教師の長時間労働は何が原因なのか?―埼玉教員超勤訴訟の判決文から考えるー

解説youtube :https://youtu.be/NKjS9b9KuBY


今回は、埼玉県教員超勤訴訟の裁判資料を読むことを通して、教員の勤務時間について、残業について司法がどのように判断したかを見てみます。
また、判決後に一層熱を帯びてきた給特法改正の取り組みや、その点に関する識者の考えを紹介し、教員の勤務時間に関して一体何が問題なのかを考えます。


判決文を読むと、裁判所側も教員の超過勤務の実態を認めつつも、それを残業として認めることや残業代を支払うことは難しいという判断をしており、現行法上では訴えを棄却せざるをえない事情が見えてきます。

より具体的には、例えば「日常業務には自主的な部分と指揮命令に基づく部分が渾然一体となっていて、これを峻別することが極めて困難なため、定量的な労働時間による管理になじまない」とか「全証拠を精査検討しても性格な労働時間を認定することができない」といった文言が並びます。

したがって、教員には「勤務態様の特殊性に鑑み、超過勤務手当制度はなじまない」ため、残業代にかえて給与の4%の額を上乗せする「給特法」が今も適切だと考えられる、というのが裁判所の判断です。


この判決を踏まえれば、現行法の給特法が問題であり、その改正を目指すべきだという声も当然上がります。実際に「月100時間もの残業を放置する「定額働かせ放題」=給特法は抜本改善して下さい!」というオンライン署名では4万人以上が署名し、記者会見も行われています。

しかし、教育研究家の妹尾昌俊さんによれば、給特法は、決して「働かせ放題」を推進する法律ではなく、安全配慮義務をはじめとする労働安全衛生があまりにも学校では脆弱なことが問題視されるべきだと指摘します。さらに「残業代が出るようになることと、教職員数が増えることと、優先度の高いのはどちらなのか?」と教員の長時間勤務が給特法の改正によって解決可能なのか、疑問を投げています。

長時間労働の原因が「給特法」にあると考えれば、その改正が重要ですが、他にも「教育現場に人が足りない」ことを問題と考えることもできますし、「学校や先生に役割をもっと求めてきた社会の問題」とも考えることができます。

私たちは教員の訴えが棄却された、という判決にばかり目がいってしまいますが、なぜそのような判決になったのかという判決の論をしらなければ、議論することができません。

教員の勤務時間が長時間にわたっていることは周知のことですが、一体そこでの原因は何なのか、皆様はどう思いますか。


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