噂の巨大地下神殿で非日常体験。防災機能もケタ違いだった!
最近は、外国人観光客の受け入れ再開のニュースや、屋外でのマスクの着用緩和のニュースなど、少しずつですが明るい兆しが見えてきましたね!
それを受けて、おでかけしたい気持ちになっている方も多いのではないでしょうか。
ここしばらくは、近場でのショッピングやランチばかりだった方も、そろそろいつもとはちょっと違うおでかけがしたいですよね。
とはいえ、まだ海外へ行ったり、人の多い遠方の観光地へ行くのは、はばかられるかもしれません。
そんな方に向けて今回は、「地下神殿」ツアーをおすすめします!
記事の後半では噂の「地下神殿」の役割や仕組みなどについても解説しますので、是非最後まで読んでみてくださいね!
いつもと違うお出かけなら、「地下神殿」ツアーはいかが?
日本のとある場所に、まるで地下神殿のような巨大施設があることを、あなたはご存知でしょうか。
この「地下神殿」の正体は、埼玉県春日部市にある「首都圏外郭放水路(しゅとけんがいかくほうすいろ)」という防災施設なんです。
テレビや旅行誌などにも取りあげられているため、関東に住んでいる方は耳にしたことがあるかもしれません。
映画のロケ地にも!フォトジェニックな巨大空間
この巨大施設には、大きくて無機質な柱が広い空間に無数に立ち並んでいます。その光景は、とにかく圧巻です。
柱、とは言いましたが、その土台部分だけで既に大人の背丈ほどあり、奥行きのある形をしているので、近くで見ると壁と言っても差し支えのない重厚感です。
その圧倒的な非日常空間っぷりは、クリエイターをも刺激するようで、映画『翔んで埼玉』や、『仮面ライダー』(たびたび使われているようなので、ファンは見覚えがあるかも)のロケ地、さらにはアーティストのCDジャケット撮影などにも使われているそう。
空間自体が雰囲気タップリなので、写真の腕に自信がなくても雰囲気のある写真が撮れますよ!
要予約!「地下神殿」探検に行ってみよう
「地下神殿」こと首都圏外郭放水路では現在、そのスケールを体感しながら知識も楽しく学べる、全4コースの地下見学会を行っています。
参加は完全予約制で、コースによって料金や所要時間が異なります。人気の枠はすぐ埋まってしまうこともあるので、希望の日の1ヶ月前に予約枠が解放されたらすぐチェックするのが安心です。
●ここからは、気になる地下の様子をちょっとだけご紹介します!
そもそも「地下神殿」首都圏外郭放水路ってなに?
ここまでは、まるで「地下神殿」のような光景が楽しめる首都圏外郭放水路の見どころについてご紹介してきました。
ところで、この巨大で独特な形をした施設はなぜつくられ、どのような仕組みで災害を防ぐのでしょうか。あらかじめ背景を知っておくと、「地下神殿」ツアーも、より一層興味深いものになるはずです!
「地下神殿」は、防災施設!
最初にも少しお話ししたように、「地下神殿」こと首都圏外郭放水路は、防災施設です。大雨による洪水から、まちを守る役目を果たします。
江戸川の西側、荒川との間には、いくつかの中小河川が流れる「中川・綾瀬川流域」と呼ばれるエリアがあります。
このエリアは江戸川、荒川、さらには利根川といった大河川に囲まれているうえ、土地が低く水がたまりやすいお皿のような地形となっています。
また、低くて平坦な土地であるため川の水も流れにくく、一度大雨が降ると川の水位が高い状態が続くので、昔から何度も洪水に悩まされてきました。
この地形による浸水被害からまちを守る方法を考え、建設されたのが首都圏外郭放水路です。
首都圏外郭放水路のしくみ
首都圏外郭放水路は、
・地底50m、全長約6.3kmにおよぶ地下河川である「トンネル」
・そこに川の水を取り込む「流入施設」と「立坑」
・各河川から第1立坑までたどり着いた水の勢いを弱めるプール「調圧水槽」(通称「地下神殿」)
・その水をポンプで江戸川に排出する「排水機場」
から成っています。
大雨のときは、春日部市を流れる中小河川の水を第2~5立坑に取り込み、地下トンネルで江戸川に運びます。
首都圏外郭放水路は、流せる量が少ない中小河川の水があふれる前に、川幅に余裕がある江戸川に流すことで、安全に洪水を防ぐことができるしくみになっています。
これによって、周辺の地域の浸水被害は大きく減りました。
令和元年、関東を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の大雨の際も、「大洪水を防いだ」と言われていたのは記憶に新しいのではないでしょうか。
首都圏外郭放水路は、今も毎年平均7回(※)ほど稼働して、人知れず私たちの生活を守ってくれています。
(※国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所「首都圏外郭放水路の治水効果」より)
巨大な「地下神殿」、どうやってつくった?
「こんなに大きな施設を、市民が暮らす地面の下にどうやってつくったの?」
そんな疑問がわいてきたあなたは、すでに「地下神殿」ファンかもしれません!ここからは、その疑問を解決すべく、少しだけ建設の世界をのぞいてみましょう。
「地下神殿」のつくり方
「地下神殿」こと首都圏外郭放水路は、日本のみならず、世界でも最大級の地下河川です。そんな難易度の高い工事には、地下の巨大空間を安全に掘るための最先端技術が駆使されました。
掘り方は主に、「立坑」と「調圧水槽」(地下神殿)のタテに掘っていく掘り方と、「トンネル」のヨコに掘っていく掘り方で、大きく異なります。
●「立坑」と「調圧水槽」のつくり方
タテに掘っていく「立坑」と「調圧水槽」の工事では、地中連続壁という、地面の中に頑丈で巨大な壁を築く技術が使われました。
地中連続壁は、土を掘ったときに側面が崩れてこないよう、厚みのある鉄筋コンクリートの壁をあらかじめ地中につくっておく工法です。
地中に壁なんて、なんだか魔法系のアニメに出てきそうな話ですね……!
地中連続壁ができたら、その中をくり抜くように掘っていき、コンクリートで床をつくります。
「立坑」では、地中連続壁の内側に、さらに分厚い壁をつくることで、土や水の高い圧力にも耐えられるようになっています。
「調圧水槽」では、「地下神殿」のシンボルともいえる大きな柱も、現地で少しずつ立ち上げていったそうです。
もはやピラミッド建設にも匹敵するロマンを感じてしまいます!
●「トンネル」のつくり方
地下深くを横につなぐ「トンネル」は、シールドマシンという機械を使って掘られました。シールドマシンは筒のような形をした大きな機械で、先端の円盤状のカッターを回転させることで、少しずつ地中を掘りながら進んでいきます。
ところがそのまま掘り進めてしまうと、掘った部分が崩れてきてしまいますよね。
そこでそのすぐ後ろ、シールドマシンの内部では、「セグメント」というブロック状の部品を自動的に組み合わせて、頑丈なトンネルの壁をつくっていきます。なお、ここでは新しく開発されたセグメントが使われました。
つまりシールドマシンを使って、地面を掘ることと、トンネルの建設を、同時に行ったのです!
首都圏外郭放水路の地上の広場には、実際に使われたシールドマシンの先端のカッターが展示されています。
このたった一枚の円盤が、最前線であの巨大防災施設を掘っていたと思うと、思わず手を合わせたくなります。
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地下神殿で、普段のおでかけと一味違う体験を!
今回は巷で話題の「地下神殿」こと、首都圏外郭放水路について詳しくご紹介しました。
首都圏外郭放水路は楽しいだけでなく、大雨からまちを守るしくみや、インフラを支える仕事についても学べる、奥の深い施設でした。
写真映えを狙いに行くもよし、親子で楽しく社会見学もよし、これからの時期は涼みに行くもよし。
この夏は「地下神殿」探検で、非日常なおでかけを楽しんでみませんか?
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