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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

24 おっさんの旅  WEIRD編 ポートランド散策。

おのぼりさんはおのぼりさんらしく。
初めての町では、とにかく気になったものや目に入ったものを確認して、インプットする。そのあとに、自分にとって要らない情報、良いものなどを取捨択一すればいい。そのためにも、スカシっ屁や知ったかぶりをカマすより、まずは特産品は必ず買って地元に金を落とす。これが一番。2018年当時、ポートランドで目についたのは、レンタルバイク。パリとか観光地にはレンタルバイクがあるものだけれど、この町では、ナイキが“BIKETOWN”と銘打って、スウッシュ入りの自転車をいたるところに展開している。観光客のお手軽な足になるだけでなく、みんなが利用することによって渋滞緩和などにも一役買っていた。次はベトナム料理。町の一角にベトナム料理屋が並ぶ界隈がある。そこで、ポートランドいちのフォーのスペシャルメニューを平らげた。これが疲れた体に実にしみわたる。塩分がとんだオッサンを癒してくれた。

ラーメン・ブームだった2018年。
ポートランドを直撃中だった空前のラーメン・ブーム。とくにマルキンラーメンは、ここでも大変な混みようだった。歳を取れば取るほどに、並ぶことが苦手でせっかち度がうなりを上げて加速するのが、日本男児ならぬ日本オヤジ。一期一会の旅先の出来事と葛藤しつつ、結局は行列に並ぶのを断念。ラーメン屋のすぐ隣りのタイ料理屋へ。な、な、なんと、そのタイ料理屋“Nong’s Khao Man Gai”が大当たり。場所は、バーンサイド通りのシズルパイのピザ屋の真裏。6種類ほどのメニューから選ぶワンディッシュスタイルだけれど、お手頃で、うまい。好みのプレートをオーダーしたら、あとはビールかコーラかミネラルウォーターで胃袋へ流し込みスタイル。そういうお店だけに確かに人気で、混んでもいる。だけれど、長いは無用なヒットアンドウェイというか、すぐできて、すぐおいしい、すぐハローグッバイ。どんどん回転してて良い感じ。思い出すと、またかきこみたくなってくる。

KEEP WEIRDを象徴する?ドーナツ。
かつてポートランドに住んでいた友人の編集者マーク・ホワイトリーが送ってくれたリコメンドリストに入っていたドーナツ屋、BLUE STAR。朝8時からおいしいドーナツとコーヒーを提供してくれる。ドーナツの見た目は、店構えとリンクしていてシンプルでよくあるドーナツな感じ。味はというと、濃厚なものあり、フルーティなものあり、独創的なものありと、それぞれが口の中で際立ってくる。これと対照的に、24時間営業のVOO DOOドーナツ。ブードゥーっていうだけあって、土偶のような変てこなドーナツもあるし、ステッカーもTシャツもえぐいし、面白い。まさにKEEP WEIRD、変わっていることを認めあう、違いを楽しむ、そんなポートランドの風土を体現するドーナツ屋だった。たしかに、ポートランドには、変な髪型やカラーのひとが多いし、すごい入れ墨のひとがいっぱいいる。ネットフリックスでは『ポートランディア』っていう番組が人気だし、そういう番組になっちゃうくらい、変わったことが容認されている場所。どっちのドーナツ屋を好むかは、どっちでもいいけど、どっちにしたって、違うことを良しとする感じはとてもいい。

旅先でテンパるオッサンたち。
そうそう、海外というのはオッサンたちの本性をあぶり出すからおもしろい。普段は協調性を意識できるのに、なぜか旅先、ましてや海外となると、我を押し通したくなる人が多い(気がする)。テンパるからかな。これは決して悪い傾向ではなくて、歳を重ねてくると、ある時期から、それはそれだけ直球で面白いと思えるようになる。個人的には、自宅もしくはホテルの自室以外で排便ができないので、居住まいは旅先でも比較的いつも通りの自分だけれど、肛門の方が我が強くて困っている。肛門メンタルという別の人格がいるのである。話をポートランドの散策に戻そう。地元にお金を落とすぜを合言葉(言い訳)にして、財布の紐をゆるめるオッサンたち。まずは、“KEEP PORTLAND WEIRD”のステッカーやバッジは買うでしょ。地元チームのジャージーやソックスも買うでしょ。あとは、スケボーショップのオリジナル・ステッカーやウィールも買うでしょ。

オッサンたちの旅のゴールデン・ルール。
おのぼりさん丸出しで、なんでも訊いて、なんでもリアクションする。これが1番手っ取り早い。郷に入っては郷に従え。つくづく思うのだけれど、日常生活よりも旅してるときの方が、先人のことわざが身にしみる。みんなそれぞれ勝手に動きたがるカメラ・オッサンたちだったが、この街で1番大きなブックストア“パウエルブックス”は、みんなでチェックしておこうぜということになった。写真集コーナーに、アメリカ人写真家を押しのけて、好きな写真家のひとり中筋純さんの『流転』を見つけたときは、(おー、やるな!)と嬉しい気持ちになった。旅先で、しかも良いところだなと感じはじめた町で、自分が好きな人のアートワークの痕跡を目撃するのは、とても幸せなことだ。家の書庫にある写真集が、そこではまた別の光で輝いているのだった。24
(写真はキテレツでいいじゃないか!なVOO DOOドーナツ/2018年)

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