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理系女子、幽霊から秘密をもらう🤔🗝️新米研究者のゴーストバスター奮闘記【決意】

幽霊旅館の夜

古びた温泉旅館「月見荘」。そこは、どこか寂れた雰囲気が漂う、山奥にひっそりと佇む一軒宿だった。

「うわぁ、なんだか薄気味悪いね…」

麻衣子が呟く。

「そう?私は、こういう歴史を感じる建物は好きだけど」

私は、興味津々に旅館の中へと足を踏み入れた。

前回の幽霊屋敷での体験以来、私は、幽霊の存在を科学的に解明することにますますのめり込んでいた。そして、この「月見荘」にも、何かしらの心霊現象が報告されていることを知り、麻衣子を誘って調査に訪れたのだ。

チェックインを済ませ、案内された部屋は、畳敷きの和室で、障子戸の向こうには、月明かりに照らされた庭園が広がっていた。一見、風情のある落ち着いた空間だったが、どこか不穏な空気が漂っているように感じられた。

「理亜琉、なんか寒くない?」

麻衣子が身を縮める。

「いや、ぜんぜん。」
「ほんっとにあんたって、愛想のない!」

私は、いつも通り、感情の機微には鈍感だった。それよりも、私の測定器は、確かに異常な値を示していた。部屋の温度は、明らかに周囲よりも低く、微弱な電磁波も検出されていた。

「これは…もしかして…」

私は、胸の高鳴りを抑えきれなかった。この旅館には、確かに幽霊がいる。

夜が更け、私は、麻衣子を部屋に残し、一人で調査を開始した。廊下を歩いていると、突然、背後から誰かの気配を感じた。振り返ると、そこには、白い着物を着た女の幽霊が立っていた。

「うぉあ!」

実に女の子らしい?!声を漏らしながら、思わず後ずさる私。しかし、幽霊は、私を襲う様子もなく、ただ悲しげな表情でこちらを見つめていた。

私は、幽霊に話しかけた。おそらくは目をキラキラさせながら!

「あなたは、誰?」

すると、幽霊は、か細い声で答えた。

「私は…この旅館の…元女将…」

聞けば、この元女将は、生前、この旅館を愛し、客をもてなすことに喜びを感じていた。しかし、ある日、火事で命を落とし、その魂は、この旅館に囚われてしまったのだ。

私は、元女将の話を聞きながら、彼女の深い悲しみと孤独を感じ取った。それは、かつて私がおそらくはこの世界ではないどこかを彷徨っていた時の感情と、あまりにも似ていた。

私は、元女将に、成仏する方法を提案した。それは、彼女の世界子としての時間を、この旅館の「物語」へと変換し引き渡すことだった。彼女が抱えている秘密は、地上にあってはならないものだった。

「そう、だからあなたは…。私がもらってあげるね?」

元女将は、この秘密を抱えていたせいで、決して結びつくことができなかった地上に帰れることを喜んだ。

彼女は涙を流し、感謝の言葉すら述べた。そして、私が彼女の手に触れると、彼女の身体から、柔らかな光が放たれ始めた。光は、最初、ぽぉーっとあたり全体を照らし出したあと、私が触れている庭の一本の木に吸い込まれた。

光が消えたとき、元女将の姿は、もうそこにはなかった。

「理亜琉!大丈夫?」

麻衣子の声が聞こえ、私は我に返った。

「何?」
「何って、あんたねぇ? 心配して見に来たに決まってるでしょ?」

麻衣子がふくれっ面をする。うん、かわいい。
しかし、心の中では、ある確信が芽生えていた。私は、幽霊と共感し、彼らの願いを叶える力を持っている。それは、私の過去の経験から生まれた能力なのかもしれない。

でも、そもそも私には明確な記憶なんてないのだ。同時に私は、この能力を他人に知られてはいけないことも理解していた。それは、私を危険な存在へと変えてしまう可能性があるからだ。

「ねえ、理亜琉、さっきの光は何だったの?」

麻衣子がコテンと首を倒して尋ねる。くぅ、なんてかわいら、じゃなくて…見ていたのか、不覚。

「ん、月の光、池に映った。それしかない。」

私は、とっさに嘘をついた。麻衣子は、しばらく私の顔をじーっと見ていたが、それ以上は何も聞かなかった。でも、一言だけ吐き捨てるように言った。

「…それだけの情熱、人にも向ければいいのに。」

え? もしかしてバレてるの? ま、いいか、麻衣子だし。かわいいし。

と同時に心の中で誓っていた。

私は、この能力を人知れず使い、幽霊たちを救い続けよう。たとえ、それが私にとって危険な道だとしても、それだけが私の物語を取り戻す方法になるはずなのだから。

(つづく)

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