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【書評】三体の続編だ! 前作を遥かに凌ぐ「俺の考える最高のSF」感が満載で面白いったらありゃしない 『三体Ⅱ 黒暗森林』

待ちわびた三体の続編『三体Ⅱ 暗黒森林』が発売されたということで、早速駅チカの啓文堂に買いに行きましたよ! 入り口に入ったらすぐに平積みされていて、なんだか嬉しい。

入り口で手を消毒して、暗黒森林の上下巻をスッと平積の上から二冊目を抜き出しレジへ。

昔から、平積みになった本を買うときは、上から二冊目を抜き取ってしまうのよね。どうしても、1番上って抵抗がある。たくさんの人の手に取られたりするし、上にカバンを置く人が居たりするし。立ち読み用の公共物みたいな感覚で新品感が無いのを嫌ってしまう。貧乏くさくてすみません。

あ、平積にされた上にカバンを置く人嫌いです。大嫌い。

それにしても、久しぶりに書店に足を運びましたけど、すっごい混んでるのね。スーパー並に混んでいてビックリ。読書人口が減っているなんて話をよく聞くけど、コロナで行動制限された結果、読書に人が戻っているのだとしたら読書好きとしては嬉しいけれども。

さて、待ちわびましたね。三部作の二作目です。

前作のおさらい

前作は、葉文潔が文化大革命の最中、秘密裏に運用されていた異星人探索基地に配属され、そこで、恒星(太陽)を使って電波を増幅させる方法で、宇宙に向かって「我々を滅ぼしてくれ」とメッセージを送っていた。

その電波を受け取ったのが、地球から最も近い恒星系で、地球人よりも圧倒的に科学を発展させていた三体星人だった。

三体星人の住む惑星には太陽が3つもあり、さらにその3つの恒星の三体運動により環境が安定しないどころか住む惑星の破滅も予想されるような状況だったので、自暴自棄なメッセージを送ってきた地球人を滅ぼして地球に移住しようと計画をした。

とはいえ、いくら科学技術が発達しているとはいえ、アインシュタイン世界の話なので、どんな文明でも光速は超えられない。

三体星人は、自分たちが450年かけて地球に向かう間に、地球人が三体星人を凌ぐ科学力を持つ可能性もある(クラークの「幼年期の終わり」を読んでもわかるが、SF世界の地球人は科学の進歩がすごく早いことで定評がある)ため、それに歯止めをかける必要を感じた。

そこで、三体星人は、改造した陽子である智子を光速で地球へ送り込み、科学技術の発達を撹乱し妨害する事にした。

陽子と智子って誰? というかんじだが、陽子は粒子の「ようし」で、これを11次元から2次元に展開し、2次元上で論理回路を組み込み、コンピューターのようなものに改造したものが智子だ。智恵のある粒子ということで「智子」で、ふりがなにはソフォンと書かれる。

この智子は、量子もつれにした一方を地球に送り、残りの一方を三体星人の手元に残すことで、地球上の必要な情報をリアルタイムに(光速を超えて)三体星人に伝える事ができる。そのため、地球人がなにか気の利いたことをしようとしたら、たちまち地球側の智子を使い、妨害が出来る段取りだ。

ということで、圧倒的な科学力を持った三体星人は、艦隊を組み地球を侵略すべく高速で向かってきており、450年後に地球へ到着する。

それを迎え撃つ地球人は、三体星人が送り込んできた智子のせいで、ありとあらゆる科学の基礎研究に邪魔が入るし、終末思想をもった人々が邪魔をするしでてんやわんやとなってしまった。

地球人手詰まり! 大ピンチだね。ということで、話は暗黒森林に話が繋がります。

前作「三体」は暗黒森林の前フリでしかなかった

暗黒森林では、地球人を滅ぼしに来る三体星人に対応するため、苦肉の策としてうまれた「面壁計画」が進行します。

地球人としては、正攻法で科学力をつけて対抗しようにも、地球に無数に存在する智子が邪魔をして科学技術はまったく進歩しないし、ありとあらゆる活動が三体星人に筒抜けになっている。

しかし、どうやら三体人は、脳波がだだ漏れの種族で、考える=相手に伝わるという生物で、人間が「頭の中だけで考える」ということが理解できないらしい。

その事を知りひらめいた人類は、頭の中だけで三体星人に対抗する作戦を練る事が出来る圧倒的な思考力を持つ人間を選び、その人に世界規模でありとあらゆるリソース(政治も軍事も科学も)にアクセスする特例的な権限を与えることにした。それが面壁計画で、適合者は「面壁者」と呼ばれた。

選ばれた面壁者は4名。それぞれ、元米国国防長官、現職ベネズエラ大統領、脳科学者、天文学者だ。

もう、かなり無茶な設定なのだけど、これを納得させる謎の力量が本作にはあるのが凄い。物語は4名の面壁者により進められるのだが、この4名の作戦がまたスケールがデカくて面白いし、実はあっと驚くラストにつながる伏線にもなっている。地球上の科学力とリソースを目一杯使い切った頭脳戦略ミステリーでもあるのだ。

もうね、とにかく前作を超える規模で「俺の考える面白いSFおしえたる」という著者のイマジネーションが爆発していて、面白いったらありゃしない。いやぁ、楽しい読書体験でした。これだから読書はやめられない。ありがとう劉慈欣。ありがとう、翻訳に携わった皆様、ありがとう週末にもかかわらず読書に没頭させてくれた家族たち。オススメです。

今回もね、前作同様人物の名前には苦労しましたが、もうね、自分で読みやすい読み方で最初から最後まで押し通せば良いと思います。



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