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ひとつ、希望が叶った日

一人の青年との出会い

遡ること2週間前、今月10日のこと。
青森で出会った齊藤あゆみさんと北千住で久しぶりに再会し、
靴磨きの報酬を資金に自転車で二度目の日本一周を行なっている青年、佐原総将さんを紹介いただいた。

総将さんとは昨年、読書のすすめさんのご紹介からオンライン画面越しに出会い、SNS上でつながっていた。
そのため彼のことは知っていたけれど、直接会って話すのは初めて。
結論を先に書くと、このセッティングをしてくれたあゆみさんに本当に感謝している。


穏やかながら核心をついた話しぶりはもちろん、相手の話を聞く姿勢など、総将さんの美しさをただただ感じた時間だった。
関門海峡事件や現在はビッグボスになったあの人の靴磨きエピソードなど、興味が尽きない総将さんの旅の話を聞いているうちに、彼が、私の本、そしてセンジュ出版の本をほとんど読んでいると話し出した。
さらには私が本作りにおいて大切にしていることをさらりと言い当ててくれ、
旅をする中で何度もうちの会社のことを人に話していたと聞かせてくれた。

人を足元から輝かせたい。
そう話す、それを行動で積み重ね続けている彼自身のしなやかな輝きを前に、
こんな表現をする方がうちの会社と繋がってもらえたことが、素直にありがたかった。

総将さんは今月、私の文章講座を受けたいと言う。
今の彼にとっては安くないであろう受講料。
しかも講座開催まで日にちがあまりない。
でも、そこからわたしの中でひとつの賭けが始まった。

彼のお金の使い方

総将さんはこの日の会食の後、読書のすすめさんへ自転車で向かうようだった。
そこから送られてきた写真を見ると、よく知る方のステッカーに並んでセンジュ出版のステッカーが愛車に貼られていて、嬉しかった。

しかしこの日、総将さんは予想を覆すお金の使い方をしていた。
以下は彼のSNSの投稿から。

「次の世代に"種"を撒いてきた」

靴磨き日本一周218日目in東京


"いただいたお気持ち代は全て使い切る"


そう決めて旅に出た。


まずは自分が生きるための食費。

次に寝処。

次に靴磨き専門店に行って勉強すること。


それでもお金は余っていた。


日本中の美味しいご飯を食べよう。


下関で一貫1200円する寿司を食べた。


回転寿司しか食べたことない私は海老の尻尾と
実の境界線が分からず全て口の中に入った。


「この海老、まだ生きとるんか?」


そう感じるほどの歯応え。


美味すぎて、ホッペが2ミリ落ちた。


次は絶対に旅人が泊まらないホテルに泊まろう。


一泊85,000円するリッツカールトンに泊まった。


ママチャリで敷地内に侵入した瞬間、そこにいる
スタッフ全員が"不審者"だと思いソワソワしていた。


「デポジットを小銭で払ったこと。」

「25,000円の天ぷらを食べたこと。」

「世界一のサービスを受けたこと」


"トータル12万円分の支払い"


その物語を日本中で出会った人達に話し、
時に爆笑を生み、時に共感を生み、時に感動を生んだ。


その物語を聞いて心が動いた人達の数を見れば、
"充分に元は回収した"と思っている。


これからもこの話は死ぬまでするだろう


お金の使い方について一つ軸はある。
#消費は例外です

"物語が生まれるか"


そこに安くはないお金を投じて、
"面白い"と思ったら喜んで払う。


結果的に「その物語」を知って喜んだ人は
別の人に繋げてくれる。


回り回ってまた帰ってくると学んだ。


でも、もう日本中の美味しい食べ物は
満足のいくほど食べさせてもらったし、
リッツカールトンを超える物語はホテル
では生まれないだろう。


「何にお金を使うのか」


しばらく考える日々が続いた。


そんな時、青森県で聖愛高校野球部の寮に
泊まらせてもらった。


次の日は大雨で、予定していた練習はできず、
急遽私が選手達にすべらない話(講演)をする
ことになった。
#もちろんすべらなかった


その時に、私が今の経験に至るまでに
"読書"が大きく影響してることを伝えた。


みんな私がおすすめした本をメモりながら、
真剣に話を聞いてくれている。


でも、思った。


「あ、こいつら読まねぇな」


多分その日練習したら、本屋さんに行くことは
ほとんどの選手が忘れるだろう。
#一部を除く


なぜそう思うのかというと、自分がそうだったから。


学生の時から先生や大人達に「本を読め」と
言われて、なぜ読むといいかを熱く語られ、
その瞬間は"読もう"って思う。


でも、5分後にはワンピースのことで頭がいっぱいだ。
#記憶力がハトに等しい


人間、そんなものだよ。


聞いた時は感動しても、ご飯を食べたら
その熱い気持ちは冷めてしまう。


私は幸い、18歳で地方の大学に行った時、
やることなさすぎて、最初は友達もできなくて、
お金もなさすぎて、外が寒すぎて、「本でも
読んでみるか」と思い本屋さんに行った。


最初に出会った本が読みやすくて、
すぐに実践できる環境があったからこそ
本の大切さを感じることができた。


小学校の時から本を読む人もいる。

私みたいに大学になってから読む者もいる。

社会人になってから読む人もいる。

経営者になってから読む人もいる。


きっとみんな「本は読んだ方がいい」とは
薄々分かってる。


手に取るタイミングがそれぞれあるのだろう。


きっと"私はそのタイミングを作る"ために、
たまたま旅中に出会った聖愛高校野球部の
原田監督と出会ったのだろう。


ラクダを水場に連れて行って、水を飲むか
どうかはラクダ次第。


でも、誰かがラクダを"水場"まで連れて行って
あげるべきだ。


今回は私が読書という水場にご縁あって
出会った彼らを連れて行こうではないか。


私は、旅中に出会った人達からいただいた
"お気持ち代"をほぼ全て本に使った。


55冊。


合計90,970円。


日本中の人達が人に喜んでもらって稼いだ
お金を、「これを生活費の足しに」と願って
いただいたお金。


私は次の世代の人達に種を撒くことにした。


きっと聖愛高校野球部の選手達はその種を
丁寧に育てて、いつか大きな花を咲かせると思う。
#私のように


また所持金は減った。


が、この物語もきっと大きな花を
咲かせ、また私を助けてくれると思う。


最後に読書のすすめ清水店長の言葉を
借りて、締めませてもらいます。


「俺こそがBook Bossだ」
#清水店長史上のギャグで一番おもろい

https://youtu.be/kBBibn3PAg0
11/14のYouTubeです

https://note.com/sosho/n/n3d9656573f65
↑この旅で初めて布団の上で眠った日のこと

総将の手持ち金情報11/14

靴磨き数 9足
お気持ち代 28,000円
使ったお金 1,200円
ご馳走になった回数 2回

靴磨き合計 904足
ご馳走になった回数 267回
お気持ち代  1,674,150円
使ったお金 1,624,861円
所持金 49,289円

この領収書の写真が送られてきた時、わたしはてっきり、自分のための本を9万円分も買ったのだと思っていた。
その使い方もまた見事だなぁと感心していた矢先、上記の寄贈先に当たる聖愛高校野球部監督の感謝の投稿で、この本が人のために贈られたものだったと知る。

こうしたお金の使い方をする総将さんを、ますます信用できると思った。
そして、やはりこの賭けは成功するだろうと感じられた。

靴磨きの先払い

実は総将さんが受講料を集められなくても、出世払いでいいと言って、今月は彼に二日間しっかり文章講座を受けてもらおう、受けてほしいと、初めから考えていた。
でも、そんなことは一切口にしなかった。
すでに日付が回ったので昨日のこと。
夜になって、文章講座の申し込みを知らせるメールが届いた。
「きた」
わたしは総将さんが有言実行できちんと申し込んできたことだけでも、震えるような気持ちだった。

彼からのメッセージには、「7万円しか作れませんでした。本当は二日間受講したかったのですが」とあった。
私の本を改めて読んで、私から文章を学ぶことを贅沢だと表現され、
「この先の人生で余裕で回収できます」
と送ってきた。

前日ではなく前々日で一度意思表示してきた総将さん。流石すぎ。
あと一日ある。
わたしは自分の賭けを信じて、彼に尋ねた。
「明日はどこで磨いてますか?」
26日、つまり今日のお昼から夕方まで、大阪城公園で靴磨きをしているとのこと。
それを受けて、わたしは自分のSNSでこう書いた。

ここで、お願いがあります。
みなさんの中でどなたか、彼に明日靴磨きをお願いできる方、
または、靴磨き代を先払いしたい方いらっしゃいませんか?→彼のPayPay受け取り先がコメント欄にあります。
明日彼はお昼から夕方まで、大阪城公園で靴を磨いています。

私の土日を、彼に渡そうと思っています。
彼のこの先の人生に賭けるため、今センジュ出版ができることを手渡そうと思います。

ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

すると、すぐに大変お世話になっている経営者の方からLINEが届いた。

投稿見ました。
佐原さんに靴磨き代先払いします。最近見たドラマの言葉とリンクしたので。
「金は価値と交換できる引換券」
お金自体に価値がないんだよね。

その後も、大阪の方から連絡がきた。
お目にかかったことはないけれど、以前からわたしの文章講座に興味を持っていてくださった方。

アタシ靴磨き代先払いします!!
吉満さんの講座を受けたい気持ちが一緒で嬉しいです!

とメッセージがきて、大変恐縮した。
でも、嬉しかった。

わたしの投稿から3時間弱の間で、総将さんからのコメントが上がった。

おかげさまで、10万円全て集まりました。
本当にありがとうございます。
応援してくれた方、この投稿を読んでくれた方、他にも連絡いただいた方、本当に感謝いたします。

わたしの賭けは成功した。
ありがとうはこっちの方だ。

わたしの賭け

何を賭けたのか。
それは、彼が彼自身の生き様で、講座当日までにしっかりと金額を集めることだった。
別に集まらなくてもわたしは彼のために講座を二日間開こうと思っていたので、正直どちらでも構わないと言えば構わなかったのだけれど、
でも、わたしにはある夢がある。


ずっと疑問だった。
センジュ出版の本やサービスを必要としてくださっているのに、その方が今お金を持っていないなら、相手にしないのか。大切にできないのか。
「今」お金を持っていなければ、センジュ出版のお客様ではないのか。

あまりにも幼稚な愚問で、凄腕経営者の皆さんに鼻で笑われることだろう。
そして実際、うちの会社は左団扇とは言い難い状況ではあるし、
そんな疑問を抱いてる暇があったら、本を一冊でも売りたいし、サービスを一人でも多くの方に受けてもらいたい。

でも、必要としている人にだけ、でいい。
お金を持っていようといまいと、センジュ出版のことが必要な人に、分け隔てなく同じように接したい。
だから、誰でもいいわけではない。お金を持っていればいいわけでもない。

それがわたしのわがままで、痩せ我慢だ。

そして、今回、本気でうちのサービスや本を必要としていることがわかる青年に出会えた。
そこで、考えた。

総将さんをはじめとした、センジュ出版を必要としながら「今は」持ち合わせのない方に、心地よくうちの本やサービスをお渡しするためにできること。
それは、その人に周囲の人のサポートを集めることだ。
そのためにもまずはその人自身が信頼される言動をすでに積み重ねていることが必要だろうから簡単なことではないけれど、でも世の中にはきっと、こうした人がいる。
そして、そうした人を応援したい人もまた。

なので、もし総将さんが「開催日までにお金が手元に集まらなかった」と言ってきたら、わたしはこの試みをはなから試すつもりだった。

「みなさん、靴磨き代を先払いしてください」

彼に代わってセンジュ出版に受講料を払うのでもダメ。
ただお金を彼に渡すのでもダメ。

彼に会って、彼に靴を磨いてもらって、その時に彼と話をしてほしい。
その代金だ。

なので、「先払い」にこだわった。
そうして、彼からうちに巡ってくることが重要だった。


わたしの賭けは成功だった。
こうした生き方をする人はすでに、豊かだ。
だからどんどん豊かなお金を巡らせる。
センジュ出版はそうしたお金の循環の中で、この会社の役割を果たしたい。

わたしの小さな、でも、たしかな望みが叶った日。
総将さん、みなさん、ありがとう。

土日は彼とこちらでご一緒します!


総将さんのYouTubeチャンネルはこちら
noteはこちら

彼のこれからの表現にもご注目ください。

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