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【リーダーの心得1】「中庸」の九經から学ぶ①〜組織運営の要諦。まずは、自分自身を修めよう

中国の古典「中庸」には、現代にも通じる組織運営の要諦が書かれています。これは、「九經(きゅうけい)」と言われ、9つの組織運営のための原理原則のことです。
この9つの原理原則は、現代においても、どの組織(例えば家庭からNPO、官公庁、そして企業に至るまで)にも通用するものばかりです。それでは、早速、九經の第1番目を見ていきましょう。
九經の第1番目は、

「曰(いわ)く、身を脩(おさ)むるなり」

「中庸」

です。これは、まずリーダーが自分自身を修めることを意味します。

ここで「中庸」とは? 「中庸」(ちゅうよう)は、儒教における四書の一つであり、その中心的概念の一つです。「中庸」という言葉は、『論語』の中で孔子が「中庸の徳たるや、それ至れるかな」と賛嘆したことが文献初出とされています。中庸は「偏らないこと」「常に変わらないこと」を意味し、過不足なく調和が取れている状態を指します。

しかし、リーダーは、組織を運営していくため、なぜ身を修めなければならないのか、またどのように修めるべきかがわからないかもしれません。
九經の素晴らしい点は、「身を修めなさい」とだけ「中庸」に書かれているわけでなく、具体的な理由が明示されていることです。

まず、なぜ身を修めなければならないのか。「中庸」には、

「身を脩(おさ)むれば、即(すなわ)ち道立つ」

「中庸」

とあります。つまり、身を修めることによって「道が立つ」のです。「道が立つ」とは、「道理が立つ」ことを意味します。道理とは、私が考えるに、次のことをリーダーが実践することだと思います。

1. ビジョンと方向性:

道徳的に正しい目標を示し、チームを導く。

2. 影響力と説得力:

他者に良い影響を与え、説得する能力。

3. 決断力:

「何が正しいか」を基に、迅速かつ正確な決断を下す。

4. コミュニケーション:

正直で他人を思いやる接し方。

5. 共感力とチームビルディング:

メンバーの感情やニーズを理解し、協力関係を築く。

6. 模範となる行動:

自らが模範となる行動を示す。

7. メンバーの育成:

メンバーの成長を促す教育とサポート。

特に、6の模範となる行動、つまりリーダーは、部下の手本になるという意識を持ち、常に仕事に臨む姿勢が必要です。

さらに「中庸」では、九經の「身を脩むるなり」について、具体的な実践法も書かれています。それは、

「斉明(さいめい)し盛服(せいふく)して、禮(れい)に非(あら)ざれば動かざる」

「中庸」

つまり、祭礼に行くときは身を清め、礼服に身を収め、しっかり礼をわきまえなさいと書かれています。これは、儀式や重要な場面において、適切な準備と礼儀を重んじることを意味します。
このことをビジネスの世界に当てはめると、以下のようなことが考えられます。

1. 重要なプレゼンテーションや会議の準備:

重要なプレゼンテーションや会議の前に、徹底的な準備を行い、適切な服装で臨むこと。

2. 重要なビジネスミーティングの進行:

重要なビジネスミーティングでは、議題を明確にし、参加者全員が礼儀正しく意見を述べること。

まず、服装については、今夏のような暑い時期、私たちの職場環境もクールビズが普通になってきました。会社によっては、私服が奨励されているところもあります。しかし、特にビジネスの重要な場面では、リーダーが服装を正し、礼をわきまえ、みんなの手本になるように努めることが何より肝要なのです。

また、先日(2024.7.28)に開催されたパリオリンピック柔道女子52キロ級の2回戦で日本の阿部詩選手を破り、金メダルに輝いたウズベキスタンのディヨラ・ケルディヨロワ選手の態度についてです。ケルディヨロワ選手の勝利の瞬間、彼女は表情一つ変えず、嬉しさを表に出さず、静かに前を向いて立ち尽くしました。彼女の心の中には、阿部選手への感謝と尊敬が溢れていたのです。私も日本人として阿部選手が敗れてしまったのは残念でしたが、相手を尊重し、敬意を払う。まさに、ケルディヨロワ選手の態度は、礼をわきまえ、身を修めていると感じました。

いかがでしょう。
まずリーダーが礼をわきまえ、尊厳を保つことにより、周りの人たちが潜在能力を発揮するようになり、誠実と信頼を勝ち得た組織になっていくことがイメージできてくるのではないのでしょうか。
そこから、健全な組織運営はスタートしていくのです。

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