KZ ZS12 Pro XはZS6以来久々のKZ ZSシリーズ全金属イヤホン SW付き #PR SWなし #自腹 完全版レビュー
KZ ZS12 Pro X というイヤホンについて
KZ ZS12 Pro X が到着です。
KZのZSシリーズといえば、初代ZSTでKZは当時高価だったハイブリットイヤホン(DD+BA)を超激安の価格で販売し、一躍KZは有名になりました。
そのKZから5BA+1DDでKZ久しぶりのハイブリッド全金属(総金属ともいう)イヤホンが出ました。
それが ZS12 Pro X です。
なぜZS12がないのにいきなりPro Xなのか。
それはKZから「こいつはZS10ProXのアッパーバージョン!」という強烈なメッセージでしょう。
実際に、音的には「ZS10」じゃなくて「ZS10 Pro X」系の音です。
私も長いこと聴きこんで比べたわけじゃないのですが、ZS10 Pro 2ではなく Pro Xの方向です。
持ってない人に説明するようにいうと、Pro X は2022年以降の「ZAX」みたいなKZのまとめ方、Pro2は2018年ごろのZS6みたいなまとめ方、です。説明できてない。
…つまり、雑味のある中華イヤホンらしい高音域をもっているチューニング、中音域はやや凹み、みたいなイヤホンが「Pro2」で、低音はKZだけど「Monndrop」みたいな適切さがある音も取り入れていったのが「Pro X」だと思う、という事です。やっぱり説明できてないぞ。
さて、KZ初期から中期にかけての傑作イヤホンであったあのZS6から、久しくZSシリーズでは全金属ハイブリッドはでていませんでした。特に2022年以降の現代的なチューニングではKZはずっと全金属を出していませんでした。
1DDのZVXとD-fiはあるし、BAには廃盤のBA10などがあるのですが、KZはハイブリッドイヤホン、つまりDD+BAの全金属を最近出していなかったのです。意外でしょ。
金属筐体による高音域にかけてのキレの良さ、DDの反動を制した重みとキレのある低音を好みとしている私なので、そういう意味で、全金属製イヤホン(総金属製イヤホンとも言う)好きの私の期待が大きいのがZS12 Pro X です!
私はDDや振動板自体が動く素材の場合、制動のため重たい金属筐体が良い音を出すには正義なのだ、と思っています。
ZS12 Pro Xにはスイッチのないノーマルバージョンと4つのスイッチがあり低音の量の調整が出来るブロフェッショナルバージョンがありますが、価格差があるため私はノーマルバージョンを選択しました。
価格もありますが、KZの決め打ちした音が知りたかったのと、スイッチの分の接点が増えるのを嫌ったためです。
しかし、2024年7月4日。自腹でZS12 Pro Xを購入レビュー後、EasyEarphones(販売店)さんから、「スイッチ付きも試してみない?」というオファーをいただき、スイッチ付き版もレビューできることになりました。
スイッチ付きの感想は普通の感想の後に書いてあります。
KZ ZS12 Pro X外観など
KZ ZS12 Pro X 音質について
イヤーピースをKBEAR 07(これが私がとりあえずで使いがちなリファレンス)でとりあえず聴いてみると、低音に比較して高音域に偏重している感じがありました。
フォームタイプイヤピがついてるので、予感していたのですが高音域が強い。
低音はKZとしては適正な感じでドンは少ない。エージング必要か。これはもしかしてスイッチ付きの方を買った方が正解だったかなあ。KZとしてはかなりスッキリした音になっている感じだな、CastorとかRhapsody、Trioの感じでは無いな、MargaやEDX LiteとかLibraとかの系譜で、それを全金属にした感じだな。ZVXでももっと低音が強いはずだな…と。
そう思いながらイヤーピースをこれに変更してみたら、低音域が増えた。
どうもいつものイヤーピースでは密閉が確保出来ていなかった模様。
なので、サイズをいつものサイズで試して微妙な時は、ワンサイズ下げてみるのもいいかもしれない。
その上で聴くと、低音はいつものKZなみにあるけどややタイトで、高音域はさらっとしており、中音域の凹み感も少ないし、これは良い(=好きな)ものだ、と思った。
イヤーピースの密閉が取れたあとでもやはりLibra、MergaとかEDX Liteか、ZXVが好きな人のアッパーバージョンという感じはあると思いました。
KZ Castorや、CCA Rhapsodyの方向ではないすっきり感のある、適切系な音。
音に乗ってくる質感には、高音域のせいか、やや冷たいと感じる感じもある(寒色、暖色とはまた別に)。
そして、KZだけどちゃんと全金属してる音!!
こういう音だよ!俺が求めてたのはこれだよ!
という感じはありました。
ただ、私はTRNを普段好んで聴いている人なので、高音域が強い方が好みになりがちなのです。
そこは割り引いてみてもらった方がいいかもしれないです。
高音域の響き方は亜鉛合金系のそれで、チタンやアルミ、真鍮のような響き方とは違う、と思いました。筐体は、かなりずっしりとした重さを感じます。
ND X12が好きな人はこれも好きだと思うなー。…でも、ND X12とは周波数特性が違っていて、X12のほうが高音域は強い気がするし、個人的には高音域はZS12ProXのが良く出来てるんじゃないかな、と思います。
音から感じられる印象はかなり似たところもあるので、ND X12を手に入れたばかりの人に手放しでこれも、とは言い難いかも。
…などと考えながら、公式のZS12 Pro Xの構造図を見てみると、
この構成を見るに、ZS12 Pro Xは超高音域はステムの「30095」に任せて「31736」というあまり馴染みないBAをデュアル搭載し、中音域をより厚くしてあるのかな、と思いました。
KZ系と言うと中音域の厚みにいつも課題があった印象があるのですが、Rhapsodyのように曇りや濁ったような印象の中音域、凹みがある感じでは無いので、普通に良い音(適正的なF特性で響きもありすぎず無さすぎすで)になっているかなと思いました。
もちろんMoondrop系のようにもっと制御された、滑らかなF特グラフ上のカーブを高音域を持つイヤホンもあり、それらに比べると高音域には大味さはあります。その辺はきちんとKZなのですが、かつてのKZにくらべて大味過ぎると感じることは無いです。
強いて言えばやはり高音域が強いかもしれず、リスニングする人によっては、調整可能版で低音を強くしてバランスをとりたいかもしれないですかね。
TRI i3 Mk3や、NICEHCK Himalayaあたりを体験したあとだとこの辺がゴールにはならないと思うけども、ややマニア的な人でも大概この辺がゴール、つまりもうこの辺で十分だ、という人も多いんじゃないかなあ、と感じます。
伸びやかな高音域、高音域に繋がる透き通った感じの中音域、そしてKZらしさも残っている低音。金属筐体の音場……これらが好きな人に推し推せる、と思いました。
今のKZが全金属のZSシリーズ作ったらこうなるんだな、という意味で、相応に良いものでした。
似た味わいの対抗馬としてND X12があると思いますが、ND X12はちょっと高音域は刺激的ですがこっちはそうでも無く、少しお行儀いい音です。
また個人的には響き方はTRNのVX Proの味の方が好きだし、割と似ている感じもするのですが、低音の質感はDDの違いによるものか、筐体設計によるものか、VX Proとは大きく違っていて、VX Proのほうがスピード感のある低音で、かつ響きます。
KZなりの適正さ、この辺がKZの考える適正な音だと感じ、KZの音の進化をすごく感じますね。
ZSシリーズはKZの看板商品なのですから、これが本筋でしょう。色々なラインがありますが、次はPRシリーズで全金属やってくれませんかね?
また、付属のウレタンイヤーピースで聴いてみてほしいというKZの圧をPRシリーズに引き続き感じたので、それで聴いてみると、強めの高音域がマイルドになり、響きは金属筐体のためかよく、低音はきちんと強く、と、もしかしてZS12 Pro Xはウレタンイヤーピースにきちんと最適化されたモデルかもしれません。
しかし、ウレタンにすると超高音域が詰まる感じがするので私はシリコンイヤーピースで高音域を落としてくれる系イヤーピース使ってみようかなと。 でもウレタンイヤピでも音がいいです。
TRN TIPSとかでTRNっぽい音にしてみたり、Spinfitあたりもいいかも、と思い浮かぶな…
とイヤホン遊びがとまらないおじさんなのでした。
合うイヤピが見つかった場合の音
合うイヤーピースが見つかると、ZS12 Pro Xは覚醒を始めます。
そうです、KZらしい…というにはちょっと上品なのですが、ソリッドで、近い音で密閉された空間感を感じるノリで、サブベースがヴヴヴヴン!そしてズン!と近寄ってくる音が味わえます。
それでいて中高音域は凹みも感じず、きれいに出ます。
KZ Castorなどとは違った意味でマッシブ、ともいえるかもしれません。
元気な音でありながら適切な音でもある。
エレクトロなダンスミュージックなどでは特に気持ちよく聴こえると思いますし、生楽器も行けます。
KZ ZS12 Pro X スイッチ付きバージョンの変化
(2024年7月8日追記)という訳でスイッチ付きのZS12 Pro Xがやってきました。
チューニングスイッチはまさに沼
結論から言うと、ZS12 Pro Xはスイッチ付きを選ぶ意味、かなりあります。
周波数特性の変化は下に再掲載するグラフでも確認してもらうことが出来ますが、スイッチ1-2-3は低音のレベル調整で、スイッチ4は高音を減らす効果があるようです。
このレビューでは、スイッチのオンが1、オフが0でスイッチを表現します。
おすすめのチューニングの仕方
ZS12 Pro Xのスイッチは初期状態では1111になっているので、まずそれと0000にして聴いてみましょう。
0000がスイッチなし版のチューニングです。
0000を聴くと「えっ」となる人は多いと思います。
え?KZってこんなイヤホンだっけ?…と。
それでスイッチをいじる前にお手持ちのイヤーピースをサイズ違いも含め、色々と試してみる事をおすすめします。
それでやっとZS12 Pro Xの音が覚醒します。
次に0001(高音だけ減らす)、1110(低音と高音がどっちも最強)の音を聞いてみて下さい。
そして必要に応じて左の(XXXY)の(XXX)の部分をONにしたりOFFにしたりして、低音を減らしていくのがオススメです。
最後の(Y)部分、高音域減らす、の変化は微々たるものなのですが、不思議なもので、ドンシャリのシャリが強いのが好きな私の耳なので1110にしてみると、それはそれでスネアなどが刺激的になります。一番右のスイッチは高音の調整なんだ、とわかればOKです。
1111は実によく出来たチューニングで、元気よくKZ臭いサブベースのブリッとした音の方がいい、低音を楽しみたい時は1111がオススメでしょう。
もっともKZくさい低音が元気良くなる設定の1111(全スイッチON)の状態では、やや黒Castorのような、少しモヤっとした音の感じもしてきます。
ただ、黒Castorのと違って筐体が金属だからなのか、そこまでボワリとは締まらない音はしてません。
さらに、それでも人によっては低音が足らない! と感じる場合もあると思いますが、そういう人は黒Castorや、他の低音ホンがオススメです。流石に黒Castor程には低音強くありません。
付属イヤーピースとの相性が良くない
付属してくるイヤーピースは古くからKZのイヤホンを触っている人にはおなじみの黒フジツボが付属してくるのですが、このイヤーピースが合ってないです。
KZ Libraについてきた白いフジツボイヤーピースでは結構合うのですが、イヤーピースを筒に装着する時深くまでグリグリとして筒の根元の方までイヤピの軸を下げてやらないと私の耳には上手く位置決めできませんでした。
そこで、別のイヤーピースを使ったり、KZ Libraについていたクリアのフジツボイヤーピースを使ってみたり、スイッチをカチカチしたりしてみました。ケーブルも付属よりいいかもしれないと思って変えてみたりしました。
こういうわけで、ZS12 Pro Xはイヤーピースを変更しないとどうにも微妙なので、参考になるかわからないのですが…
スイッチ付き版の結果
私は最終的にはfinal Eタイプイヤーピースのクリア版で音決めして、スイッチは1101になりました。
まず最初の印象で高音が強いという印象があったのでスイッチ4をオンにし(0001)高音域の量を減らしてみると、フジツボイヤピではどうにも物足らない印象だったのですが、イヤーピースをfinal Eタイプに変えたところではこれがちょうどいい塩梅に感じます。
このスイッチ、イヤピ交換、の工程はまたTRNのConchとは違った意味でのチューニング沼です。
さらにケーブルでの変化があると、スイッチを変えたくなり、まさに泥沼。イヤーピースを変更してスイッチを変えてみたくなりまた沼。組み合わせ地獄へようこそ…プロの皆さん。とでも言いたくなります。
もちろん、もっと雑にその時の気分でスイッチをカチカチしてもいいかもしれないです。それでも楽しめると思います。
スイッチは順番にすべて切り替えて私も試して見たのですが、沼であっても、それでも、使うイヤーピースによっても低音の量は変わってきますし、自分にとって装着感があっているイヤーピースや気に入った音の質感があるケーブルの時に音質を調整出来るというだけで、このスイッチあり版が有難いでしょう。
注意点として再度イヤーピースの変更を行った時の注意ですが、ZS12 Pro Xはスイッチ付き版でも、ウレタンイヤーピースでも最適な音が出せるイヤホンであるのは間違いないと思います。むしろ調整が効く分、ウレタンイヤピ使いたい人はスイッチ付き版のほうがいいかもしれません。
ないしは普通のイヤーピースでは一段階小さいサイズか、軸の短いものに変更すると良い結果が得られます。
理由のひとつはステムの返しが刻まれている部分が筒の先端付近にある位置関係だから、だと思います。
結論
ZS12 Pro Xは十全に良い音のイヤホンですがやや冷たさやタイトさを感じる方もいるでしょう。中高音域に美音系の美しさもある程度ありつつ、もちろん明瞭感はハイブリッドらしく高く、全音域にKZらしいマッチョでマッシブな感じも少しあるイヤホンです。
重たい全金属ならではの腰の低い音とタイトでありつつ攻めた勢いのある、KZらしさのある低音も、イヤーピースを調整すればきちんと出てきます。
メリハリの効いた、明瞭度の高いサウンドで、若い人に特に好まれる気がします。
8000円弱の値段でもスイッチ付き版を買った方が楽しめるとは思いますが、スイッチなし版が1000円程度の価格差であることを考えると、低音が強いKZらしい音に未練のない方はスイッチなし版で良いと思います。
ただし、スイッチ1111のKZ ZS12 Pro Xはやはり特筆すべき楽しさもあり、マニアであれば、接点をとても気にする方意外は、スイッチ付き版を買う事を勧めます。
いくら音が良くなってもKZらしさはきちんとあり、悪いく言えば駄菓子的というかジャンク的な面白さもありますが、それだけのイヤホンではないと思います。
もっともっとジャンクに、駄菓子的に、美音とかに未練のない方、ラーメン二郎にはぜひマヨネーズをかけたい、的な思想をお持ちという方はKZでも「Symphony」という製品がありますので、伝え聞くところによればそっちの方が明らかにKZらしさ、という点では上でしょう(Symphonyは未体験ですが誰の口からもやりすぎ感が伝わってきます)。
KZでありながらも、やはりやりすぎは困る、そういう方はZS12 Pro Xがおすすめです。またZASではなくZAXの方向性でありたい、できれば全金属KZが欲しかった、そういう人も試してみてください。
KZでありつつも美音や適正度の高さを求めている方はスイッチなし版で大丈夫ですが、だいたいの人はスイッチあるのを買っとけばよかったのでは、という気分になるのでなるべくはスイッチ付き調整可能版買った方が良いです。
KZ ZS12 Pro X のお買い求め
日本のAmazonで、標準版は7699円、スイッチ付き(調整可能)版が8699円で販売されています。
スイッチ付き版
そのうちアリエクスプレスでも、さらに安く購入可能になるかもしれません。
WooEasy Earphones Store Aliexpress店
ZS 12 Pro X商品ページ
国内ならAmazonからの購入がおすすめです。
ということで、完全版でした!
長くまとまりに欠ける文章で恐縮ですが、読んでいただきありがとうございました!
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