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写真と生きる vol 1 尾道旅

尾道旅


そろりそろり

2022年4月1日
電車に揺られること8時間
天気は晴れ
見渡すかぎり絶景

遡ること1ヶ月前。この約2年の自粛期間中これと言って遠出をしていなかったが人間というのは贅沢にも一つの環境には飽きてしまうようだ。その環境がどんなに優れていても。

そこから一ヶ月後の3月後半。金がないとはこのことで、出会いと別れのシーズンは財布となかなか良好な関係を保てぬままバイトをひとつ増やした。4月のシフトを想像しては南無阿弥陀仏と思いつつ、桜はなぜ一瞬で散ってしまうのだろうと考え、ヤフオクでバラ売りになった青春18切符を競り落とした

いつの日にか行きたいと思った尾道は多分今年を逃すと一生行かない気がしたので電車の硬い椅子に8時間身を委ねても安ければと朝5時台に飛び乗った。


なんてこった

モバイルバッテリーを忘れた。正確には買い忘れた。この時代に持ってないなんてと思われるだろうが私も全く同意見。

車内で機内モードにし、18切符の乗り換えをメモ帳に書き、読まないであろう本をリュックに押し込んだが、あまりに変わらない車窓からの住宅の景色に押し込まれた本を取り出すこととなった。


ラーメンマン

乗継ぎで降りた岩国駅で昼飯を食べることにした。とはいえ遠出はできないので駅近のラーメン屋に入った。結局こういうところがうまいんだよなっていう少し寂れた看板と年季の入った壁紙。絶対うまいと確信、ガラガラと引き戸を開けた。

この時の自分に言わなきゃいけないことがある
いい知らせと悪い知らせどっちから聞きたい??

いい知らせはこのラーメンが最高ってこと
悪い知らせはこれよりうまい飯はもう出てこないってこと

そうこの旅で一番美味かった食べ物の登場である。


尻が限界であります

山陽本線糸崎行き、折り返し地点の岩国からあと3時間と言ったところ。4、5時間電車に乗っていれば飯を食べたといえど尻はコンクリのようにかとうなる。そういうわけで窓際の席で外を眺めたり時折本を読んでいた。

どこかの駅で一気に人が乗ってきて満員になった。すでにコンクリ状態の尻は南無阿弥陀仏であるが、神様というのはそう簡単に人間を見捨てるわけではないようで近くで話す男女の話が聞こえてきた。最初に言っておくが聞く気はないが耳に入ってしまったのであります。

この辺の大学生らしく、女子が男子にこないだの人がしつこくて〜〜というような話をしているがまんざらでもない様子で、男子は男子でこちらもまんざらでもない様子。

大事なことなのでもう一回言うが耳に入ってきたのであります。結構面白くて最後らへんは耳だけ傾けていたのであります。


人間こう言う話が一番好きなんす

女いわくその男のことを言っていたが、聞いてる男の友達らしくこちらはそんなやつじゃないとフォローしていた。飲み会で〜〜〜と言っていたが神様は時として意地悪でここからどうなったん?と言うタイミングでトンネルに入る。お値段はCMの後と言われる気分だが、こちらは結果はトンネルの中なので気になって仕方ないが話は進んでいる。

こちらとしてはお前たち早く付き合いなさいよぐらい話が弾んで楽しそう。恋愛ドキュメンタリーでスタジオで見守り役&コメンテーターの人が目を輝かして仕事をしているのがわかる。

かなり時間が経ったであろうか。ヒロインたちが降りた車内にはガタンゴトンと言う響きと甘酸っぱい青春の空気が残り、2つ前の席に座るおじいちゃんは黒ラベルを嗜みながら窓の外を眺めていた。


ついた瞬間また行きたい


ふたりの青春映画を見た30分ほど後糸崎についた。ここから最後の乗り換えをし、15分ほどで尾道駅に到着した。

初めてきた場所なのになぜか懐かしい。海も近く、桜は咲き誇り、一両編成の電車が街を走っていた石の階段と瓦屋根の家々が歴史を感じさせ、ゆっくりとした空気が流れていた。

2泊3日の荷物といえど、カメラも2つ持ってきたのでそれなりに重かったが、チェックインを後回しにしても探検したくなる街でたくさんの路地とたくさんの猫がいた。ただただ綺麗でタイムスリップしたかのようだった。


ホワイトな飯屋たち

宿にチェックインを終え早朝の出発の疲れから少し休んでシャワーを浴びた。お金はないが、今日はラーメンしか食べてないし、夕食はご当地グルメでも食べようかと8時前に宿をでて店を探した。

飲食店や雑貨屋が軒を連ねる商店街
煌々と光るレトロな街灯
人っ子一人いない道路
食べ物の匂いすら感じない風
空いてない
そう空いてないのである

尾道の飯屋は閉まるのが早い
むしろ8時まで営業してる方が珍しいらしい
そしてコンビニに吸い寄せられるのであった。


謎の早起きと2日目

自分の家じゃないと謎の早起きを繰り出す人は多いのではないか。私もその一人で6時くらいに目が覚めた。午前中に先に来ていた尾道マスターの友達と写真を撮った。お昼ぐらいにお別れして午後はのんびり街を散策した。

少し高台にお寺があって昨日出会ったねこに会いに行った。昨日ニャンコひろしと命名して以来の仲だが、今日もひろしはそこにいてなでなでしていると時間を溶かしてしまった。

その後は高校の同級生で、今年卒業して東京に行った友達のお母さんの名が入った鮮魚店を見つけてDMで送ったり、ペルーより直輸入!アルパカのお店という看板を見つけてはアルパカ似の親友を思い出し、あいつらどこでもいるなと思ってはフィルムを詰め替えてこの街を写した。

モバイルバッテリーなかったことも功を奏してただただ目の前にある残したい瞬間に向き合う時間が流れていて、どこか懐かしくも帰りたくなる街並みは歴史とここに住む人たちの生を感じさせるそんな素敵な場所だった。

飯はというとラーメンとカツ丼を昼夜と食べたのだが岩国のおいしさに勝てずと言った感じで、お土産用に買ったインスタントラーメンが現地のやつより美味しいという失態を招き複雑だった。

8時間かけてきた尾道は最高で、翌日も朝の電車で尻をアスファルトにしながら帰りました。


フィルム

尾道の日常

尾の電
美味しかったチャイ屋さん

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