32/1,000冊目 ウィリアム シェイクスピ(著) 『あらし(テンペスト)』
ウィリアム シェイクスピ(著) 『あらし(テンペスト)』
『あらし(テンペスト)』
『テンペスト』(The Tempest)は、英国の劇作家ウィリアム・シェイクスピア作の戯曲。「テンペスト」は「嵐」という意味。シェイクスピア単独の執筆としては最後の作品。シェイクスピアの作品中『夏の夜の夢』の次に短い作品。
シェイクスピアが書いた中でも人気の高い作品で、2012年のロンドン・オリンピック開会式では、物語の舞台となる魔法の島を模したセットで作品の一部が朗読された。
1611年11月1日に宮廷で初演され、1923年に出版された。
『あらし』の下地になった作品はほとんどないそうですが、ドイツのニュルンベルクの劇作家ヤコブ・アイラーが書いた『美しきジデア姫』には酷似した部分がいくつかあります。
ミラノ大公プロスペローは、邪悪な弟によってその座を奪われ、可憐な娘ミランダとともに孤島に隠れ住んでいる。プロスペローは長い閉居生活のあいだに魔術を習得し、魔法の本を使ってさまざまな妖精や悪鬼を思いのままにあやつることができるようになっていた。かつての仇敵たちが島の近くを船で通りかかったとき、プロスペローは魔法で大嵐を起こして一行を島へ招きよせ、復讐にとりかかる。
シェイクスピア作品の一部を特に「ロマンス劇」と呼ぶことがあり、この『テンペスト』はその代表作の一つに数えられる。「ロマンス」は恋愛ものの劇という意味ではなく、現実離れした空想譚を指し、もとはロマンス語(イタリア語やフランス語など)で書かれた中世の荒唐無稽な物語を指す言葉だった。シェイクスピア研究者のエドワード・ダウデンが考案した用語で、シェイクスピアは魔法のような人知を超えた力が重要な役割を果たす「ロマンス劇」を晩年に連続して執筆している。
プロスペローに服従している醜い獣「キャリバン」は、復讐から和解・解放へいたる物語のなかで人々からあざけられつづけ誰からも許されることがないため、西洋文明と植民地の関係を象徴する存在として、近年の文学研究で大きな注目を集める存在となっている。
時間と場所と筋の統一を主張する古典主義のいわゆる「三一致の法則」を守ったシェークスピア唯一の戯曲である。
三一致の法則については、阿刀田高が著書『シェイクスピアを楽しむために』のなかで詳しく解説してくれています。
あらすじ
ナポリ王アロンゾー、ミラノ大公アントーニオらを乗せた船が大嵐に遭い難破、一行は絶海の孤島に漂着する。その島には12年前にアントーニオによって大公の地位を追われ追放された兄プロスペローとその娘ミランダが魔法と学問を研究して暮らしていた。船を襲った嵐は、プロスペローが復讐のため手下の妖精エアリエルに命じて用いた魔法の力によるものだった。
王の一行と離れ離れになったナポリ王子ファーディナンドは、プロスペローの思惑どおりミランダに出会い、2人は一目で恋に落ちる。プロスペローに課された試練を勝ち抜いたファーディナンドはミランダとの結婚を許される。
一方、更なる出世を目論むアントーニオは、ナポリ王の弟を唆(そそのか)して王殺害を計り、また島に棲む怪物キャリバンは漂着したナポリ王の執事と道化師を味方につけプロスペローを殺そうとする。しかし、いずれの計画もエアリエルの力によって未遂に終わる。
魔法によって錯乱状態となるアロンゾー一行。だが、プロスペローは更なる復讐を思いとどまり、過去の罪を悔い改めさせて赦すことを決意する。和解する一同。王らをナポリに送り、そこで結婚式を執り行うことになる。
魔法の力を捨て、エアリエルを自由の身にしたプロスペローは最後に観客に語りかける。「自分を島にとどめるのもナポリに帰すのも観客の気持ち次第。どうか拍手によっていましめを解き、自由にしてくれ」と。
登場人物たち
プロスペロー:前ミラノ大公
ミランダ:プロスペローの娘
エアリエル:空気の精
キャリバン:島に住む怪獣
アロンゾー:ナポリ王
セバスチャン:王の弟
ファーディナンド:王の息子
アントーニオ:ミラノ大公、プロスペローの弟
ゴンザーロー:ナポリ王の顧問官
トリンキュロー:王の道化師
ステファノー:王の酔っぱらい執事
映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にみるシェイクスピアの技法
映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、最後にフィクションから現実に帰っていく展開があります。キャラクターたちが消え、語り部のシンジもまた現実のなかに混ざり合い、走り去っていきます。
このフィクションという小宇宙から観客を(そしてたぶん作者をも)開放する手法は、この『あらし』のなかにあります。次の文は、翻訳した福田 恆存氏の解題のなかの一文です。
ウィリアム・シェイクスピア
生没:1564年ー 1616年(51歳没)
ウィリアム・シェイクスピア( William Shakespeare)は、イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物。
出生地はストラトフォード=アポン=エイヴォンで、1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍した。1613年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇『ハムレット』『マクベス』『オセロ』『リア王』をはじめ、『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』『夏の夜の夢』『ジュリアス・シーザー』など多くの傑作を残した。『ヴィーナスとアドーニス』のような物語詩もあり、特に『ソネット集』は今日でも最高の詩編の一つとされている。
「シェイクスピア」の日本における漢字表記は「沙吉比亜」だが、これは中国語での表記「莎士比亞」の「莎」を「沙」と、「亞」を「亜」と略し、「士」の代わりに「吉」を用いたもの。日本に作品が伝わってまもない明治時代などでは「沙翁」と表記されたこともある。
感想
読了に3.9時間。短いのでつらくはないけれど、それほどのめり込まない。しかし太宰治の小説にもエリオットの詩にも出てくるこの作品は読んでおきたくて読んでみました。
福田 恆存(ふくだ つねあり)氏の解題の後半がおもしろいです。
シェイクスピア37作品の紹介マガジン
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参照
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