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メディア群雄割拠の時代を実況中継『ネットフリックス vs. ディズニー ストリーミングで変わるメディア勢力図』(大原通郎)

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。456冊目。

アメリカで伝統的メディア企業と新興企業がすさまじいダイナミズムでしのぎを削り、アジアではアメリカ資本と中国資本が覇権を争う。圧倒的なコンテンツ力で世界を席巻するアメリカ、それにに負けじと、韓国や中国のコンテンツ事業者は、最初から世界をターゲットにコンテンツを作る。

コロナをきっかけにストリーミングサービスにサブスクリプション契約で加入するユーザーは大幅に増え、その勢いでマーケットは広がり続ける。

本書を読むと、今このタイミングで地殻変動が大きく行われている事がよくわかる。真っ最中だね。

目次を見ると、世界のメディアの現状とプライオリティがよく見えてきます。一番最後の日本について書かれた章だけ特別感。ナンバリングされていない。そう、特別に取り上げないといけないくらい、メディアの世界に影響を与えていない。

第Ⅰ部 アメリカの新旧メディア戦争
 第1章 躍動するネットフリックス
 第2章 事業転換を図るディズニー
 第3章 岐路に立つメディアコングロマリットたち
 第4章 既存メディアを飲み込むGAFA
第Ⅱ部 新型コロナパンデミックによる新局面
 第5章 メディア界を直撃した新型コロナ
 第6章 ローカルテレビニュースの復活
 第7章 スポーツストリーミングをめぐる攻防
第Ⅲ部 これからのメディア産業
 第8章 ストリーミングで変わるメディアビジネス
 第9章 アジアに押し寄せるストリーミングの波
 最終章 どうする日本?

ネットフリックスとディズニーを中心にアメリカの新旧メディアの現状を整理した第I部は、広く浅くではあるが、とても網羅的に整理されていて全体をざっくり知るのに必要十分な情報量。断片的な知識や情報をつないでくれるのでとても助かる。

第II部はコロナパンデミックと題しているのだけど、ニュース報道の整理といった内容で新鮮味は無い。新鮮味は無いけど、現在進行形の問題を再確認することには大きな意味があるのは確か。スポーツ特化メディアなどの話は第I部でまとめて整理してもらったほうが良かったと感じる。

第III部で話題はアメリカ中心からアジア、そして日本へと繋がるのだけど、コロナが明けるのをじっと待っているように見える日本ローカルの伝統的メディア企業に未来を感じることが出来ず残念な気持ちになる。おそらく個々の企業ではそれぞれ危機意識をもって頑張っているのだろうけど、最初から世界を見ているアメリカや中国の企業が持つダイナミズムは当然ながら無いし、コンテンツ業界についても、韓国をはじめとした他国の事情と比べるとさみしい限り。見方によっては、グローバル企業のパワーとマネーにのみこまれつつあるといった感じも。

本書、世界の状況が大変よく整理されている。そして、それによって日本の状況の寒さもまたしっかりと浮かび上がってしまっている。群雄割拠が始まる世界を脇目に、コンテンツでもサービスでも存在感も規模感も出せていない日本企業は飲み込まれるのを待つばかりなのか。たったの1億人しか相手にしていない日本の事業者は大丈夫なのだろうか。日本の放送業界に、コンテンツ業界に光はあるのか。本書を読んでしんみりしてしまった。

ということで、とても勉強になりました。メディアに興味のあるかたにはおすすめです。

今にフォーカスをした内容なので、本書の賞味期限は残念ながら短い。おそらく長くて来年までだ。なので、今すぐに購入し、今すぐに読むと良いです。あと、この手の本は索引がほしいなと思う。


ネットフリックスをさらに深掘りしたい方は下記2冊が超おすすめ。


そして、もう一方のディズニーについては、なんつったってこれ。

題名がアレなので敬遠しそうですが、中身は素晴らしい。


日本には素晴らしいコンテンツが有るというのはその通りだと思うのですが、現場”だけ”が必死になって頑張っている感じがありますよね。でも、現場だけの努力では絶対に世界では勝てないのは本書を読めば明らかだとわかります。さてどうなることやら。

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