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【書評】 レシピ本の皮を被った生き方の指南書だった 『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。388冊目。

最近読んだ河相我聞さんのブログでこんな記事がありました。

16歳と23歳の息子二人が親(河相我聞)と離れて暮らし始めたときの話。河相我聞は、特に甘ったれている16歳の息子に、父親として言いたいことが山程あるのだけど、それをぐっと我慢している。

親として「こうしないとダメになるぞ」という脅しみたいな呪いみたいな言葉をかけるのも好きではない。
子供の為を思っているようにみせて「親の言う事を聞かないお前はダメになれ」と望んでいるみたいだ。

この堪え方、なんだかいいなぁと。「こうしないとダメになる」という思いからグチグチと言いたくなるのはよくわかる。

でも、親子とはいえ他人であることも確か。

私も娘二人の親として、父親として、二人を溺愛する父親として、ぐっと堪えられる人間になりたいなと。

でもね、自分の子供って、愚かな部分も自分にそっくりだから、きっと同じ失敗を繰り返すと思うのよね。それでも、自分の経験則や価値観を押し付けたくなるのをぐっと我慢したい。

父親の権威という言葉があったけど、あれは今となってはただの呪いで、今は父親だけが社会の窓口ではないし、無理に模範となる必要はない、家族のあり方が変わっているなかで、どうやって良き家族として関係を作って行けるのかを考えていきたい。なんだか参考になったなぁ、河相我聞の子育て本買ってみようかしら。

そして、このブログ読んだ時に、少し前に話題になったポテサラ事件を連鎖的に思い出しました。

高齢の男性(以下「クソジジイ」と略)が、惣菜コーナーでポテサラを手にした子連れの女性に向かって、惣菜なんて買うな「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と批判する場面を目撃したという話。

この話自体、嘘なのか本当なのかわからない。けれども、このエピソードが示す「母親とは家事を丁寧に手間をかけてするものだ」という「主婦」の呪いがまだまだ健在なのは確か。権威的であろうと勝手に奮闘するクソジジイさんにとばっちりを受けた格好だけど、女性が俯いていたというので呪いの強さを感じさせるなと。

ということでまた連鎖して思い出したのが本書のコラム。

「男性の心をつかむにはまず胃袋から」という表現は廃れずに残っていて、魚の骨のように女性たちの胸に引っかかっている。
(P148)

料理本の世界の女性達は生き生きしているように見えていたけど、本書のコラムを読むと、まだまだ女性達は呪いの中で生きているのだなと感じる。

本書は、毎日の料理は品数を絞り(10品とそのバリエーションというシンプルさ)、買い物や調理にかかる時間を効率よくすることで、毎日の料理を30分で済ませようというもの。

しかも「美味しいこと」は絶対に譲らないのがいいよね。

他のレシピ本のように、料理の羅列で終わるものではなく、著者が実践する「呪いから開放されるための生き方」の指南にもなっている。

日々の料理に生産性を持ち込むのは、小林カツ代という切り込み隊長が居たし、ライフスタイルの変革には栗原はるみが居た。しかし、本書に書かれるコラムを読むにつけ、まだまだ新しい価値観をつくっていく戦いは終わっていないのだなと実感する。

効率的な料理や出来合いの惣菜を否定するのではなく、家族と一緒に過ごす時間を大事に出来るおっさんになりたい。

レシピはどれもお気に入り! リモートワーク中心になって3時間の通勤が無くなったので、私も夕食を作る機会が増えました、とはいえ仕事上がりにあわただしく始めるので、本書のスタイルが大いに参考になります。

紹介されている料理は、素材を活かしつつ下ごしらえ重視で調理はシンプルなものが多い。その結果としてバリエーションが広がりやすいので、料理の上達にもつながるのではないかしら。

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