早死などのリスクが有意に高い。

  • そして、症状を軽減するのに安全かつ有効な薬が複数ある。 服薬によって、事故による怪我、喫煙、学業不振、うつ病、自殺、犯罪行為などの減少が確認されている。
    また、 薬物療法以外の治療法も(特に服薬期間が終わった後も含めると)しばしば有用である。
    (全てp.792の「Table 1  Summary of findings」より筆者が翻訳)

このような原著論文を読むことは困難ですが、世界中でチェックされた知見がすでにあることを念頭におき、子ども理解を進めていきたいと感じます。
無知ゆえの偏見や、誤った対応は誰でもいつでもしてしまいうるものだからこそ、こういう資料はありがたいです。

原著論文
The World Federation of ADHD International Consensus Statement: 208 Evidence-based conclusions about the disorder
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S014976342100049X


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