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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

26 おっさんの旅  WEIRD編 グーニーズ!!!

キテレツでいいじゃないか。
違いを認めて、それを楽しむ、“KEEP WEIRD”な町、ポートランド。木々は雨に唄っていた。違いを認め合うというのは、実は人類が一番苦手なことではないだろうか。とくに日本は、バババーと一色に染めたがる。異口同音、同調圧力。元来、そういうのが苦手だったから、ポートランドの町の風土(偶然の旅行者の目線と時間でしかないが)は腑に落ちた。そんな今回の旅のクライマックス。それは、オレゴン州ポートランドから、フリーウェイ26号線を北西へ進みワシントン州アストリアへ。朝6時30分に出発。途中、深い森に分け入り撮影。それから、アストリアのグーニーズ・タウンの前に、キャノンビーチへ。ここは、80年代を鼻たれキッズとして過ごしていたオッサンたちにとっては、映画『グーニーズ』のエンディングを飾るところとしてインプットされている。オッサンズは一瞬にしてグーニーズに変身。まさしく童心に返るというやつだった。

撮影旅行、ミッション・コンプリート。
ちなみに、ポートランド一帯は、グーニーズ・タウンをはじめとして、ロブ・ライナー監督の『スタンドバイミー』など、名作のロケ地が点在していて、映画ファンにとっても見所が多い。こちらも、スタンド・バイ・ミーの原作者のスティーヴン・キングのエッセイ『書くことについて』なんかも読みながら、旅して回った。その後、アストリアのグーニーズ・タウンへ行き、映画で使われた坂道やピザ屋(現在はボーリング場)で撮影した。パシャパシャとシャッターを切る。絵として残すもの。自分のログ的に撮っておきたいもの。憧憬の地に興奮しすぎて、ついつい会話があっちゃこっちゃになる。ミッションをコンプリートしたい写真家と、少しはしゃいでしまう編集者と、コンセンサスがとれなくなる。そうすると、不穏な空気がドロドロロと湧き上がってきて、現場がピリつく。だけど、おたがいを理解しようとする。少しタメをつくり合う。こういう空気が、実は好きだったりする。仲良しというのとまた違う、許容しつつもピリッとしてるという丁度いい関係性。それこそ、少し違うことを楽しむ感じ。

思いっきり観光客しちゃったぜ?
オレゴン州ポートランド。ワンボックスカーに3人のオッサンと3人のスタッフが乗り込んで旅して回った1週間。スケートボードが好きな者、サーフィンが好きな者、アメリカンカルチャーにあまり惹かれない者、すでに80%はアメリカンになってしまった者、食べ物にこだわりがない者にうまいものじゃなきゃイヤだという者など、車内はそれこそ呉越同舟といった感じだった。中国を旅したときに感じたが、中国語はみんなケンカしているような勢いがあったが、この車内はまさにそんな感じで、エネルギーはほとばしっていた。クライマックスは、呉越同舟ながら、みんな大好き『グーニーズ』のエンディングシーンに辿り着くことだった。もちろん、それは達成できた。かの有名なキャノンビーチの岩山を、全員で拝むことができたのだから。

新しい旅をしたい人にうってつけの場所。
同時に、もっと大事なものがあったことに気づく。それは、旅の途中に出会った言葉。“KEEP WEIRD” 。直訳すれば、変わっていること。それを旅している間に実践解釈した結果、他者との違いを認めたり楽しめばいいじゃないか、そういう生き方してようぜ、ってことだと思った。思えば、メニュー片手にまごまごしていたら、ロサンゼルスあたりでは「ネクスト!」って言われかねないけれど、この街のレジのおねえさんは、いたってナチュラルに対応する。後でつかえている他の客が咳払いとか舌打ちをするなんてこともない。違う言語、違う顔と肌、そういうこともあるよねーって感じ。この感覚は、フレンドリーとか仲良しというのとはまた違う。自分とは違うんだってことを許容すること、許容してもらうってこと。心地よかった。キャノンビーチにたどり着いたとき、オッサンたち全員が思った。「すげえー映画のまんまだ」、「また、ここに来たい」と。オレゴン州ポートランドは、新しい旅を探している人にうってつけの場所だと思う。自分は自分のままでいいのだと、ここで出会うヒト・モノ・コト、そして美しい風景に注がれる優しい雨が唄っている。そんな気がする。26
(写真は旅のクライマックス、キャノンビーチ。このはるか向こうに日本がある/2018年)

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