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Web3.0と暗号通貨

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暗号通貨(crypto-currency)関連のこと。政治学的な視点から眺めています。DAOやWeb3.0など。
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2019年3月の記事一覧

ソーシャル・スケーラビリティとは何か。

2019年3月27日、ethereum「plasma chamber」開発者の落合渉悟さんが、Litigable Protocolsを発表した。 この余波は大きく、ジャーナリストの星暁雄さんによって記事にされ、「落合提案」と名付けられた。落合提案については、その視野の広さと視座の高さから他にも解説記事が生まれ、Twitter上でも議論が続いている。 ただし、「ソーシャル・スケーラビリティ(social scalability)についての理解が足りないのではないか」と思われ

暗号通貨と金融──三つの意味

暗号通貨は、金融の領域で語られがちです。規制動向がうんにゃらとか、どこぞの銀行がカストディ始めたとか、ICOのつぎはSTOだとか。でもそれだけじゃないんです。 「暗号通貨と金融」と言われたら、その人の属性によって、おおきく三つ、意味するところが変わります。 ①既存金融と暗号通貨の接点について ②分散型金融について(dopefi, defi) ③将来的な価値流通基盤としての分散型金融について このツイートへの返信を見ていて、三つの分類に気づきました。説明していきます。

物理現実と情報現実

熱海でVRを体験した。 海に面した高台に、熱海城が構えていて、その地下にゲームセンターがあるのだ。 「お城にゲーセンがあるの?」 半信半疑で地下に足を踏み入れると、開けた空間に筐体が乱雑に置かれていた。なんとゲーム料金は無料。太鼓の達人や、よくあるシューティングゲーム、マリカーのリアルバージョン、UFOキャッチャー、バスケのフリースローをやるやつ、卓球台やホッケー台もあった。 もちろん、筐体の型式は古い。数世代まえのやつだから、太鼓の達人は最近のがカバーされてない。

ガバナンスへの招待

これまで指摘してきたように、暗号通貨には権力性が内在しています。スマートコントラクトという永続的なプログラムが、権力性の源泉です。 誰にも止められない、改竄されない、動き続けるプログラムは、そのネットワークを使う人たちを拘束します。国家の法律のように、その国内にいる人間の行動を規律します。国外の人は規律しません。 この性格を指して、社会契約のようだと指摘する研究者もいます。 強制力のあるチェーン(国)に、社会契約をして入る。嫌になったら、退出できる。そして、その強制力自

擬制としての国家――暗号通貨は、擬制を実態化させた

正統性、という話をしました。その正統性は、国民からくるものだという話もしました。 けれど、こう問われたらどうでしょうか。 「あなたは政府を積極的に支持していますか」 多くのかたは、否だと思います。だって、不満ばかりがあります。あたりまえです。政策の成功は目に見え難く、政策の失敗は目に見えやすいからです。課題の量も質も、増えてきました。政府は、常に存在する国民からの不満に答える必要があります。そうでないと「正統性」というフィクションを維持できません。 正統性とは、フィク

国家の正統性について

前回の記事で、国家について語るとき、最初に物理的暴力を軸に考える必要があることを指摘しました。ただし、意図的に触れなかった点があります。 国家とは、ある一定の領域の内部で――この「領域」という点が特徴なのだが――正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である(『職業としての学問』) このウェーバーの定義には、「正当な」という限定が付いています。これは、「正統な(legitimate)」を意味します。 政治学において、「正当性(justness)」と「正