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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

19 おっさんの旅  WEIRD編 ウッディ、林業。

大木が旅立ち、苗が育つ町。
雨の多い町ポートランド。とくに訪れた3月は春の長雨が心配された。先に結果をいうと、一度も雨に降られることはなかった。とくに旅の中盤からはアメリカらしい青空に恵まれた。湿り気が吹き飛ばされた乾いたブルーをバックに撮影できた。なんでもブルーに溶かして撮ることがきた。普段のポートランドは、肥えた山々と雪解け水や木々が天然のろ過装置となって清らかな水の恵みで、木がよく育つところ。こちらもその存在感は否応なく感じていた。だから、青空を思う存分に堪能しつつ、道を走っていても、ドライブインの駐車場でも、郊外の駅の操車場でも、ハイウェイから逸れた森の中でも、スケートパークでも、それに大きな川べりでも、大木(伐採されたものも含む)を見かけるたびに、夢中になってシャッターを切っていった。

オレゴンの(ウェッティな)ウッディ、大木たち。
ウディ・アレンでもウディ・ハレルソンでもない。ましてやジェームズ・ウッズやタイガー・ウッズでもない。『トイストーリー』のカウボーイのウッディもいい線いってるようで違う。この町に来たら、ウッディ(WOOD)といえば、オレゴンが誇る林業なのである。例えば、幹線道路は、今も昔も人気のマスタングのニューモデルや4WDのワゴンなんかを蹴散らすように、大木をくくりつけたコンボイが走っていた。「どけ、どけー。大木さまのお通りだい」。パーキングエリアにもコンボイがずらりと並んでいて圧巻だった。その多くは工業製品なんだけれど、それに混じって大木や干し草といった、ご当地ならではのものを積載したのがいる。そんな中でも、遠路はるばるアリゾナからやってきた年代物のコンボイがかっこよかった。白髪にヒゲをたくわえた初老のドライバーがまたシブかった。そうやって、ここからウッディたちは、いろいろな町に旅立っていく。さらには町の港から船に乗って、遠い日本にもやってきているのだろう。

キテレツたちに混ざっても存在感大のウッディ関連。
この旅に出る前、東日本大震災の津波にのみこまれた東北の木の鳥居がキャノンビーチの方に流れ着いたというニュースがあった。そして、その鳥居が再び東北の地へ戻ってくるということになった。海を隔てて(海をはさんで向き合って繋がって)、木も旅をしているのだ。星野道夫さんの『旅をする木』を思い出した。(WEIRD)キテレツでいいじゃないかの、そんなウッディな町の一画に、レクリエム・ノースウエストという木工所がある。以前は、日本車のSUZUKIの工場だったところを再利用していた。オレゴンの州法では、数百年経過しているレガシー的な木造建物は保存しなければならない。これはなかなか良い法律だ。息を吹き返し、再生を待つ古い材木たちに囲まれて、まるで森にいるような気分になった。「あのー、この木工所で1番古いものを見せてもらえませんか?」。古株の作業員が教えてくれた。それは、なんと、くの字に曲がった錆びた釘だった。それを尊び、ずっと保管しているポートランダーのメンタリティにグッときた。単なる釘であらず。それはツールでありながら、この町のウッディたちとの日々を静かに語っているようだった。19
(写真はフリーウェイをドドドと駆けるウッディのトラック/2018年)

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