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土井善晴さんの本を読んだ

コロナ禍の間に家庭で料理をするようになった方も多いと聞くが、自分の場合はむしろ減ったかもしれない。以前は自宅マンションのゲストルームに学生たちを呼んで手料理を振る舞うことが、実験の替わりかつ一種のリフレッシュだったのだけど。ゲストルームでの飲食が禁止されて現在に至る。

土井勝の息子の土井善晴さん(会ったことは無いのだが、なぜか「さん」を付けて呼びたい)はSNS上で発信力の高い料理家であることを知ってフォローしていたが、これまで著書は読んだことが無かった。これまた、料理本を読むことも大好きだったのだが、コロナ禍の間、あまり読んでいなかったことを振り返る……。下記ブログは2019年のもの。ちなみに、サムネイル画像はAdobe Stockからライセンス。

で、最近たまたまFacebookのタイムラインに流れてきて、Kindle版を手にしたのがこちら。出版は2022年の5月。

土井善晴さんと言えば「一汁一菜」。「外食と同じ料理を作る必要はない、具沢山の汁物にご飯、さらに香の物でもあれば、十分立派な家庭料理」というコンセプトを推奨されている。本書は料理本ではなく自伝。スイスの五つ星ホテル「ローザンヌ・パラス」や、大阪の「味吉兆」で修行した頃のエピソード、西洋料理と和食の違いと相互の影響、土井勝の料理学校を閉じることになった経緯、次々とチャレンジしたフード関係の仕事、なぜ「一汁一菜」にたどり着いたかなどが、独特の語り口で書かれている。

食べ物が好きな方、食文化に関心のある方にはぜひお勧めしたい本でした♫

【追記】刺さった言葉たち

「レストラン」とは元々「回復させる場所」の意味で、食べる場所、美食をする場となるには誕生から数世紀かかりました。

「フランス料理と日本料理の出会い」より

懐石料理の献立には、季節や時間表現というストーリーが自然に盛り込まれ、その土地柄、天候や客の年齢嗜好を想像して工夫されます。そのような食事のあり方は、亭主の一期一会の思いを献立という形に表した茶事の懐石料理に本来あったものです。

「影響試し合い、グローバル化する料理」より

「ガストロノミ」という言葉は、美食術(学)と翻訳されていますが、2010年にユネスコの世界無形文化遺産に登録されたフランス人の食の概念です。「ガストロノミ」とは、単に贅沢なおいしい料理を食べることではなく、よりおいしく食事をする慣習で、自然との恵みとの調和、料理とワインの組み合わせ、食器のセッティング、マナーなどと共にある食事文化ですから、フランス人のアイデンティティそのものです。日常の生活の中に当たり前にある人生の哲学を礎にして、芸術と生活を結びつけているのです。

「おいしさだけではない料理の価値観」より

料理には、商標登録も著作権もありません。

「おいしさだけではない料理の価値観」より

・・・日本料理において「素材を生かす」とは何なのでしょううか。それは素材の持つ情緒を際立てることなのです。

「何もないゼロから始まる懐石料理」より

あぁ、自然と繋がる家庭料理は民藝なんだ。・・・
・・・美とは何かを考え抜いた柳宗悦と同じように、料理の美を民藝の美と重ねて、美とは何かと考えました。民藝は美の問題ですから、料理もまた美の問題なのです。

「「家庭料理は民藝だ」という大発見」より

日本の伝統的なハレの料理に注目することで、日常のケの料理の意味を改めて考えることになりました。

「一汁一菜でよいという提案」より

ハレの日やプロの仕事が日常の暮らしに入り込んでしまったから料理が「面倒なもの」になったのです。

「味噌汁は何を入れてもいい」より

お味噌汁の一椀の中に、無限の変化を知ることができます。それが「有限の無限」です。

「健康は後からついてくる。一汁一菜を信じて下さい・」より

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