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【書評】 超面白い! でも、登場人物の名前が覚えられない! 『三体』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。49冊目。

『三体』 (劉 慈欣:リウ・ツーシン)、立原 透耶 (監修)、大森 望 (翻訳)、光吉 さくら (翻訳)、ワン チャイ (翻訳)

近頃話題の「三体」。大きな書店では必ず置いてある「三体」。そして書店で異彩を放っているかもしれない「三体」。表紙は毛筆だし題名も不思議な「三体」。なに「三体」て。

これは中国からやってきたSFの大作なのだ。

中国の近代文学が話題になることが少ないし、はたして共産圏から面白い文学なんてでてくるのかと疑う気持ちもあったのだけど、これがもう読んでみてびっくり、本当に面白い。

冒頭の文化大革命の下りは重苦しいが、それさえ終わってしまえば怒涛のエンターテイメントが待っている。

それなりに長いし、それなりにSFな内容なんだけど、とにかく読んでいて楽しい。次から次へと畳みかけるような展開、これでもかと様々なギミックが話題が展開が人物が事件が宇宙人が智子が量子テレポーテーションで量子加速器がアレで恒星がズーンで古典大作SFを彷彿とさせる衝撃のラストにしびれる。しびれる。

SFファンなら家財道具をメルカリで売り払ってでも本書を読んでほしいし、SFファンでなくてもエンタメ好きなら今履いてる靴をメルカリで売って本書を買って読んでほしい。

さて、「三体」とはどんな話か。

割と色々なところで書かれているし、ネタバレにもならないと思うので書いちゃうと、テーマは<宇宙人とのファーストコンタクト>だ。

物語は文化大革命からはじまる。物語の主人公の一人<イエ>は、物理学者の父親が糾弾集会で母親の裏切りがきっかけで粛清されてるのを目の当たりにし、赤衛兵の妹は殺されてしまう。

そして舞台は文化大革命の40年後に。世界では不可解な事が多く発生している。世界中で科学者の自殺者が相次ぎ、なぞのVRゲームが、人類ではない何かの文明を伝えてくる。

宇宙人とのコミュニケーション方針をめぐり複数の団体がそれぞれの思惑で動くなか、よくそんなこと思いついたね! という展開で宇宙人からのメッセージが明らかになり物語は閉じられる。

ということで続きが気になるのです。超気になるのです。智子が居るのにどうやって人類はこの先の物語を紡いでいけるのか。この先に2本長編が待っているのだが、いったいどういうことだ。

二作目の『The Dark Forest』の邦訳出版は来年だそうで、待ち遠しくてしかたない。

ありとあらゆる人にお勧めしたい「三体」なんだけど、ひとつ難点があって、登場人物の名前が覚えられないの。登場するのがほとんどが中国人なんだけど、名前の表記が漢字なのが読みにくい。これはぜひ読み方に近いカタカナで表記してくれないかなと思う。

例えば、物語の中心人物に葉文潔という女性が居るのだが、この名前には「イエ・ウェンジエ」とルビがふられる。そしてルビは最初しか書かれない。覚えらんない。もう、最初から最後まで「イエ・ウェンジエ」でカタカナ表記をしてほしい。日本語と中国語は似た漢字を使っているから、名前を漢字表記したくなる気持ちはわかるけど、違うんだよ、日本語と中国語は違う。

他の言語で書かれた小説からの翻訳だったら、たいていカタカナになるじゃない、Раскольников に「ラスコーリニコフ」とルビふって後はよろしくなんてことはしないじゃない。なんで中国語だけ漢字表記そのまま持ってくるのかしら。お願いだからカタカナにしてほしい。

これから『三体』を読む方にアドバイスをしたいのだが、とにかく読み方なんて気にせず、自分の読みたいように読み進めてしまおう。葉文潔なら、日本語読みで『ようぶんけつ』とか読んで解決できるけど、汪淼(ワンミャオ)の淼の字なんて、日本語でもどうやって読むのかわからない。もうね、だからあたし「おうりん」と読んで進めてましたよ。リンゴか。

出版社も少しは何か思うところがあったようで、単行本には、登場人物の名前と読み方、役割の書かれたピンク色の少し大きめの紙がはさまれている。これが無かったら「ルビふってあった最初の登場シーンどのへんだっけ」なんて思いながらページを戻ったりすることになるので、このピンクの紙は超重要だ。

このピンクの紙はKindleにはついてこないそうなので、このピンクの紙の為だけに単行本を買ったほうが良いと強くすすめたい。

三体は三部作で、このあと『The Dark Forest』と『Death's End』に続く。二作目は翻訳が進んでいるそうで、2020年に出版予定。楽しみ。

なんだけど、あの終わり方でどうやって続くのか……

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