暗号通貨と金融──三つの意味
暗号通貨は、金融の領域で語られがちです。規制動向がうんにゃらとか、どこぞの銀行がカストディ始めたとか、ICOのつぎはSTOだとか。でもそれだけじゃないんです。
「暗号通貨と金融」と言われたら、その人の属性によって、おおきく三つ、意味するところが変わります。
①既存金融と暗号通貨の接点について
②分散型金融について(dopefi, defi)
③将来的な価値流通基盤としての分散型金融について
このツイートへの返信を見ていて、三つの分類に気づきました。説明していきます。
①既存金融と暗号通貨の接点について
ツイートだけではわからないのですが、Syogunさんは「機関投資家には暗号通貨はどう見えるか」など、データに基づいて発信されている方です。
この層の人たちは、既存金融、ないしは既存社会側から暗号通貨を見る傾向が強いです。規制がどうで、金融政策がどう動いて、ETHは証券なのか……などなど。
暗号通貨と金融、といった場合に、普通の人が思い浮かべるのは、こういうことだと思います。大事です。社会が暗号通貨をどう受け入れるか、という接点の話ですから。
でも、それだけじゃないんですね。いま暗号通貨界隈でHotなのは、分散型金融です。
②分散型金融について(dopefi, defi)
いままでは、どこかしらの機関がお金の貸し借りを仲介していました。しかしスマートコントラクトを経由することで、そういった中間機関を(かならずしも)必要としなくなりました。「暗号通貨は銀行をディスラプトする」みたいな表現は、これを意味します。
上の記事でも紹介されているように、「お金を貸して利息を得る」みたいなことはすでにできますし(日本の銀行に預けるよりも高利率!)、投資も、分散型IDも、賭けも、およそ思いつくものはすべて、表現されています。
信頼を担保する中央機関がいらなくなったので、コードを介して直接に金融に触れるようになりました。現在、さまざまに勃興しています。たぶんいろいろ、バグも出てきます。
こういったことは、暗号通貨界に入らないとわかりません。既存金融側からすると、「あんなどーしようもない仕組み、失敗する」と思うでしょう。でも中に入ってみると、なぜか機能しています。価値観が変わる瞬間です。これはひとつの未来です。
しかし分散型金融は、まだ直接的な「金融」しか表していません。その先を考えている人が、います。
③将来的な価値流通基盤としての分散型金融について
暗号通貨は、ウェブに価値を保存し移転し検証できるプロトコルです。それが可能な理由は、みんなでひとつのデータを「正しい」ものとして合意できるからです。価値の移転とは、データ上の状態遷移に過ぎません。
通貨や金融的な仕組みは、数値データと相性がいいです。なので、既存金融側との接点が強く(さまざまな摩擦がある)、分散型金融も勃興しています。繰り返しますが、数値データと相性がいいから、目立って見えます。何といっても、暗号通貨は始まったばかりですから。
では、それは何につながるでしょうか。
ふーさんの言葉を、ざっくりパラフレーズすると、「いまの分散型金融は、それ自体がアプリケーションだけど、将来的には後ろ側に引っ込んで、WEBの価値流通の基礎になるよ」ということです。
イメージ的にはこんな感じです。
つまり、分散型金融は価値流通アプリとして、それぞれのアプリの後ろ側で処理されるようになります。だって、AアプリとBアプリを行き来するときに、障害があったら嫌ですからね。その価値移転をなめらかに行う(しかもその拡張も一手に行える)基礎アプリケーションが、いま勃興している分散型金融というわけです。
暗号通貨の面白いのは、こういうとこですね。ひとつひとつのアプリが作られると、有用なものであれば、後発のアプリに組み込まれていくわけです。オープンソースで開発が自由ですから。そうして最初のアプリは、組み合わされてミドルウェア・プロトコルになるわけです。エコシステムが生まれます。
このダイナミズムはすごくて、暗号通貨界でも、見える人しか見えないと思います。そうなったとき、流通するのは、通貨的・金融的なものに限られるでしょうか? 違います。
たとえば、ゲームのキャラも流通するわけです。キャラをロックして、一定額の価値を引き出して、それを別の場所で使う。みたいなことは、現時点でも想像がつきます。というか、EOSでやっているアプリがあります。
金融という言葉は、狭いです。
世のなかには、もっともっと価値が回っています。その価値を掘りだして、しかるべきものと出会わせる。それが分散型金融、暗号通貨プラットフォームの未来です。
WEBは、人と情報、人と人を出会わせました。暗号通貨プラットフォームは、人と価値、情報と価値、価値と価値を出会わせるプラットフォームになります。WEBの進化の必然です。
①既存金融の人たちと、③将来的な価値流通基盤の人たちは、ほとんど接点がないでしょう。使っている語彙も異なります。世界観が異なります。③が見えている人は、暗号通貨界という世界の住人です。新しい世界です。それはVRと非常に相性がいいです。WEBにおける新たな生、と言っていいかもしれません。
サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。