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Ⅹファイル事件 💥深夜の咆哮💥前編

二十代前半、独身の私はおんぼろアパートに一人暮らしをしていました。
いつか健全な家庭を築く時の為に、経済感覚や家事のノウハウを身につけておきたかったからです。

住む所を決めるのに、仕事帰りや休日を使って不動産屋を巡り、いくつかの物件に足を運びました。

日当たり、風通しが良く、狭すぎない間取り、騒音のない場所、適度に人が住んでいる地域…

そんなことを念頭に置きながら物件巡りをして、私が選んだのは、おんぼろアパートでした。

広い通りから小道に入った先には、広々とした敷地があり、一軒家を二つ繋げた建物が向かい合っています。その中の一軒が空いていたのです。

私の条件は全てクリアしていて、ひと月の家賃が三万五千円という、ありがたい物件でした。

ただし、相当年季が入っている…。

住める状態にするまでには、かなり手間を掛ける事になりました。
台所ではガスの元栓が油の塊となっていて、ひねることも出来ないし、換気扇も動きません。トイレのドアノブも壊れているし、壁は繊維壁で、ボロボロに剝れている状態。お風呂場も同じく繊維壁。ガスでお湯を沸かすタイプですが、着火装置は劣化が進んでいて、心許ない印象です。この不安は的中し、ある真冬の夜中に点火出来ず、二時間格闘するはめになります。

今思えば、ため息が二十秒ほども出続けそうな状態ですが、当時の私は若くて元気いっぱいでした。
にわか左官屋さんになり、友人の協力も得て、繊維壁を剝がして明るい色のペンキを塗りました。掃除洗剤を駆使して台所も使用できる状態に整えました。

リフォーム作業が終わり、荷物を運び込む前にやっておきたい事がありました。
それは『バルサン』による消毒作業です。

建物がこれだけ古いのだから、きっと出没するでしょう、ゴ❌ブリが。
茶色の楕円形、体を縦にして人に向かって飛んで来る、恐ろしい「アレ」です。

彼らが家賃を負担すると持ち掛けてきても、同居をお断りする私は、眩しい晴天の日の朝、対照的な薄暗い笑みを浮かべつつ『バルサン』を使用しました。(二倍の量😑)

そうして、ようやく快適な一人暮らし生活を手に入れたのでした。


…怒涛の後編に続きます。


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