人生を変えるような“アニメーション”を観たい
私は、「アニメ」を見るとき、キャラ萌えとかキャラ推しをほとんどしていないと思います。
萌えとか推しとは、心理学的には依存だろうと思います。
そして、それが今のアニメ鑑賞の大きなニーズであって、ある意味「多数の人から支持される推しキャラが出せたならその『アニメ』は成功」だと思っています。
それが悪いとは思いません。ただ萌えとか推しって、本当の意味でのキャラへの「共感」とは違うと思っています。
本当の共感とは、脚本、ストーリー構成、アニメーションとしての演技、様々な演出、それらが総合して生み出されるものだと私は思っていて、それを楽しみにしています。
極論ではなく現実として、もし話自体の意味が曖昧であっても、アニメーションとして優れていれば、人生を変える作品にだってなり得ます。
「映像研には手を出すな!」でアニメーターを目指す水崎さんが語るロケットの話って、有名な「王立宇宙軍」のロケット発射シーンから来ているのかな、と勝手に思っています。
興行的には大失敗作でしたが、これを観て、ガンダムの作画監督だった安彦良和さんはショックを受け、アニメ製作から離れてしまい、戻ってくるのに数十年を要しました。
また、堀江貴文さんが宇宙開発事業に出資しているのは、この映画を観たことがきっかけと聞いています。
古い映画ですし、とても難しいメッセージを受け取るには、当時の時代背景と、これを作ったスタッフの年齢等や経緯を考慮する必要があります。
当時、かなり若いほぼアマチュアのスタッフだけで作られた作品です。
あえて書きませんけれど、いまやベテランの有名スタッフが名を連ねています。
この作品は、ある意味、その当時の若い人たちによる、プロのアニメ製作者たちへの愛と反逆だったと私は思っています。
安彦氏もそうですが、宮崎氏、高畑氏は共産主義にかぶれていて、ある意味アニメは「良い子たちへのメッセージ」の部分がありました。
富野氏は共産主義者ではないものの、作品には色濃く反戦への思想があります。
でも、現実はそうではありませんでした。日本の経済繁栄とは真逆に、世界は理想とは程遠く、戦争を繰り返していました。
そのアンビバレンツに対する、子ども達からのメッセージ的な映画だったと私は思うのです。
つまり、
「私たちはあなた達の作品が好きだけれど、あなた達が語る世界と現実は程遠いじゃないか。私たちは、この無情で無常な現実を生きていくよ」
ということなのではないか、と思うのです。
そりゃあ、そんなことを言われたら安彦氏が落ち込むのも当然です。私は、安彦氏は大変繊細な方だろうと思っていますので。
安彦氏は作画としてはものすごいスキルの持ち主でしたが、監督としてはパッとしませんでした。期待されて何度もチャンスをもらえましたが、結局ヒット作と呼べる監督作品がありません。
「クラッシャージョウ」「巨神ゴーグ」「アリオン」「ヴィナス戦記」…どれも絵が綺麗だし、面白くないわけではないのですが、インパクトに欠けるというか。
そんな時、若い人からこんな自分以上に大失敗で熱い作品を見せられたら殴られたような気持ちがしたのではないでしょうか。
でも、だから、同世代には響いたのです。
当時観て、私は意味がわかっていなかったと思います。
でも、確かに、この「アニメーション」で人生が変わったのです。
そして、今もそんな作品を待ち望んでいます。
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