メイクの魔法
幼い頃「大人は毎日お化粧できていいなぁ」と、メイクに憧れていた。
洋服に凝り始めた少しあとくらいからだろうか、わたしのメイク歴が始まった。
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毎朝着替えてから、その日のコーディネートに合わせたメイクをする。
毎日アイシャドウやリップの色を変えて、雰囲気も変えて楽しんで、
なりたい自分になれる魔法。
【ファッション】というくくりの中に、
洋服と同じくらいメイクの存在が欠かせないものになっていった。
そもそも洋服に夢中になった始まりは、容姿のコンプレックスをカバーするため。同じようにメイクの力も借りて、外見を作り込んで、
毎日フル装備して外の世界で戦うための土台づくりをしたんだ。
本当は弱い自分でも、着飾ることでなぜか強くなれる気がして、自分を保つことができた。
弱さをカバーするため
メイクしているときの自分が本当の自分だと信じ込み、
いつからか
そうやって着飾っていないと自分でいられなくなってしまった。
本当に親しい間柄の友達とじゃないと泊まりも苦手で
人前で素顔になることも、
コンビニに行くことも、ゴミ出しさえも出来なかった。
見て見ぬフリしてたけど、"素顔"もコンプレックスだったんだ。
外で戦うための装備がないと、何にもできない弱い自分。
なりたい自分になれる楽しいメイクだけれど、
頼るしか道がないことが、中身は弱いままの自分が、イヤだった。
そんな自分を変えたかった。
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もうデザイナーになった頃。
初めてマリンスポーツをすることにした。
ずーっとしたいと思っていたけれど、マリンスポーツには
ノーメイクがつきものだ。それがネックで挑戦できずにいた。
弱い自分。
でも、素顔でいられないことが
このまま一生続くのか?と、何度も何度も自問自答して
大袈裟に聞こえるかもしれないけど、意を決して挑戦した。
(マリンスポーツに挑戦した、ではなく、言葉の通り素顔に挑戦したのだ…!)
そこではたくさんの出会いがあった。
スポーツの絆は良い。
でも、それだけじゃない。
わたしにとって(大人になってから)初めて、
素顔で出会った友達ができたのだ。
心地よい海の空気も伴って
わたしは、メイクに頼らずとも、本当の自分でいることができた。
素の自分を、すんなりと受け入れてもらえたことが、自信になった。
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今でも毎日、その日のコーディネートに合わせたメイクは欠かせない。
でもそれは昔のように
本当の自分を隠すためのもの装備ではなく、
本当の自分を際立たせるための
自分の良さを、自分の個性を引き出すための、魔法になった。
いつからか、メイクが欠かせないものになっている。
わたしはこれからも毎日、「女に生まれてよかった」と思いながら
魔法を楽しむだろう。
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